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8月11日(水)・夕刊
鳴子で「ようこそ!」 JR高知駅

すかっと晴れ上がった十一日、第四十六回よさこい祭りの熱気は、三日目を迎えて頂点に達した。参加百三十四チームは、午前中に各地で出発式を行ったり、福祉施設などを訪問。昼からの競演を待ちきれずに、市内のあちこちに鳴子のリズムを響かせた。
高知市のJR高知駅ではJR四国連の踊り子隊が出発式。「えい、えい、おー」の掛け声で一斉に鳴子を打ち鳴らした後、駅前ロータリーの地方車から流れる生演奏に合わせて踊りを開始。制服姿の福家幸一駅長とJRキャンペーンレディを先頭に、青い法被姿の約百人が列になってコンコースへ入った。
ホームにはちょうど、高松市と宿毛市からの特急が相次いで到着。駅に降りた人々は、大音響のよさこい節と目の前の鳴子踊りに一瞬戸惑った様子だったが、すぐに、「チャッチャッチャ」の鳴子の音に合わせて手拍子を打ったり、写真を撮ったり。
埼玉県川越市から来た女子大生(24)は「よさこいを見るのは初めて。関東の祭りにはないエネルギーと明るさにびっくりしました」。南国ムードたっぷりの歓迎を楽しんでいた。
【写真】鳴子のリズムで駅に降り立つ観光客を歓迎したJR四国連の出発式(高知市のJR高知駅)
平和祈りパゴダで踊り 関西地区大学連合の40人

よさこい祭り三日目の十一日朝は、戦没者慰霊碑や福祉施設などで踊りを披露したチームも。高知市五台山の戦没者慰霊碑「高知平和パゴダ」前では「関西地区大学連合」のメンバーが、平和をかみしめながらにぎやかに踊った。
高知平和パゴダにはビルマ(現ミャンマー)付近で戦死した本県出身の約三千二百人が祭られており、同連合は六年前の祭りから毎年踊りを披露している。
同連合のうち関西大、関西学院大、甲南大、大阪学院大の約四十人が参加。学生たちは背中に大きなリボンをつけたり、上半身裸だったり。高知パゴダ会(町田速雄会長)のメンバーが見守る中、「はいはい!」と声を合わせ約二十分間奔放に踊った。
この後町田会長が「ビルマ戦で死んだのは多くが二十−二十五歳。赴いた大半が死にました。元気な踊りをありがとう」と礼を述べた。スタッフは「ここで踊ると、よさこいも平和だからこそと感じます」と汗をぬぐっていた。
【写真】にぎやかに踊る関西地区大学連合の踊り子(高知市五台山の高知平和パゴダ)
8月11日(水)・朝刊
よさこい最高潮 雨の中乱舞、群舞

雨に負けるな、よさこい燃えろ―。南国土佐の夏を彩る第四十六回よさこい祭りは十日、鳴子踊りの競演がスタート。百三十四チーム約一万五千人の踊り子が高知市内十カ所の競演場に繰り出した。時折降りしきる雨にもめげず、乱舞群舞は最高潮。「ヨッチョレヨ!」の掛け声と鳴子のリズムが、しつこく垂れ込める雨雲を突き抜けた。
シャンシャンシャンと鳴子が響き、鳴子踊りの競演がスタートした「'99よさこい」。雨続きの高知市は十日もあいにくの空模様で、午後は一時雨が本降りに。日中の最高気温も二九・七度にとどまり、例年になく“涼しい”踊り本番となった。しかし百三十四チーム約一万五千人の踊り子パワーは熱気むんむん。ことしの踊りの輪には、障害を持つ人たちのチームが初めて加わった。近年めっきり少なくなったお年寄りもチームをつくって参加した。昨年の'98高知豪雨で被災した高知市大津の子どもたちの姿も。参加した人の数だけ「よさこい物語」がある。
