「おれが監督やった中で一番いい打者? んー、いろいろおるからな。2番バッターなら去年の沖田。3番は森岡(現中日)やな。1番? 今、バッティングしてるあの男。足とかセンスとか、総合したらナンバーワンや」
馬淵監督から“最高の1番打者”のお墨付きをもらったのは森岡佑紀。同じく「3番」に名前が挙がった2002年夏の甲子園優勝キャプテン、森岡良介の弟だ。
とにかくスイングが速い。「今の時期なら兄より上」と馬淵監督も舌を巻く。168センチと体はないが、大きな構えからはじき返された打球は糸を引いてスタンドイン。パンチ力も並じゃない。
秋季大会は打ちまくった。12打席連続出塁を含む21打数15安打で打率7割1分4厘。センバツ出場32校のレギュラーで1位。50メートル6秒の足でかき回す。1番打者の武器が文句なしでそろっている。
「(1番打者は)大好きですね。塁に出て、走って、チャンス広げて、一番最初にホームに帰って来られるのがいい。ホームベースを踏みしめてしまいます」。大阪・蒲生中のシニアリーグのときからずっと1番。切り込み隊長役が身についている。
2つ上の兄と一緒に甲子園へ行くために明徳の門をたたいた。しかし、レベルの高さを甘くみていた。1年の夏はアルプス席で兄の背中を追いかけた。スタンドで味わう優勝は、それでも感無量。「ベンチならどんなにいいか…」。ほんの少しだけ悔しかったという。
「目標なんです。兄が。良介はバットの使い方がうまいから逆方向にも大きな打球が飛ぶ。当たってからのはじき方も違う。(3回戦の)常総学院戦のホームランはすごかった。あの勝負強さはまねできない」
練習で自分を追い込んでいる。シート打撃では、わざとベース寄りに立ち、内角の厳しい球をつくる。打ちにくい状態でバットのヘッドが抜けるようになりたい。打ちづらくても繰り返す。実戦が甘くないことを知っているからだ。「7割といっても打数が少ないだけ。打ち損じも多いです。もっと正確で確実な打者にならないと」。技術でも精神面でも及ばない兄を見つめている。
調子の悪いとき、たまに電話をかける。兄のアドバイスは「悪いときは急には戻らんからまず我慢。ただ打つのは駄目。どう打つか意識して振れ! ただ打つだけならバッティングセンターで遊んでいるのと同じだぞ」。厳しく諭してくれる兄の声を聞くと安心するという。
やっとグラウンドで優勝を味わえる番が回ってきた。甲子園でずんずん切り込む気だ。マークはきつくなるだろうが、「1打席1球は甘い球が来る。それを狙う。でも、マークされると思った四国大会でも結構甘い球が来てました。それほど警戒されてないのかも(笑)。追い付くにはまだまだかな」。全国の頂点に立つことと、兄を越えること―。「1番」は2つの目標をしっかり同居させている。