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2005年8月11日(木)<朝刊>

二神力投、守りは合格

2本の本塁打を浴びたものの、日大三打線相手に力投した高知のエース二神(写真はいずれも甲子園球場)  高知、夏26年ぶり白星ならず―。第5日は10日、甲子園球場で1回戦残り2試合と2回戦1試合を行い、大会開幕2日前に急きょ出場が決まった県代表の高知は日大三(西東京)と2回戦で対戦、五回に2点を返すなど善戦したが、2―6。夏はベスト8入りした1979年以来の白星はならなかった。高知は春夏合わせて23度目の甲子園で、初戦負けは10度目。甲子園通算成績は30勝21敗となった。

 高知二神、日大三大越の両エースが先発。一回ともにチャンスを逃した後の二回、日大三は大技小技の攻め。スクイズを含む3本の犠打で先制した後の二死二、三塁で1番江原の中越え本塁打で計4点。初回の2安打に抑えられていた高知の反撃は五回。相手失策をきっかけに富永、笹岡、二神の3連打で1点。続く1番中谷の内野ゴロで富永が2点差にするホームを踏んだ。五―七回を無安打で踏ん張った二神だが、八回4番多田に本塁打を浴びて降板。代わった黒田も不運な二塁打などで1点を追加された。打線は左腕大越の変化球をとらえきれず14三振。一、五、七回以外はヒットが出なかった。

 1回戦の酒田南(山形)は打線が爆発。全員が複数安打の19安打を放って、姫路工(兵庫)に10―2で快勝した。沖縄尚学(沖縄)―松商学園(長野)は、沖縄尚学が三回に3点を先行。先発の前嵩がリードを守って完投し、4―1で勝った。

 【写真説明】2本の本塁打を浴びたものの、日大三打線相手に力投した高知のエース二神(写真はいずれも甲子園球場)

▼高知―日大三 (甲子園球場 14時38分、17,000) 

 
高知
日大三 ×

 【評】 敗れはしたが、急きょ出場が決まったハンディキャップを高知は全く感じさせなかった。二神、黒田の投手陣も、バックも、しっかり守った存分のゲームだった。

 エース二神は緩いカーブと速球の緩急をうまく使った。二回にスクイズと3点本塁打で4点を許したが、その本塁打もインコース低め。失投ではなかった。無失点の三―七回はベストピッチだろう。

 バックも無失策で応えた。一回裏の二死二塁からのヒットに対応した右翼富永のダイレクト返球の本塁タッチアウトは見事。三塁勝賀瀬、遊撃国沢ら内野陣も難しい当たりをしっかりさばいた。

 打線は日大三の左腕大越の右打者ひざ元へのスライダーに手を焼いた。一回は左打者の中谷、山本幸のヒットで一死一、三塁と攻めたが、続く右打者2人がスライダーで連続三振。先制機を逸した。

 結局14三振を奪われたが、攻めの形をつくるバントのミスは少なかった。一回の2番国沢、2点を追う七回無死一塁の二神、この2人は初球一発で決め、練習不足を感じさせなかった。(井上

 勝ってお礼できず残念

 高知・島田達二監督の話 こういう形での出場になってから、いろんな方々にお世話になったが、勝ってお礼できなかったのは残念。ただ、いいゲームだったと思う。二神もよく投げてくれたし、バックの守りもしっかり集中できていた。うちらしい試合はできた。ただ、相手が素晴らしいチームだった。

 高知は五分の戦い

 日大三・小倉全由監督の話 高知さんは県大会で明徳と熱戦を展開したチーム。五分の戦いだった。選手には、ブランクを甘く見たら、足をすくわれると言い聞かせた。先に4点を取ったが、二神投手に低めにテンポ良く投げられ、五、六、七回は困ったなという感じ。(八回の)多田のホームランで助かった。

 緩急巧み 一発に泣く

 「調整もうまくできたし、調子もよかったんですが…」。エース二神は淡々と試合を振り返ったが、二回にスクイズで1点失った後の3ランが痛かった。

 捕手の下司は日大三打線に積極的に振ってくる印象を持ったという。この回、1番の左打者江原を迎えて、バッテリーは2―1からインコースを突いた。「コースは良かったけど、ちょっとだけ浮いてしまった」。すくい上げるような一打を豪快にバックスクリーン横まで運ばれた。

