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8月13日(金)・朝刊
よさこい人 心結ぶ 初の全国大会に33チーム

第四十六回よさこい祭りのフィナーレを飾る初の「よさこい全国大会」が十二日夜、後夜祭を兼ねて高知市中心部でにぎやかに繰り広げられた。参加したのは県内外の三十三チーム。打ち振る鳴子が踊り子の心を結び、踊るほどに舞うほどに「よさこい文化圏」の広がりを実感。“本家”に集った全国の「よさこい人(びと)」たちが、友情と交歓の競演に酔いしれた。
全国大会は、よさこいが近年急速に全国に拡大する中で開催論が度々浮上。ことしに入って松尾徹人高知市長が今夏の開催方針を打ち出し、市観光協会が事務局になって全国各地の“分家筋”に参加を打診していた。
これに九道府県の十四チームが呼応し、本祭の受賞チームを加えた三十三チームが大会に出場。開催に先立って中央公園でセレモニーが行われ、各チームの代表がステージに勢ぞろいした。
主催者のよさこい祭振興会の入交太二郎会長や松尾市長、橋本大二郎知事が「自由民権運動が土佐から全国に広まったのと同じように、自由なよさこいが広がっている。全国七十カ所ほどで踊られ、各地の文化と融合し進化を遂げている。大会をきっかけに交流と連帯を深めよう」とあいさつした。
大会は、各チームが同公園と追手筋本部競演場、帯屋町アーケード街を回って競演。踊り子たちは思い思いの音楽、衣装、振り付け、掛け声で「おらがよさこい」をアピールしながら踊り歩いた。
追手筋での表彰式の後は、全チームが入り乱れて、交歓と友情のファイナルダンス。「'99よさこいの夏」を高らかにうたい上げた。
【写真】'99よさこいファイナルダンス。全国各地の踊り子が入り乱れて「鳴子文化」を確かめ合った(追手筋本部競演場)
熱狂の全国大会 延々5時間 御お下席けん
北の「ソーラン」が華麗に舞った。大阪泉州の「ソーリャ」の声が激しく夜空にとどろいた。全国各地に散らばった「よさこい」が大きく大きく育って戻ってきた。十二日夜のよさこい全国大会。三十三チーム約三千人の踊り子の大乱舞は延々五時間にわたり、お城下を席けん。最後は見る人の胸をずんと揺さぶる感動的な総踊りで打ち上げた。'99夏。四十六歳のよさこいはまた、進化した。

夕暮れから始まった乱舞は、まさに「鳴子文化」のオンパレード。極寒の北国で鍛えられた太鼓が響き、神秘的なタンチョウヅルの鳴き声が「ほろろん」とこだま。「若者が里帰りするまちづくり」を目指す静岡の商店主が懸命に汗を散らせば、石川の高校生はさわやかな笑顔で能登の風を運んだ。
追手筋、帯屋町筋、中央公園の各競演場はどこも見物客でぎっしり。市民は初めて見る高知発の鳴子文化の躍動にかたずをのんだ。よさこい祭振興会の入交太二郎会長も「若者のエネルギーが祭りをここまでした。すごい、本当にすごい」。長い歴史をかみしめ、群舞に見入った。
昭和二十九年、わずか二十一チーム七百五十人の踊り子で始まったよさこい。商店街振興を掲げた祭りは、二十年ほど前から多くの若者の表現の場に変わり、自由奔放なその空気は七年前、北海道へ。そして瞬く間に全国に広がった。
振興会の若手メンバーの間で全国大会構想が持ち上がったのは約五年前。「時期尚早」の声に、時にめげながらも熱心に開催を訴え続けたその時のメンバーの多くはこの夜、進行係などの裏方として参加。舞台の陰で飛び切りの笑顔と涙を輝かせた。
午後九時すぎ、各競演場の踊り子が続々追手筋に集まると、蒸せ返る汗のにおいとカチャカチャ震える鳴子の音で熱気が充満。表彰式の後、「踊った人すべてに拍手を!」「次は二〇〇〇年!」と司会から声がかかり、最後は数千人による乱舞群舞の総踊りへ。ある者は誇らしく鳴子を突き上げ、ある者は仲間と抱き合い、跳びはね、われを忘れて踊りまくった。
「ただ鳴子を持って踊るのがよさこいじゃない。オリジナルっていうか、創造って言うか、そういう行為自体がよさこいなんだ」踊り子の一人がそう言った。初の大会は、高知から全国に何が伝わっているのかをあらためて実感させた。
【写真】よさこい全国大会、笑顔のフィナーレ! 「来年もここで会うぞーっ!!」(追手筋本部競演場)
「もっともっと“変な”踊りに」 武政さんの妻・春子さんが逸話

