ほかのチームなら十分4番を打つ力がある選手が、明徳にはごろごろいる。その打線の軸を任される選手には、並外れた「何か」が要求される。現チームを馬淵監督は「6番打者ばかり」と評する。ぜいたくな悩みにも思えるが、裏を返せば絶対的な軸がいないということだ。
3番に座る梅田は1年のときからレギュラーを張る。2002年夏の甲子園では1年生ながら本塁打を放ち、初優勝の当事者になった。華々しいデビューだった。しかし昨年は“それなり”の活躍にとどまった。チームの「顔」になるべき存在のはずが、少々物足りなかった。
梅田は「消化不良の1年でした」。「打ちたい」、でも「打てない」。もやもやした気持ちがずっと続いた。「左投手のカーブを右中間に運ぶ」「インサイドからバットを出す」―。テーマを決めて練習に打ち込んだが、調子に波があった。
「狙われてるように怒鳴られるんですよ」。なるほど、馬淵監督の叱責(しっせき)は梅田に向かって、よく飛んでくる。「何や、その打ち方はー。それでボールが前に飛ぶんか」「動きが悪いわー。この間の試合は、お前のエラーで負けたんやぞ。一つのプレーを大事にせんかー」
「悪いから怒ってるのよ」と素っ気ない馬淵監督だが、「守備でも守りでも、もう一皮むけてほしい。むけられるはず」。指導者としての願いが伝わってくる。そうでなければ、大事な「3番」に梅田を据え続けるわけがない。
「6番打者打線」に対し、馬淵監督は「調子のいいやつを上の打順で使うぞ。1度負けたら終わりやからな。気合入れて行けー」。ミーティングでナインをあおった。
「それって、僕がクリーンアップが駄目、と言われているのと同じことじゃないですか」と梅田。「信頼される打者になるのが目標ですからね。ちょっと情けない」
調子が悪いと感じたときは徹底的に体を動かす。「精神的に駄目になると、体もやられますからね」。練習で振る。寮に帰って振る。とにかくバットを振りまくる。納得のいくスイングを自分のものにするため、夢舞台で快音を響かせるためだ。
「子どものころ『夢』を話す授業で『甲子園に出て優勝するぞ』って言ったんです」。まさか1年でレギュラー、ホームランまで打てるとは思わなかったという。そんな梅田にとって甲子園は「今でも『夢の中の場所』」
「一つ一つのプレー、ホームランも、何となく忘れてしまった。普通の球場だけど何でかな…。エラーは覚えてるんですけどね(笑)」。気持ちのどこかに“おごり”はなかったか。自問自答するという。
「お前だったらごちゃごちゃサインは出さん」。馬淵監督にそう言わせたい。梅田は主軸の誇りをかけて、最後の“春”に臨む。