【写真】'99よさこい最高潮。降りしきる雨の中、1万5000人の踊り子の熱演が続いた(追手筋本部競演場)
車いすから「ヨッチョレ」 障害者チーム初参加
よさこいの「輪」に飛び込みたい―。そんな思いで初めて参加したのが「てんてこ舞」。車いすの人、鳴子が持てない人、知的障害の人らが「踊りたい、輝きたい」という夢でつながった、よさこい史上初の障害を持つ人を中心にしたチーム。踊り子、ボランティア合わせて約二百五十人が理屈抜きに鳴子踊りを楽しんだ。

自分たちの踊る姿を通じてバリアフリーの理念を伝えようと、昨年十月に実行委員会を結成。その意気に賛同してチームにはさまざまな人が集った。「二十年来の夢」をかなえようと参加した脳性まひの女性(30)とその母親(60)もいた。
七月から練習を開始。雨で屋外の練習場が使えなかったり、屋内でも車いすで入れない体育館があったりと難儀を強いられた。全員集合したのは、実は本番のこの日が初めてという。
祭りの初舞台は旭町競演場。法被の背中に、昇る太陽をイメージした赤いうちわの模様を配したデザインも、襟元とそで口に使った手染めの布も、メンバーのアイデア。二時間以上の待ち時間をものともせず、元気いっぱい飛び出した。
「(踊りは)情熱です」「やる気いっぱい」「この日のために生きてきた」という意気込み通り、力を振り絞っての踊り。勢い余って列から外れる人も交じりながら、隊列が四列になったり二列になったりするダイナミックな動きと生き生きとした表情で観客を魅了した。
車いすの人はサポーターと二人で、鳴子やちょうちんが握れない人は手首や車いすに固定しての参加。メンバーは「できないと嘆くより、みんなでできるようにする」と力強く語った。
踊り終えたメンバーは「また踊りたい」と升形競演場へ。十一日も追手筋本部競演場などで踊る予定。飛び切りの笑顔が、祭りに参加した喜びを物語っていた。
【写真】「ハイヤッ!」。威勢のいい掛け声でポーズを決める「てんてこ舞」(高知市升形、升形競演場)
豪雨乗り越え大津からも
雨なんか吹っ飛ばせ――昨秋の'98高知豪雨で、自宅が浸水するなど被害を受けた高知市大津の子どもたちも祭りに参加。折からの雨にびしょぬれになりながらも、元気いっぱい踊りを楽しんだ。
「豪雨の時ねえ、私泣いたでー。家の中でぷかぷか浮いちょったの」。土佐女子短大チームの永田悠ちゃん(9つ)=大津小三年生=はお母さんの悦子さん(39)と参加した。豪雨の際はマンション一階の自宅が九十センチ浸水。出張で父親が不在の中、親子は濁流の中をパジャマで逃げ出した。
「雨嫌い。こないだも朝四時ごろ目が覚めた。みんなで荷物を上げた」と悠ちゃん。家族のきずなは豪雨を機により強まっている。
親子で参加でき、かわいいピンクの法被が着られることから同チームを選んだ二人。「ちょっぴり恥ずかしい」とお母さん。「すっごい楽しい」と悠ちゃん。夕方の中央公園競演場は雨が降り、びしょぬれになったが、この日ばかりは笑顔いっぱいで踊り通した。
「学校も汚れの修復はいまだ完全じゃない。授業再開を優先させたから…。きょうのみんなの笑顔で救われます」とは同短大講師の伊藤一統さん(29)。
