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新世紀の甲子園へ 伝統校・高知の挑戦 <4>
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中村イズムが浸透
★続き
 ことし正月二日、練習始めの高知高グラウンド。中村敏彦監督は一冊の本に触れながら話し始めた。モンゴルに野球を広めようと留学した青年の体験談、関根淳著「モンゴル野球青春記」(太田出版発行)だった。

将来に悔いを残さぬようトレーニングはきっちりと。鍛えた体がセンバツに生きる(高知市福井町の高知学園「登龍館」)  併設の高知中出身の二年生部員は中三の夏、モンゴルに出掛け、著者が指導する地元チームと親善試合をした。本には、県出身の前田祐吉・前慶大監督が同じように現地を訪れ、「楽しくなければ野球じゃない。練習は修行とは違う」という話をしたことを紹介。日本でスパルタ式練習を体験した著者は、前田監督の言葉に驚きと重みを感じた―と記している。

 ところが、中村監督は逆に切り出した。「本来そうかもしれないが、つらい練習は覚えていて、『自分はこれだけやれた』といつか役立つ」。やらされていると感じても、今はやる時。監督自身が学生時代、もっと鍛えることができたし、さらに上達したはずと後悔した経験からだ。

 ある程度はノルマ

 岡本道雄前監督は自主性と個性を重んじた。中村監督もかつて、選手として三年間、岡本監督の指導を受けた。ところが、中村監督は「管理するつもりはないが、生徒は自主と言うと楽な方に行きやすい。ある程度のノルマは必要、そこから先が自主性」と考える。

 岡本前監督も「昔の選手はわきまえてくれた。今は時代の流れで自主性をはき違える子がいて、ある程度は教えないと。中村はきちっとしているので、今のチーム向きだろう」と見る。

 今春卒業した投手の池添和也は、「監督には技術的なことのほか、野球以前の人間性、社会に出てからのことを教えてもらった」と言う。徳弘健は「野球だけでなく、いろんな事を考えさせてもらった。終わってから、メンタル面で生かされている」と、“中村イズム”について話した。

 ある日、中村監督は選手が食事するのを見て、「ご飯を残さず、きれいに食べろと言われたことがあるか」と聞いた。すると、半数の選手は言われたことがなかった。

 今は注意する大人が減った時代には違いない。監督は子供のころ、作物や食事を作ってくれた人に感謝の気持ちを持て、と諭された。それがふつう一般的だった時代の育ちだ。

 「後で使う人が気持ち良いように、トイレのスリッパ、靴の整とんなど、よく注意します。あいさつなど自然に礼儀作法ができるようになれば、大人になって役立つ」

 他人への気配りができ、痛みが分かる人になれとの思いが強い。練習場でもグラブや運動靴がきちんと並ぶようになった。

 大学で知った挫折

 中村監督は立命館大時代、アルバイト先のすし屋で、同立戦をテレビで見た苦い体験がある。「おれは何でここにいるんだろう」と自問した。

 大学に進学してすぐ、オープン戦で使ってもらった。ところが、春季リーグを前にけが。それから補欠、初の公式戦ベンチ入りは三年生の秋だった。また、実家が経済的に苦しくなり、二年の時に「大学を続けるも、やめるも自分で決めなさい」と言われた。練習後にアルバイト。じっくり考える日々が続いた。

 大学での挫折が、考え方を変えた。「レギュラーになれんとやめる子がいるが、続けることで将来頑張れる人になれる。三年間でアピールできるものを見つけてほしい」と補欠選手を気に掛ける。

 いろんな人に助け支えられた体験が、中村監督の指導のバックボーン。「野球は続けても二十年足らず、やめてからの人生が長いですから」。人生の壁を克服するための修行。だがそれは、実力伯仲の試合の勝負どころで、同様に強みとなるはずだ。

 =一部敬称略

 【写真】将来に悔いを残さぬようトレーニングはきっちりと。鍛えた体がセンバツに生きる(高知市福井町の高知学園「登龍館」)


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