
部員75人。今センバツ参加32校の中で最も多い。一方、全国にはPL学園や智弁和歌山のように「1学年10人まで」と部員枠を決め、少数精鋭主義のチームもある。
馬淵史郎監督は少数主義を採らない。「全国に5000近い学校がある中で、うちを選んでくれるのは、ありがたいこと。うまい下手で選びたくない。技術の劣ってる選手がうまくなろうと努力する過程こそが大切」。75人の総合力がチームの力だ。
選手が多い分、馬淵監督や宮岡清治部長をはじめ、コーチの飯野勝、重兼知之がつきっきりで指導。少しの時間も無駄にしないよう交代でノックを打つ。また、大会直前を除き、上級生全員がフリー打撃に取り組む。1年生も定期的に打撃練習があり、自主練習の成果を発揮しようと快音を響かせる。この冬、練習機会を増やすため、専用球場横にサブグラウンドも造った。
2番打者候補として急成長した1年の沖田浩之は平等なチャンスの中で自分をアピールした。5月に左ひじを手術。昨年はずっとキャッチボールさえできなかった。秋以降の打撃練習で積極的な振りが監督、コーチの目に留まり、準レギュラーに。シート打撃でも快打を連発。ついに背番号7をつかんだ。
もちろん全員がレギュラーにはなれない。馬淵監督は言う。「甲子園に出たりエースで活躍した選手が必ずしも幸せとは限らない。野球は人生の一部。それからの人生の方が長い。3年間を控えで過ごした方が、社会に出て頑張れるんじゃないですか。大切なのは今、自分のできることを精いっぱいやること」
二塁手では池田直也、今村正士、台義明らが激しい争いを繰り広げる。今村は言う。「レギュラーになりたい。でも、それは結果。自分の役割を貫きたい。常にムードメーカーでありたい」。東京・府中第八中では生徒会長。昨夏、甲子園のアルプス席では志願して応援の大太鼓をたたいた。グラブには「ムードメーカー」の刺しゅう。ベンチでも大声を心がけるし、一塁コーチにも進んで立つ。
台は「将来は教師になって野球を教えたい」という知識と判断力を買われ、三塁コーチという大事な仕事を任される。「誇りに思うけれど責任は重大。必死です」。入部時から欠かさずつける練習日誌は、3冊を超えた。この冬は実戦中心の練習が多く、メモ量も増えたという。
佐藤翔太は昨夏、肩に違和感を覚えた。中学時代は投手だったが、「マネジャーの仕事をする先輩を見て、意味ある高校生活だと思った」。中学1年の夏休みの宿題でラジオ中継を聞きながらスコアつけをやった。習字二段で字もうまく、8月の新人戦からスコアラーに指名され、マネジャー役を務める。
佐藤は打撃投手も買って出る。背番号はない。ピッチャープレートもないが、大切な“マウンド”に変わりない。「僕は練習が勝負。レギュラーに負けたくない。普通の打撃投手は打たせようとするでしょう。でも僕は苦手なコースへ投げる。打ち取りたいんです」
そんな佐藤が甲子園で楽しみにしていることがある。「お前の誕生日、準々決勝の日やんか。絶対勝って誕生日を祝おう」。先週の練習後、誰からともなく声が上がった。チームメートが誓い合ってくれた。
75人それぞれが思いを秘めながら、自らの役割を果たそうと懸命に努力を続ける。ベンチにもスタンドにも、それぞれに甲子園は訪れる。この春が飛躍のきっかけになれば、うれしい。
写真部・佐藤邦昭
運動部・早崎康之
=おわり
【写真】部員75人はセンバツ出場32校中最多。レギュラー争いは激しいが、競争からエネルギーが生まれる
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