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2002年8月21日(水)<朝刊>
球運も味方V王手 13安打で川之江圧倒
明徳が「四国対決」制して初の決勝進出――第13日は20日、甲子園球場で準決勝を行い、郷土代表の明徳義塾は打線活発で10―1、川之江(愛媛)を圧倒して県勢として24年ぶりの決勝に進んだ。明徳は春夏通算19度目の甲子園出場で初めて決勝に進んだ。もう1試合は智弁和歌山(和歌山)が帝京(東東京)に6―1で快勝。決勝は21日午後1時からで、県勢と和歌山県勢が決勝で対戦するのは初めて。
この日の第2試合、明徳―川之江は明徳エース田辺が立ち上がりを川之江打線に襲われ、一回2番の送りバントを挟み1―4番の連打でいきなり先制点を奪われた。しかし、1点だけにしのぐと、その裏に筧が川之江エース鎌倉から右中間2点三塁打して逆転。さらに三回には川之江の守りのミスから一死二、三塁として森岡の一塁内野安打の間に、二塁走者沖田も好走塁で生還、2点を加えた。
五回には森岡の大会第40号、森岡自身2本目の本塁打は3ランとなって7―1。ほぼ勝利を決定付けた。六回は沖田の2点三塁打、八回にも2番手投手で打席の回った1年鶴川にも適時打が出て追加点を挙げた。エース田辺は、二回以降は切れの良い変化球主体に川之江打線に的を絞らせず、終盤2回を投げた鶴川ともども二塁さえも踏ませなかった。
第1試合の智弁和歌山は1―1の七回、北野のソロ本塁打で勝ち越し、さらに1点を追加。八、九回にも加点した。田林は3度目の優勝を目指した帝京を3安打に抑えて完投した。優勝した一昨年以来の決勝進出を決めた。決勝では3度目の優勝を狙う。
【評】明徳は右横手の好投手鎌倉に10奪三振されるが、それを上回る怒とうの攻め。小技、大技、すきを突き、運さえも味方につけて13安打。先発田辺はこの日も好調で、七回を投げて11奪三振。鶴川にスイッチして、10―1として川之江を粉砕した。
一回は森岡が左翼線にぽとりと落ちるラッキーな二塁打。一死二、三塁となり、4番筧は邪飛で助かり、その後に逆転の右越え三塁打。三回の山田の送りバントは一塁で微妙なタイミングだったが、カバーの二塁手がベースを踏んでおらず内野安打。さらにけん制悪送球の二、三塁の好機に森岡が一塁ゴロを打ち、野手がベースに飛び込んだが内野安打。二塁走者の沖田までが生還したのは見事。
五回は森岡がおよぎながらも、右翼スタンドに3ラン。大会2本目で7―1とリード。六回も手を緩めず、沖田の中越え三塁打で2点。八回も山口三塁打、鶴川が左前打して追加点を挙げた。
3日連投の田辺は組み立てが良く、緩急をつけたカーブ、スライダー、直球がさえた。一回のほかは散発2安打に抑え、全く不安のない内容。八回から救援の1年鶴川も見事な投球。無安打2奪三振で締めた。 (土居)
やっと土俵に上がれる
明徳・馬淵史郎監督の話 ツキがあるんでしょう。流れがいい方、いい方に来た。田辺がしっかり投げ、森岡、筧が返す、最高の形で勝てた。今までも上を目指してきたが、いくつも壁があり、苦い思いをしてきた。ついにという感じ。やっと土俵に上がれる。残りの気力を振り絞って、いいゲームをしたい。
いつもの野球できなかった
川之江・重沢和史監督の話 鎌倉は疲れはあったが、そんなに悪くなかった。序盤のミスにつけこまれ、ランナーがたまったところでヒットを打たれた。連続して記録に出ないミスが出た。いつもの野球ができなかった。打線は初回にいい形で先制できたが、それ以降は田辺君の変化球に的が絞れなかった。
流れとらえ全力戦 昨夏、今春の教訓生かす
昨夏は痛烈な当たりがことごとく正面を突き、本塁打1本で敗れた。今春センバツは相手監督自身が「奇跡」と驚いた連打に見舞われた。そんな風にそっぽを向き続けてきた甲子園の“神様”が、ついに明徳にほほ笑み始めた。
初回に1点を奪われる嫌な展開。その裏、先頭山田は当たり損ね。だが、打球は高く弾んで内野安打。一死二塁で森岡は三塁後方への飛球。これも、追いかける野手陣の先、左翼線に白球は弾んだ。二、三塁で筧。速球に詰まり、三塁ベンチ前のファウルフライ。だが、三塁手と捕手が譲り合うように捕り損なった。“神様”がチャンスをくれたようだった。
もう逃さない――。筧は難しい低めの変化球にも体の線は崩さず、ほぼ右手一本で技ありの一打。苦しい体勢でバットを払ったにもかかわらず、打球は右中間を深々と破った。逆転三塁打。“球運”を明徳ベンチに引きずり込んだ。
1点でも多く取って田辺を楽にしたい。その思いが、馬淵監督に流れを変えかねないスクイズ指令を出させた。結果は2度とも失敗。だが、バントを空振りした田辺は直後の守りで2者連続三振など無安打投球。六回は山田が捕ゴロの失敗直後、沖田が走者一掃の三塁打。「点差じゃない。いかに流れを放さないか」。そう口をそろえる明徳ナインはミスをミスで終わらせず、流れを手放さなかった。
気まぐれな野球の神様。ずっと捕まえているのは、至難の技。それは14度目の甲子園となる馬淵監督が、痛いほど知っている。4年前の夏。春夏連覇を狙う松坂擁する横浜を八回表まで6―0とリードした。しかし、八回に4点を奪われ、九回に逆転サヨナラ負け。