「武政はねえ、ほんとは正調の踊りが好きじゃなかった。あれはお座敷のもので街頭の踊りじゃないって。だからきっと喜んでいると思います」
追手筋本部競演場には音楽家の故・武政英策さんの妻、春子さん(80)=高知市宗安寺=も姿を見せ、全国の踊り子チームを拍手しながら見つめた。
「よさこい鳴子踊り」は昭和二十九年のよさこい祭り創設に当たり、高知商工会議所に依頼を受けた武政さんが生み出した。田畑のスズメを追い払う鳴子を打ち振る踊りを考案。四十七年にはフランスのニースカーニバルの遠征用に初めてサンバを取り入れ、多様化の基盤もつくった。
武政さんは昭和五十年の手術後は病床にふせり、五十七年に亡くなるまで、祭りをじかに見ることはなかった。しかし春子さんによると、亡くなる直前、よさこいへの思い入れを伝える逸話を残している。
「振興会の方が病床の武政を訪ねて来て、『先生、すみません。今年のよさこいは、若いのが変な踊りをいたしました』って頭を下げたんです。そしたら武政ねえ、『いやまだまだ。それじゃいかん』とうれしそうに言いました。もっともっと変な踊りになってほしかったようでした」
毎年よさこいを見つめてきた春子さんは、「よさこいが変わりだしたのは、その五十七年の翌年からだと思うんです。とうとう全国にまで広がっちゃってねえ。武政は前夜祭の八月九日から(天国から)降りてきますから、喜んで見ております」
目まぐるしいステップを踏むチームが取り入れている「おんちゃん相撲とろ…」の「しばてん踊り」のメロディーに、「あっ、武政の曲です」と身を乗り出して笑顔。審査員特別賞として優れた楽曲のチームに贈られた「武政英策賞」のプレゼンターとしても登壇。全国に広まる“変な祭り”に浸っていた。
【写真】「武政は喜んでます」と目を細めて全国大会を見つめる春子さん(追手筋本部競演場)
北海道の「平岸天神」 県外勢唯一の優秀賞

高知に集結した県外勢十四チームの中で、豪快な踊りで観客からひときわ大きな拍手を浴びたのが北海道の「平岸天神ソーラン踊り保存会」。「記念の一回目だし、賞を狙いたい」との言葉通り、見事県外勢で唯一、優秀賞「粋」に輝いた。
「YOSAKOIソーラン」で大賞を四回、準大賞を二回受賞している名門チーム。ことしも大賞に輝き、勢いをかって全国大会に繰り込んだ。
よさこい参加は昨年に続いて四回目。もっとも今回来高した約九十人のうち半数が初めて。「あこがれの本場で踊ってみたい」とやって来たメンバーは、「札幌より狭いけど、アットホームな感じ」「全国大会なんて緊張する」「他の県の踊りも楽しみ」。
初舞台は、メンバーの間で「暑さがこもるので死ぬ」と評判の帯屋町アーケード街。詰め掛けた観客の人いきれでムンとする中、「さあ皆さま、景気良く参りましょう!」と一本締めでスタート。ソーラン節の荒々しさに満ちた激しい曲に乗り、長い法被をひらめかせながら、エネルギッシュな踊りを披露した。
高知でもおなじみだけに見物客からは手拍子も。踊り終えたメンバーは「観客が身近にいるとエキサイトする」「おばあちゃんにうちわであおいでもらったー。この触れ合いは狭いからこそですね」と、地元とは違う雰囲気に笑顔で汗をぬぐった。
【写真】優秀賞「粋」を受けた「平岸天神」。県外勢で唯一、賞に輝いた(高知市帯屋町2丁目)
全国大会受賞チーム 武政賞に四国開発グループ
よさこい全国大会の受賞チームは次の通り。
武政英策賞=四国開発グループ▽優秀賞「粋」=平岸天神ソーラン踊り保存会(北海道)▽同「睦」=京橋・新京橋“ゑびすしばてん連”▽同「艶」=十人十彩(じゅうにんといろ)▽同「豪」=四国開発グループ▽同「夢」=旭食品
平和の踊りとしてアジアへ世界へ 審査委員長・ペギー葉山さん
一つ一つのチームに特色と工夫がありました。踊りの振りが一つ一つ非常にユニークで楽しかった。衣装も凝りに凝っていて、コーディネーターの方は本当にご苦労だったと思います。皆さん方の一生懸命さに、審査員一同感動しました。
県外の方たちの民謡を取り入れたリズム、ユニークなアレンジは大変楽しかった。高知はこのところ豪雨があっておけいこの時間も大変だったと思います。どのチームの踊りも甲乙つけがたかったです。
踊りは平和のシンボルです。生きているという大きな証(あかし)だと思いました。踊ることは素晴らしいこと。来年はぜひ、踊りたい。
二十一世紀に向かってアジア諸国や世界にアピールできる平和の踊りとして、大きく羽ばたいていただきたいと思うのは、私ばかりでないと思います。
