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【評】追手前・山崎の快投が1点差の勝利を支えた。直球をはじめ、どの球種にも切れがあり10奪三振3安打完封。毎回の先頭打者はすべて抑え攻撃の芽を摘み取る守りのリズムが、そのまま打線の好調を呼んだ。しかし、9安打を放つもタイムリーが出ず八回まで0行進。九回7番藤沢の右翼線二塁打と野選などで無死満塁。奥崎の左犠飛で三塁走者藤沢が好走塁でサヨナラの生還。試合を決めた。
土佐は九回に四死球絡みのチャンスをつくるも打線が沈黙。再三のピンチに粘りの投球で八回まで零封の木下を援護できなかった。(青木)
土佐・エース木下 初めて泣いた最後の夏
かげろうの立つマウンド。右手を離れた137球目。外角の真っすぐが外野に運ばれたとき、土佐のエース木下の夏は終わった。
立ち上がりはこれまでで一番悪かった。思ったところへ球がいかず、カーブも曲がらなかった。毎回のように得点圏に走者を背負った苦しい投球。だが、いつも通りのポーカーフェース。淡々と、しかし粘り強く投げた。
好投の追手前山崎との投げ合い。0―0で迎えた九回裏、先頭打者を追い込んだ。カウントはツーワン。捕手の岩本はつり球のサイン。珍しく首を振った。九回表の満塁のチャンスが実らず、動かない表情の奥に焦りがあったのかもしれない。勝負を急ぎすぎたのかもしれない。二塁打を浴びた。内野安打、野選で無死満塁。流れは傾いた。左翼へ飛球が上がったとき「浅い。本塁で刺せる」。もう次の球を何にするか考えていた。だが、三塁走者は好スタートでタッチアップ。サヨナラ負けだった。
素質に恵まれた選手ではなかった。1年前は球速120キロ台。ランニングをすればチームでビリ。だがチーム一の努力家は、つらそうな顔一つ見せず練習を黙々とこなした。最終学年にエースになることを目指し、ひたすら走り込んだ。成果は確実に現れた。球速が130キロ台に上がった。ランニングのほうも、野球部対抗駅伝で区間賞を取った。努力で手に入れた背番号1だった。
わずか1点。最少得点で敗れたが、「打たれたせいで、守りから打撃へのリズムをつくれなかった」と自分を責めた。スタンドに礼をして、ダッグアウト裏の通路から球場の外へ出た。そこで、両手をひざにつき地面に向かって、これまで弱音も吐かず、涙も見せなかった木下が、初めて泣いた。(宇田)
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