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2002夏の高校野球 明徳義塾高情報

★第84回全国高校野球選手権県大会の軌跡

 

2002年8月19日(月)<朝刊>

明徳春夏連続8強 常総学院に7−6

【明徳義塾―常総学院】8回裏明徳義塾2死、森岡が7―6と勝ち越すソロ本塁打を右翼スタンド中段に放ち二塁へ向かう(甲子園)  第84回全国高校野球選手権大会第11日は18日、甲子園球場で3回戦の残り4試合を行い、郷土代表の明徳義塾は常総学院(茨城)にリードを許したが、8回に連続本塁打で逆転して7―6で勝って準々決勝に進んだ。明徳の8強入りは今春の選抜大会に続いてで、夏の選手権では4強入りした第80回大会以来4年ぶり2度目。明徳は19日の準々決勝第1試合で広陵(広島)と対戦する。

 明徳は序盤4―1とリードしたが、終盤にかけて同点に追い付かれ、常総に八回表、2点のリードを許した。その裏、明徳は二死から内野失策の後、2番沖田が右翼ポール際に同点2点本塁打。続く森岡も右翼スタンド中段に勝ち越し弾を放って7―6と再逆転。九回を守り切った明徳が接戦を制した。

 この日、四国勢は川之江(愛媛)と鳴門工(徳島)も勝ち、前日に8強入りを決めていた尽誠学園(香川)を含め4校すべてが準々決勝に勝ち名乗りを上げた。4校すべて残るのは初めて。

 【写真】【明徳義塾―常総学院】8回裏明徳義塾2死、森岡が7―6と勝ち越すソロ本塁打を右翼スタンド中段に放ち二塁へ向かう(甲子園)

劇的2連発に興奮、絶叫

8回裏、森岡選手のホームランで勝ち越し。興奮のるつぼと化した明徳義塾応援席(甲子園球場)  歓喜の2連発でベスト8――。18日、甲子園球場で行われた第84回全国高校野球選手権大会3回戦で、郷土代表の明徳義塾は茨城代表の常総学院と対戦。リードを許した八回、沖田浩之選手と森岡良介主将が連続ホームランを見舞い、劇的な逆転勝ちを収めた。応援席は誰彼なく握手を交わし、肩を組んだり、走り回ったり。「えらいぞ浩之、すごいぞ森岡」「優勝いける!」と威勢のいい声がいつまでも続いた。

 苦しい試合だった。序盤に逆転したものの、その後ヒットが出ず七回には同点。控え投手、鶴川将吾君の父、裕昭さん(45)=奈良県下市町=が「ここから始まり。元気出そう」と大声を出すと、選手の父母らが「よっしゃ。そうじゃ」と気合を入れ直した。

 八回表、勝ち越されると、総立ちで「頑張れ、田辺」の大合唱。筧裕次郎選手が出た兵庫県のソフトボールチーム、「明石ウエスト」の後輩、増本弘樹君と岡祐馬君=いずれも小学5年=も野球部員に交じってメガホンを打ち鳴らし、「絶対勝てる」と声援を送った。

 ドラマはその裏に待っていた。快音を響かせ右翼線に上がった沖田選手の打球に、思わず野球部員らの腰が浮く。すぐそこに立つポール。「向こうへ行け!」「こっち来るな!!」―。白球はポールをかすめて、右翼席に飛び込んだ。

 「ギャー」「オー」。スタンドは言葉にならない叫び声で騒然。興奮が冷める間もなく、続く森岡主将も初球を右翼席へ。地鳴りのような歓声がわき起こり、抱き合い跳びはねる人の輪が幾つもできた。

 知らない者同士も、大声で「すごかった」「こんなええ試合初めて」。ベスト8を決めた選手に、手が痛くなるほどの感動の拍手が送られていた。

 【写真】8回裏、森岡選手のホームランで勝ち越し。興奮のるつぼと化した明徳義塾応援席(甲子園球場)

沖田同点弾、森岡決勝弾 8回執念の力業

【明徳義塾―常総学院】8回裏明徳義塾2死一塁、沖田が右翼ポール際に2点本塁打を放ち6―6の同点とする。投手飯島、捕手島津(甲子園)  第11日は18日、甲子園球場で3回戦の残り4試合を行い、郷土代表の明徳義塾と常総学院(茨城)の試合は、2点を追う明徳が八回、沖田の2点本塁打と森岡の勝ち越し弾の連続本塁打で試合をひっくり返し、7―6で常総を下して19日の準々決勝に進んだ。明徳の8強は選抜大会に続き2季連続で夏の選手権は4年ぶり2度目。

