全国の頂点を狙おうかというチームには、し烈なレギュラー争いが付き物だ。「甲子園のグラウンドに立つ」。強い信念を秘めた選手ばかりが集う。学年は関係ない。競争のレベルが高ければ高いほど、チームの強さは増すものだ。
このセンバツでベンチに入る1年生は3人。
赤瀬は甲子園を目指して大阪からやって来た。実感できなかった自分の力を試したかったという。50メートル5秒8の快足を買われ、1年で唯一1けた背番号8を手にした。「レギュラーに入っているのが信じられない。休んでなんかいられないですよ」
最初、内野を守っていた。梅田、松原、久保田…、甲子園を沸かせた先輩たちのプレーを見て「レベルが違い過ぎる…」。圧倒されたが、同時に「この人たちについて行ったら間違いなく甲子園で勝てる」。そう確信したという。
「雲の上の先輩」たちのプレーを“盗む”毎日だった。下手な自分よりハードに練習する“名手”の背中に懸命に食いついた。「守備」「走り込み」「スイング」。初めは先輩に引っ張られ放し。しかし、気の付かないうちに吸収していた。「当てるだけ」だったバッティングも、どっしり構えられるようになった。「まあ、ちょっとはまし」。馬淵監督の辛口コメントも心なしか優しい。
チャンスは年明けに、内野から外野へのコンバートという形でやって来た。守りを重視する上で、チームは外野に“快足”が必要だった。「内野は駄目ということかもしれないけれど、プラス思考で考えないと…。ライバルも多いですからね」
チームにいろいろなタイプの打者がいる。巧打の森岡、松原。大砲の田辺、久保田、梅田。赤瀬は足を生かす。狙いは軽打。「シングルヒットでも『盗塁』『盗塁』で三塁打。1人くらいそういう打者がいてもいいでしょ」
背番号17の神谷もぐっと伸びた1人。「走攻守」三拍子そろい、一発もある。シート打撃では鶴川の球でも甘く入ればパンパンはじき返す。「(レギュラー争いでは赤瀬に)先を越されたけど、自分も狙いますよ」。意欲満々なのも良い。
名指しされた赤瀬は「(神谷)打つんですよ。ちょっとやばいです。(投手の松下)建太がうらやましいですよ。でもね、シート打撃で(松下建が)出てきたら絶対打ってやろうと思ってるんです」。1けたを手放す気はない。
松下建だって同じ。やすやす打たせるわけがない。「シート打撃で2年生に打たれるのは分かるけど、赤瀬と神谷には絶対に打たさんつもりです」。次の明徳を背負う3人は磨き合って大きくなる。
赤瀬は「『自分が何ができるか?』って聞かれたら、1つも答えられないですよ。早く自信を持って言える“何か”をつかみたい」。自分を確実にするためには「練習」「練習」「練習」。そんな毎日が3人だけでなく、明徳には充満している。