「勝ったと思った瞬間に流れは逃げていく」。六回までに8点をリードしたが、鶴川をすぐに投入せず、田辺を七回まで引っ張った。
決勝をにらめば、1球でも少ない方がいい。だが、そうしなかった。今春の福井商戦は田辺を“温存”して、初回に8失点。先を見て、転んだ。「1戦1戦、最後の試合だと思って全力で戦う」。馬淵監督は県大会からそう言い続けてきた言葉を地でいった。 (早崎)
森岡 ラッキー安打で勢い 勝てる打撃に徹し5打点
一回、明徳は早くも森岡の打席で一死二塁の好機。外野手は「森岡シフト」で深い。1―2からの1打は、やや詰まったものの左翼線に浅くふわり。レフトとショートが追うが、ラインぎりぎりにポトリと落ちるラッキーな二塁打。走者二、三塁となって、続く筧が難しい外角を“技あり”で右中間三塁打して逆転した。
森岡は「自分のはヒットらしいヒットではなかったけど、調子いい時に出るヒットなんです。あれで乗った」と言う。4打数3安打5打点。あと三塁打が出れば、サイクルヒットの勢いだった。
五回無死一、二塁は馬淵監督から「勝てるバッティングをしてこい」と指令を受けた。指令に徹し、筧につなごうとバットを短く持って打席に立った。低めのスライダーに体がちょっと泳いだが、右翼に高く上がった球は風にも乗り大会第40号。主砲の3ランで7点目。決勝進出をほぼ決めた。
しかし、馬淵監督が評価するのは、2打席目の2打点を生んだ一塁内野安打。好投手鎌倉に内外と攻められながらも、計5度のファウルで粘る。馬淵監督は「その辺の打者なら1球でくるっと回って三振。あの球をあそこに持っていけるとは」。信頼する3番の技量を喜んだ。
馬淵監督は常々、1、2番の山田、沖田や下位打者が出塁して森岡、筧が打つことを、攻撃の最大のキーに挙げていた。五回無死一、二塁の時、森岡に送りバントをさせても筧は歩かされると考えた。迷わずヒッティング。選手はこれに応える活躍を見せる。
次はついに明徳悲願の決勝戦。そして全国制覇。打線全体も決勝に合わせるかのように調子を上げている。馬淵監督は「3、4番が当たるのは本当に心強い」と手応えを感じている。
森岡は「智弁和歌山のどの投手が来ても、しっかり打ちたい」。頼もしい主砲がチームの勢いを引っ張る。 (土居)
【写真】【明徳義塾―川之江】5回裏明徳義塾無死一、二塁、森岡が大会第40号の3点本塁打を右翼スタンドに放つ(甲子園)
山田・沖田 大技小技で6得点 俊足コンビ1、2番
準決勝で敗れた4年前。プロ入りした寺本、高橋両投手を擁したチームは「おれがおれが」という気持ちが強かったという。ことしの強みは、「個々の選手が自分の役割をきっちり果たしてくれる」と馬淵監督。中でも山田、沖田の1、2番で6得点。森岡の全打席に走者がいた。全国屈指の3、4番の7打点を引き出した。
1番山田はサイドスローの鎌倉が苦手。だから、「打てないなら、ボールに食らいついていこう」。一回は高いバウンドの内野安打。三回は無死一塁で一塁前へ絶妙のバント安打。二塁手のカバーも遅れたが、50メートル6秒05の俊足で駆け抜ける。五回の左前打はバットの先っぽ。宣言通りの泥臭くて、貴重な3安打。六回はスクイズ失敗の捕ゴロ(走者本塁刺殺)で、二塁カバーがいないのを見て、一気に二塁を陥れた。
2番沖田も負けていない。三回一死二、三塁の森岡の一塁内野安打で、二塁から本塁へ好走。「三塁を回って一塁を見た瞬間、いけると思いました」。ベースに飛び込む野手の動きを見逃さなかった。山田、沖田ともに甲子園で本塁打を打ち、長打力がある。しかし、打てない時にいかに点を取るか――。馬淵監督が与えてきたテーマを第一に考え、自分の仕事を果たした。
「エースが投げ、中軸が打った。最高の形で決勝に進める」。そう話す馬淵監督が、大技小技のできる1、2番コンビに手応えを感じている。秋の時点では、森岡の前に走者が出ず、筧が1番を打ったこともあったのだから。
「3、4番が本当に頼りになるから、僕らは四球でもなんでも出ればいいんです」と山田は言い切る。打線の信頼関係が相乗効果を呼ぶ。 (早崎)
【写真】【明徳義塾―川之江】3回裏明徳義塾1死二、三塁、森岡の一塁への緩いゴロ(記録は内野安打)で三塁からまずホームインの山田=写真上=に続き、二塁走者沖田も一気に生還=写真下
決勝へ意欲満々
決勝進出を決めた明徳義塾が、西宮市の宿舎に戻ったのは午後5時ごろ。入浴して川之江との準決勝の疲れを癒やした。
夕食後、決勝に向けてのビデオを約30分間見たという。選手たちは口々に「早くやりたい」と、高ぶる気持ちを抑えきれない様子だった。
準決勝でも本塁打を放つなど、打撃好調の森岡主将は「智弁和歌山は打つイメージが強い。打ち負けないようにしたい」と意欲満々だ。
1年生の背番号「10」鶴川投手は、決勝の舞台に心が弾むようで「やっぱり投げてみたい」と元気に話した。
明徳義塾・筧捕手(一回に逆転の2点三塁打)「うまく打つことができた。体が勝手に反応してくれた」
明徳義塾・沖田左翼手(六回に2点三塁打)「ヒットは打てたけれど、この試合での自分の働きは、いまひとつだった」
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