☆★☆ ☆★☆ 声、声、声 ☆★☆ ☆★☆
★「すっげえ、楽しいぞおー!」=「沼津親父組」(静岡)の遠藤忠男さん(47)。帯屋町でブンブン大漁旗を打ち振りながら。
★「みんな、会社には急に熱が出たり、家の急用ができたことにしたり。無理して休みを取ったかいがありました」=「さぬき踊らんな連」(香川)の関和美さん(23)。
★「すごい勢いっす。最高っす。今晩十時間かけてバスで帰ります。来る時もバスでした。ふろ浴びて帰ります。厳しいっす」=「彩霞隊 夏舞徒(さいかたい かぶと)」(埼玉)の加藤直彦さん(44)。踊りの合間に汗だくで。
★「来年は携帯電話やGPSをフル活用して地方車の位置まで把握。渋滞を緩和させてみます」=チームの動きをインターネットで伝える「どこいこサービス」担当の高知市の会社員、山岡修一さん(33)。
★「めっちゃ楽しかった。これしか言えません。みんな仲いいでしょ」=だんごになりながら会場移動中に「近畿颯爽(きんきさっそう)」(大阪)の人見由香さん(16)。
★「前から見たいのに…。ほら、踊り子が満足そうに退場してきたらよけい悔しい。見たい」=ステージ横で警備のアルバイト中。高知市の水野浩太さん(21)。
★「寒気した。鳥肌立った」=誕生日に全国大会出場の「七尾商高 能登・和倉温泉」(石川)の石倉文美さん(18)。
★「三十年連続出場したい」=「大井町ひょうたん文化推進協議会」(神奈川)の平田早苗さん(50)。
★「『お父さん、今から踊るから』って妻子に電話しました。踊った感想? 初めて主役になれました! はまるよ、コレ!」=「沼津親父組」の加藤英治さん(36)。
★「ちょっと間が長くてつまんなーい。楽しみに来たのにいー」=高松市から家族三人で来た主婦(44)。
★「イメージ通り、はじける空豆になりました」=「サニーグループ」のアシスタントインストラクター、永田裕美さん(23)。
★「笑顔をプレゼント? そんな余裕なんてないっすよ。真剣、真剣」=噴き出る汗をぬぐいながら、「京都チーム櫻嵐洛(さらら)」(京都)の清水建さん(20)。
★「夢は高知の人と結婚して、地元チームで参加したいっていう子がたくさんおるんですよ」=「さぬき踊らんな連」の大西裕子さん(26)。
★「高知の底力を見せたい。一人ひとりが自分だけの色を出すよさこいの良さを出したい」=幼稚園から二十回以上参加。「十人十彩(といろ)」の宮田浩吉さん(32)。
★「客の目が肥えてる。全身を使って体の内側から笑顔を出さないと、拍手が少ない」=「新琴似天舞龍神(しんことにてんぶりゅうじん)」(北海道)の幹事長、菊地政倫さん(36)。
★「最近、マンネリ化しているように感じます。どこの踊りも似たりよったり。もっと自由な創造力がほしい」=高知市の画家、志賀健蔵さん(64)。
★「心臓の力、全部使った。疲れてない心臓に取り換えたい」=「サニーグループ」の浜田亜希さん(17)。
★「売れ行きはいまひとつ。今年は人通りが少ないみたいでね。使い切りカメラいかがですか?」=中央公園横のカメラ店、川村彰彦さん(34)。
★「全国大会に出れんかった。くやしい。来年は、あの晴れ舞台に」=ステージを見つめ、香美郡野市町の下村さおりさん(20)。
★「もう自分しか見えない! 何も恥ずかしくなんかないわ」=「京町・新京橋“ゑびすしばてん連”」の乾沙織さん(24)。ほっぺたに「銀賞」と書き、満面の笑みで乱舞した後。
★「去年は踊り子、ことしは裏方。燃え尽きたのも、最終日の寂しさも、去年と同じ」=「富士通グループ」の吉井秀爾さん(23)。 ★「ゆうべは酔っぱらって泣いた。『もう沼津に帰る』って。みんなうまいんだもん。でも楽しく踊って忘れたー!」=「沼津親父組」の振付師、沢崎孝子さん(39)。
★「全国大会出られるって聞いた時、うれしくて。踊りながら涙がぽろっと」=「富士通グループ」の別所ひとみさん(16)。
★「来年はもう来られないと思って、高知の土を持って帰る予定でした。でも、踊ってるうちに、来年も全国大会で高知に来る思いを強くしました。高知の人とのあったかい交流を持って帰ります」=「そりゃ!阿寒」(北海道)代表の小川春枝さん(51)。
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