また、「大津こども会なるこ踊り子隊」の八十人も元気に踊った。大津の小中学生中心のチーム。毎年参加しているが、豪雨による浸水で、地方車の飾りやスピーカーなどを駄目にしてしまった。一時は参加中止も検討したが、子どもたちの熱望や地域の人々の励ましに実行委員会が奮起。緊急バザーなどで資金を集め、参加にこぎつけた。
追手筋競演場を皮切りに、夜まで踊りっぱなし。「すごく楽しい」「もし踊れなかったら、家で鳴子振るだけやった。うれしい」と子どもたち。支えてきた父母や地域の大人たちはこう話していた。
「大津小の体育館で練習中、激しい雨がザーッと振ることもあった。子どもたちはみんなと一緒にいることで心強かったようだ。よさこいに励まされ、救われた」
【写真】ピンクの法被に笑顔の永田悠ちゃん=中=と悦子さん=右(高知市の中央公園)
若者だけのものじゃない 65−94歳の「高知シニア」
若者ばかりになり、お年寄りの踊り子がいなくなってしまったと嘆く声にこたえ、勇躍初出場したのが「高知シニア(高知市老人クラブ連合会)」。最年少でも六十五歳。最高齢は九十四歳という女性百二十人が浴衣にすげがさ、白足袋の伝統的スタイルで正調の鳴子踊りを披露。高知の「老人力」を見せつけた。
高知市百石町三丁目の市老人憩所で民踊を学ぶお年寄りたちが国際高齢者年のことし、「今までにないイベントをしよう」と企画。「若者だけの祭りになったよさこいを、お年寄りも参加できるようにして、若い人にアピールしよう」と他の民踊グループにも呼び掛け、チームを結成した。
六十、七十歳代は普通のすげがさだが、八十歳代はかさのてっぺんに赤い花、九十歳代は紫の花を飾って列の最後尾に。日ごろからけいこをしているだけあって、全員がぴたりとそろった年季の入った踊りを披露。よさこい祭りが始まったばかりのころの姿をよみがえらせ、カメラマンたちの人気を集めた。
踊り子たちは「道路での踊りは、舞台より気持ちえい」「大勢の前で踊るのは楽しいねえ」「みんなが声を掛けてくれて、張り合いがあった。けんど、だれた。あしたよう起きるろうか」と満足げ。
高知市朝倉丙の谷由賀雄さん(91)は「一度は踊ってみたいと思ってましたが、この年で初めて参加できました。楽しかったです。命があれば、来年も踊りたい」と話していた。
【写真】65歳以上の女性が伝統的な正調の踊りを披露した高知シニア(追手筋本部競演場)
漢字をしょって
「楽」「人」「笑」…。百六十人の踊り子全員が背中に力強い漢字一字を書いた法被を着て踊ったのが「MEDEIA CROSS by髪結ハウス」。
高知市の書家、北古味可葉さんが一枚一枚の法被に全部違う漢字一字を書いた。地方車も横に「豊」、後ろに「夢」と大書してある。
振り付けと法被担当の小倉卓浩さんが、昨年高知市で行われたダンス公演で舞台美術を担当した北古味さんと意気投合。法被と地方車への筆入れが実現した。
感性あふれる字で書いてあるため非常に象徴的。踊り子たちは「訳が分からないけど心強い」と話し、ほとんどが自分の背中の漢字が何か知らないまま。それでも、流れるような踊りと文字の絶妙なバランスが観客を魅了していた。
【写真】1人ずつ象徴的な漢字の文字入りの法被を着て踊る踊り子たち(菜園場競演場)
お金はかけない!