 しかし、ここからが「エース」。緩い大きなカーブと直球のコンビネーションで、本来のリズムを取り戻した。三回以降七回まで無得点に抑えたが、特に五―七回はノーヒットピッチング。島田監督も「あいつなりに辛抱して、よく立ち直ってくれた」。

 八回、先頭の4番多田に本塁打を浴び107球の降板となったが、精いっぱい投げたエースに、スタンドから温かい拍手が送られた。

 存分に力出し切る 「最高のプレー」みなぎる充実感

健闘も届かず敗れ、一塁側ベンチ前で日大三の校歌を聞く高知ナイン  一回裏、日大三の攻撃は二死二塁。4番多田の打球が一、二塁間を破った。二塁走者はちゅうちょなく三塁を回った。「先制されたか」と思った瞬間、右翼富永が本塁にダイレクト返球。見事なタッチアウトに、高知のアルプス席だけでなく、スタンド全体から大きな拍手が起こった。

 急きょ出場が決まり、何が起こったか分からないうちに6日の開会式を迎えた。再集結後、チーム全体での練習時間は4日間で10時間に満たない。そのわずかな時間は、ボールに目を慣らすバッティング練習にほとんど費やされた。守備練習はトータル1時間あったか、なかったか…。

 高知ナインの動きは、そんなことは全く感じさせなかった。練習が少なかったにもかかわらず、守りは当たり前のように無失策。富永の好返球のほかにも、遊撃国沢が何度も難しいゴロを猛ダッシュでさばく。右へ左へ前へ…。甲子園は見た目以上に球足が速いが、「とにかく思い切って前に出ました」と国沢。攻めだってそうだ。バント練習は一切できていなかった。それでも国沢、二神は一発で決めた。

【高知―日大三】5回表高知無死満塁、二神(1)の適時打に喜ぶベンチのナイン  甲子園入りしてからは「時間がない」以外にも、“敵”はいた。野球に集中できない環境だ。連日、宿舎に多くの報道陣が詰め掛けた。「誰が見ているか分からない」からと外出は一切禁止。あこがれの甲子園の土を踏める喜びはあるものの、ナインには日に日に疲労の色が濃くなっていたように見えた。ある選手は雨の中、練習帰りの宿舎前でテレビ局に足止めされ、顔をしかめた。

 それでも晴れ舞台では伸び伸びと全力を出し切った。敗れても涙を流す者はいない。「最後に甲子園に出られたことには、支えてくれたいろんな人に感謝している。きょう出した力が高知高の最高のプレー」。主将中谷の顔に充実感が浮かんだ。

 この先、この夏の優勝校が忘れられることはあっても、高知の戦いぶりが忘れられることは絶対にないと思った。(井上

 【写真説明上】健闘も届かず敗れ、一塁側ベンチ前で日大三の校歌を聞く高知ナイン

 【写真説明下】【高知―日大三】5回表高知無死満塁、二神(1)の適時打に喜ぶベンチのナイン

 気迫充分 よくぞここまで

 高知ナインの甲子園大会が終わった。降ってわいたように大舞台への道が開かれ、戸惑いに包まれての1週間。日大三という強敵にぶつかって敗れた。不十分なコンディションへの同情はしないが、ゲーム内容の細かい指摘も遠慮しよう。

 気迫は伝わってきた。日大三をたじたじとさせていたし、正直なところこれ以上を求めるのは第三者の欲というものだろう。力投した二神投手には、よくぞここまでと労をねぎらいたい。

 3年生には中断された夏休みに戻ってもらおう。甲子園にやって来たのは、「特別の夏休み」と解釈してほしい。生徒仲間や先輩。それに見知らぬ多くの人たちから届いた激励の数々…。感謝の言葉が幾つあっても足りない思いをしただけでも、甲子園への旅は重みがあっただろう。

 大会直前に起きた明徳義塾の出場辞退は衝撃を与えた。高校野球のありようを考えさせられるものであった。でも高知の頑張りを見ていると、いい教材もあったのではと感じる。(共同


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