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床運動の静止のような「一分間体操」。五時間近く体をいじめたあと、同じ姿勢の一分は意外にきつい。藤本敦士(ふじもと・あつし)内野手のそばにコーチがベタリ。足が曲がった。腹筋が揺れた。即座にコーチの手が伸びる。「ギャ! 苦しい」。自然に口が動く。
「セールスポイントですか? 意識しないようにしてます。地味でもええから、プレーの確実性を上げたいですね」。まじめな抱負が良く回る口から関西弁で飛び出す。何となくおかしい。得なキャラクターだ。
休日。室戸市の山深い学校を訪ねた。仲の良い吉田浩選手が地元の知人に訪問を請われ、声が掛かった。「全校生徒が十八人。ユニホームもなんも着てないのに『タイガースの藤本です』言うたら、それだけで『ワーッ』こっちがうれしかったですわ」。間違いなく“いい人”系だ。
「売り出し中」と形容するのは、まだ少し心もとない二年目だが、今年のトラの元気を象徴しているのは確かだ。最後まで球場を離れない。「明るく楽しく練習しなくちゃ」。体を動かすことに飢えているように見えるのには、理由がある。
育英高から亜細亜大。順風満帆の予定が突然のヘルニア。ベッドで一カ月寝た。メスは入れなかったが、大学は辞めた。「最初、野球もう駄目や言われました。次は内野は無理。そして二塁なら言われて…。それでも、またショートに戻ってきました」。小さいころから遊撃一筋の二十四歳はおどけたような口調の裏に挫折経験のつらさを隠す。
56から9。背番号が随分と軽くなった。「藤本の番号、言われるようにしたいですね」。今、若トラは心地よいプレッシャーを楽しんでいる。
【写真】けがで大学中退の後、甲賀総合科学専門学校を卒業した。「自分も最初、忍者の学校か思いました。ハッ、ハッ、ハッ」。実は社会人野球に選手を送り出す2年制の学校
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