衣装や地方車にお金をかけたチームが目立つ中で、節約に徹したのが「Summer PenguinS」。東は室戸から西は大月まで、十五−二十一歳の若者四十五人のチームだ。
百人を超えるチームが多い中、人数も少ないが経費も少ない。集めた予算は一人一万円の参加費を中心に約五十万円。経費削減のため、スピーカーも十七万円の安いので我慢するしかなかった。
このため他のチームに比べて、どうしても地方車のボリュームが小さい。追手筋本部競演場の踊りを終えたメンバーは、口々に「音が聞こえんかった」「頭の中で曲流して踊った」。
それでも代表者の高知高専四年、西岡良治さん(18)は「若いからこそお金をかけたくなかった。自分たちでやりたいことは自分たちでつくる。そんな空気が高知にはある」ときっぱり。「でも、来年は百人集めて三十万円のスピーカー買いたいなあ…」
県外客が飛び入り
県外客が飛び入り参加できる「あったか高知御宿連」は三年目。中心になって世話する高知市旅館ホテル協同組合は「口コミなどで広まり、ことしも全国各地から偏りなく参加してもらっています」。
定員百五十人中百人は事前予約でいっぱい。当日分の五十人の枠も受け付け開始と同時に、ほぼ埋まってしまう人気ぶり。
高知市役所前に集合した“にわか踊り子”たちは一時間半練習。インストラクターの身ぶりを一生懸命まねしながら、右へ左へ鳴子を振った。
神奈川県横浜市から参加した大学生、土方牧子さん(22)は「小さい時に見たことがあって、ずっと踊りたかった。これでちょっと高知県人」と満足げ。
練習は雨で中断したが、参加者は「汗をびっしょりかいているから、雨にぬれても同じ」と時間を惜しんで鳴子を打ち鳴らし、競演場に繰り出して行った。
ちびっこ跳ねる
菜園場競演場では、高知市はりまや町三丁目のつくし託児所の一歳から四歳までの幼児三十人が、参加チームが途切れた間に道路に飛び出してレッツダンス!
「祭りの雰囲気を味わわせたい」との保育士さんのアイデアで、子どもたちを競演場に連れてきた。初めは、祭りの迫力に「怖いよー」と泣く子も。
それもちょっとの間。すぐに、持参した鳴子を手に幼児が“競演”開始。音楽に合わせて鳴子を振ったりジャンプと、「将来性十分」の踊りを見せて、観客も笑いと拍手、拍手。
引率した保育士の中川克子さん(27)は「将来のよさこいをパワーです」と跳ね回るちびっ子たちに目を細めていた。
☆★☆ ☆★☆ 声、声、声 ☆★☆ ☆★☆

★「昔と変わったねぇ。すげがさかぶって踊ったこともあるけど。今は派手ねぇ」=升形競演場で高知市宝町、市川美代子さんがリズムを取りながら。
★「三年ぶりに見に来ました。暑いのがいやだったけど、見てるとまた踊りたくなりますね」=踊り子の彼女を升形競演場に見に来た専門学校生、伊東勝二郎さん(20)。
★「涙出るねぇ。小さい子が踊ってるのを見たら」=帯屋町で女性が目頭を押さえながら。
★「三回目です。リオのカーニバル的ですねえ」=四国を旅行中の千葉県の石山良明さん(66)。升形競演場で。
★「四時起きです。ニワトリ鳴いてました」=ヘアメークを終えたばかりの踊り子、高校一年の矢野友子さん(16)。
★「まさか音がこんなやかましいとは思わんかった」=踊り子の孫の写真を撮りに初めて祭りを見に来た高知市南はりまや町一丁目、自営業、西田定雄さん(70)。
★「やっぱ踊ればよかったー」=高知市はりまや町一丁目、城東中二年、須賀美江さん(13)。菜園場競技場で踊り子に麦茶を配るアルバイトをしながらうらやましそうに。
★「あんな若い女の子たちと一緒に踊ってみたいなあ」=菜園場競演場近くの喫茶店従業員の男性(50)。三十三年前に一度踊ったことがあるというおじさんの一言。
★「高知の雰囲気最高。お客さんに見てもらってると思うと、ふつふつとエネルギーがわいてくる」=高知大学日章踊り子隊OBとして久しぶりに踊った岡山県倉敷市、会社員、尾上真樹さん(26)。
★「普通、祭りで踊るのは夜なのに、高知は昼間っから踊ってる。びっくりした」=九日閉幕した「まんが甲子園」に出場し、県庁チームでよさこいに参加した長野県の上田高三年、波間忍さん。
【写真】アーケード街は人、人、人。延々と続く踊り子たちの行進に大勢の見物客が酔いしれた(高知市帯屋町1丁目)
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