 このほか、川之江(愛媛)鳴門工(徳島)智弁和歌山(和歌山)が8強入り。四国勢は前日の3回戦に勝った尽誠学園(香川)と合わせ4校すべてが準々決勝に進んだ。4校すべてが8強に勝ち残るのは初めて。

 明徳は、初回に常総・三浦に先制本塁打を許したが、二回に筧以下、田辺の犠打を挟んで5連打して3点。三回にも暴投で1点を追加した。しかし、常総は五回に8、9番の長短打などで2点、七回には明徳守備の乱れからスクイズで同点。さらに八回、宮崎の左翼を襲う三塁打で2点を勝ち越した。その裏、明徳は二死から山田が内野悪送球で出塁すると、沖田は右翼ポール際に同点の2点弾。続く森岡も右翼スタンド中段に運ぶ大きな当たりの本塁打を放って7―6。九回の常総の攻撃をエース田辺がしのいだ。

 川之江は一回に藤原の2点本塁打で逆転し、その後も加点。桐光学園(神奈川)に4―3で勝ち、初めて準々決勝に進んだ。

 選抜大会準優勝の鳴門工は九回に4点を勝ち越し、7―3で玉野光南(岡山)を下し、夏は初めて8強に残った。

 智弁和歌山は7―3で智弁学園(奈良)を振り切り、甲子園で初の「智弁対決」を制した。ベスト8入りは優勝した一昨年以来。

 第12日は19日、同球場で準々決勝を行い、明徳は第1試合で広陵(広島)と対戦する。(この項一部共同

 【写真】【明徳義塾―常総学院】8回裏明徳義塾2死一塁、沖田が右翼ポール際に2点本塁打を放ち6―6の同点とする。投手飯島、捕手島津(甲子園)

 【】試合巧者の両チーム。シーソーゲームの白熱した競り合いは、明徳が八回、沖田、森岡の連続右翼ホーマーで再逆転。最後は長打力の差で突き放した。

 明徳は左打者を6人並べ、先発内田を二回の見事な集中打でノックアウト。しかし、継投飯島からは三回にボーク、暴投で1点をもらっただけで、打ちあぐんだ。八回、2点差に離されたが、二死から山田が失策で出て、沖田、森岡が右翼に連続本塁打。内角直球をうまく振り切った。

 田辺は一回、2番三浦に初球の甘いスライダーを中越え本塁打されるが、丁寧に内外角をつき、四回まで付け入るすきを与えない。だが、五回二死で厳しいコースをつくものの、四球で初走者を背負った。セットポジションで連打を浴び2失点。

 八回はバント、犠打、内野安打で揺さぶられるが、スクイズを本塁刺殺。その前の三塁走者へのけん制が効いた。しかし、この後、2―2まで追い込みながら、宮崎に左翼に三塁打。先の七回の2失策も付け入れられ、無安打で1失点。これまで堅実な守備だっただけに、ここは残念だった。(土居

 2、3点は防げた 明徳義塾・馬淵史郎監督の話

 田辺は研究されているだろうから、本来の投球と変えた。打たれ強いのが田辺の良さです。失点は守りがしっかりすると2、3点は防げた。それでも、八回ツーアウト、ランナー無しから、追い付いた選手を褒めてやりたい。

 投手が硬くなった 常総学院・木内幸男監督の話

 初回に1点先行したことで、うちの投手が逆に硬くなってしまった。思わぬ展開だらけだったが、甲子園はそういう特殊な場所。ただ、実力的にかなり上の相手と五分に近い勝負ができた。2年生にとって糧になる負けだ。

 明徳義塾・田辺投手 (苦しみながらも完投)「ストレートが走っていなかったので、コントロールを意識した。こんなに粘るチームとの対戦は初めて」

 明徳義塾・梅田三塁手 (1年生、七回に2失策)「緊張はなかったが、足が動かなかった。申し訳なかった」

 明徳義塾・泉元右翼手 (二回に2点二塁打)「ずっと当たっていなかったので、何とかしたかった。ストライクを素直に振った」

 常総学院・宮崎二塁手 (八回に2点三塁打)「気持ちが伝わってきて、みんなで打ったヒットだった」

 常総学院・横川三塁手 (八回、痛恨の失策)「簡単なゴロだったので簡単にいきすぎた。普通のゴロだったのに…」

 常総学院・吉原選手 (九回に代走で三盗失敗)「スチールのサイン。イチかバチかの勝負だった」

二死から逆転劇 「選手褒めたい」馬淵監督

 馬淵監督は“木内野球”を考え、「五回までに点差を広げ流れを取り込みたい」と話していた。常総の先発は右横手投げの飯島と踏んでいたが、右下手の内田。一方の木内監督は試合のポイントを「先発がどこまで持ちこたえるか」と考えていた。

 明徳にとって先発内田は意外だったが、予想範囲内。早くも二回に5安打で3点をもぎ取り降板させた。ソロホーマーで先制を許したが、ここまでは明徳のペース。

 しかし、馬淵監督は常々、「点差じゃない。五回を終わって流れがどちらにあるかだ」とナインに話していた。五回二死からエース田辺が四球を与え、下位に連打を浴びて2失点。1点差で勝っていたが、流れはホームベース上を行ったり来たり。七回に2失策などで同点にされ、八回は先頭のセーフティーバント、犠打と揺さぶられ、スクイズはしのいだが、最後に長打され2点先行を許した。

 流れは完全に常総ペース。だが、明徳ナインはあきらめない。馬淵監督は「春から45試合ぐらいして、負けたことないじゃないか。九回まで負けていたゲームもある」とナインを奮い立たせた。

 八回は選手の気迫が伝わってきた。二死から山田が失策出塁すると、右翼に沖田、森岡が連続本塁打。一気に流れを取り戻した。

 試合後、馬淵監督は「さすがは木内監督。長打力がなくても、ドラッグバント、スクイズでつくってこられた」と常総の戦いを評価した。

 ナインに対しては、「八回の二死ランナー無しから追いついた選手を褒めたい。足を引っ張った守りは反省しないと」と課題も挙げた。

 主将森岡はウイニングボールを無言で、サード梅田に手渡した。梅田はボールの重みを確かめながら、「自分の失策で苦しんだ。優勝まで行きたい」と誓った。(土居

森岡「本塁打で決める」

【明徳義塾―常総学院】8回裏明徳義塾2死、同点本塁打の沖田に続き、森岡が右翼スタンド中段に運ぶ勝ち越し本塁打を放つ。投手飯島  打った瞬間、観客までもがホームランを実感する会心の一撃。森岡は走り始めるやいなや、「やったぞ」とばかり右手を突き上げ、一塁応援席に喜びを表現。八回、森岡の勝ち越し弾が、満員のライトスタンドに飛び込んだ。

 この回の3点は、二死走者無しから。俊足山田が失策で出ると、沖田の2球目は得意のインコース直球。沖田が「手応えが良かった。外野の頭は抜けたと思った」の当たりが、ポール際のフェンスを越えて公式戦初ホーマー。馬淵監督は「変化球を投げたいが、山田の足を警戒して直球だった」と見る。

 続く森岡は狙い球は決めてなかった。だが、「絶対、決めてやる。ホームランを打つ」と打席に入った。初球は沖田の本塁打と同じインコース直球。練習通りうまく振り抜くと、連続アーチ。甲子園が大きくどよめいた。

 球児に5回のチャンスがある甲子園で、森岡は4回出場を果たした幸せ者。しかし、今回は県大会から納得できない打撃が続いた。甲子園入りしても、フォームやタイミングを調整する毎日。

 1回戦は1安打、2回戦も1安打。打点を稼ぐが、まだ足りない。相手投手のマークやドラフト候補と騒がれる重圧もあった。2回戦を前に、疲労性のひざの痛みも感じたが、気持ちはいつも前向き「次は打ちます」と言い続けた。

 中盤、馬淵監督に「お前が打たなきゃな」と言われた。そして勝負の分かれ目で、主砲の役目を果たした。観客席へのパフォーマンスを、「勝手に出た。恥ずかしい」と照れるのも森岡らしい。「あんなん打ったことがない。これを機に打てるようにしたい」と森岡。復活弾でもやもやは吹っ切れた。次の戦いで爆発だ。(土居

 【写真】【明徳義塾―常総学院】8回裏明徳義塾2死、同点本塁打の沖田に続き、森岡が右翼スタンド中段に運ぶ勝ち越し本塁打を放つ。投手飯島

もつれた戦い

 甲子園での経験豊富な監督同士の対戦はもつれにもつれた。1点差で逃げ切った明徳・馬淵監督は、少し疲れた様子だった。

 常総の木内監督が動いた九回のシーンが象徴的に映ったのだろう。馬淵監督は「木内さんが、勝てるチームと思っているのなら、いろいろ動かなかったと思う。どっしり構えていたはず」と話していた。

常総 勝利に焦り 主戦「失策で集中力切れた」

 試合後の常総学院・木内監督はつくったような笑顔だった。

 八回二死から失策の後、連続本塁打を浴びた場面。「あそこで2本出るのは実力の差。来るものが来たなという感じでしょう。エラーは痛いし、その後、何であんなところにボールを放るかなとは思いましたけど」。一気にまくし立てた。

 71歳のベテラン監督は「実力的には差があった」と言った。投手で4番の飯島を外すなど、打順を大幅に組み替えた。投手も背番号10の内田で中盤までしのぎリードして飯島を投入するプランだった。

 だが、内田が二回に3失点で、三回から飯島が救援。バント攻撃などで積極的に動き、八回には2点をリードしたものの、その裏に落とし穴があった。

 打たれた2年生エース飯島も「自分たちの力のなさは感じていた」と言う。逃げ切りたいという焦りだった。「気持ちで行こうとして先走ってしまった。エラーで集中力が切れて、ボールが甘くなって…」。悔やんでも悔やみ切れない思いが、おえつになって漏れた。

常総主将 頭真っ白

 逆転負けした常総学院の持田主将は一塁手として今大会初めて先発メンバーで出場。「優勝候補とやるんだから(3年生は)最後になるかも、と監督に言われていた。出られてよかった」と涙はなかった。

 八回に2点を勝ち越したが、直後に明徳義塾の沖田と森岡に連続本塁打を打たれ「打球を見送っているときは頭が真っ白だった」。

 八回二死からの三塁手の失策が2本塁打につながった格好となったが「(送球を)捕ってやれなかったのが心残り」と、しきりに悔しがっていた。

馬淵監督が23勝 県歴代2位タイ 甲子園通算勝利

 明徳義塾・馬淵史郎監督は18日、甲子園球場で行われた第84回全国高校野球選手権大会第11日の3回戦、常総学院(茨城)に勝って春夏の甲子園で通算23勝目。県代表を率いた監督として歴代2位タイとなった。  歴代1位は谷脇一夫氏(元高知商監督)の25勝。2位の23勝には松田昇氏(故人、元高知商―明徳監督)がおり、馬淵監督は同氏に並んだ。4位は溝渕峯男氏(故人、元土佐―安芸―高知監督)で17勝。

 ▽チーム1イニング最多本塁打2 明徳義塾が3回戦、常総学院戦の八回に沖田浩之、森岡良介が記録。大会タイ記録で前回大会の智弁学園の上田、戎谷以来30度目。沖田、森岡は連続ホームランで、これは第79回大会の智弁学園の高畑、庄田以来11度目。県勢としては第66回大会の明徳義塾の横田和俊、岡村幸仁が1回戦、県岐阜商戦で記録して以来2度目。

 ▽最少残塁0 明徳義塾が3回戦の常総学院戦で記録。第75回大会の修徳以来9校目。

本塁打は野球の華

 明徳義塾は八回に連続本塁打で逆転した。最近はいくら打力優位の傾向が強いといっても、こんな力業が決まると高校野球の域を超えてしまう。

 開幕日からずっと左翼方向へ強い風が吹き、これにも後押しされた本塁打が増えた。すでに今大会は30本を越えているから、明徳義塾の2連発も驚きではないと解釈するむきもあるだろう。

 それでも逆転された直後にはね返した力は、それ相応の自信に裏打ちされた一撃であったと推察する。あの場面、二死であったことを考えると狙い打ちの大当たりであったとも見たい。

 投手の心理はどんなものであっただろう。あの八回、簡単に二死を取った。3人目も内野ゴロに抑えたが、三塁手が一塁に低投。このミスで動揺が生じた。勝利が見え始めていただけに複雑な心境に追いやられ、勝負を急いだのではなかろうか。

 試合巧者の常総学院も本塁打という空中戦に持ち込まれると防ぎ手がない。ホームランは野球の華とはよく言ったもので、ストーリーを劇的にするにはこれに限る。(共同


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