
鏡もち、ひしもち、ぜんざい、雑煮、あべかわ、あられ・かきもち、いそべ巻き…ともちづくし。もろぶたの中は、左上端から時計回りにコキビ、アワ、タカキビ、白もち、かんば、アオノリ、黒豆、芋、うるもち、ヨモギ、祝いもち、きらずもち |
お正月といえば、もち。台所に広がる湯気、そして蒸したもち米の香り…。もちつきといえば今やイベント的なものになってしまったが、かつては年末ともなれば各家々の庭で、もちをつく光景が見られたものだ。
もう30年近くも前になるが、農家だった筆者の家でも年末にはもちをついていた。もうそのころはもちつき機を使っていたが、もちつき機にこびり付いたもちをそのままつまむのが大好きだったのを思い出す。
「正月に限らず、何か祝い事があればもちをつく。日本人が“ハレ”の気分を表現するのがもちなんですね」と、土佐伝統食研究会の松崎淳子代表。
正月、桃や端午の節句、棟上げのもち投げ…と、米食民族である日本人にとって、神式・仏式にかかわらず、もちは祝い事や祭礼に欠かせない最高級の食べ物。田植えじまいや秋の稲刈り後にもちをつき、田の神に供えて祝う地域も全国には多くあるという。

つき上がったもちにあんこをくるんでいくJA高知市女性部の竹島愛子部長=右から2人目=ら。30年以上も、もちの直販事業を続けている |
さて今回、もち作りに協力してもらったのはJA高知市女性部(竹島愛子部長)の皆さん。旧高知市東部農協時代からもう30年以上も、もちの直販事業を続けている。
同JA本所(高知市高須東町)内にある新農村婦人の家には、大型のもちつき機がでーんと鎮座している。家庭にあるような、こねてつくタイプではなく、いわば杵(きね)と臼でつくのを機械化したタイプのものだ。
蒸し上げたもち米をもちつき機へ。もちがつき上がると、女性部のメンバーたちが手早くもちをつまんではひねり、あんこをくるくると包み込んでいく―。さすがの手さばきだ。「棟上げなどのときにはしょっちゅう祝いもちをついたもの。家なんか建てたらすぐに2俵、3俵いうてついてね」と竹島部長。今ではもち投げのもちも、業者に頼む人がほとんどだろう。
今回作っていただいたのは、普通の白もち、うるもち(もち米を主に、うるち米を混ぜたもの)に加え、黒豆、アオノリ、ヨモギ、サツマ芋、ほしか(かんば=干し芋)をつき込んだもちなど。このほか、日曜市などで調達してきたタカキビ、コキビ、アワのもちや、佐川町の旧尾川村にだけ伝わるという、おからをつき込んだ「きらずもち」。今回は手に入らなかったが、蒸し芋を千切りにしたヒガシヤマや黒砂糖、干し柿などが入ったもちもある。

ぺったん、ぺったん。昔ながらの杵と臼で蒸した芋ともち米をつき込んでいく=写真はいずれも高知市高須東町のJA高知市 |
形も丸もちや切りもち、ひしもちあり、調理法も素焼きに始まり、雑煮、ぜんざい、あべかわ、いそべ巻き…。薄く切ってあぶれば「かきもち」に、細かく割って煎(い)れば「あられ」にもなるし、鍋料理の最後にもちを入れるのもおいしい。このように、色や形、種類、食べ方もさまざま。それだけもちの歴史は古く、多彩な食べ方が伝えられてきたということだろう。
筆者が個人的に一番好きなのが芋のもち。「もちつき機にこびり付くと後始末が大変。芋の割合を多くすれば、こびり付きにくくなるのでつきやすいが、もち米を多くした方がおいしい」と竹島部長。そこで登場するのが杵と臼。蒸した芋に砂糖・塩を加え、もち米と一緒にぺったん、ぺったんとついていく。
つきたてをいただくと、のど越しとでも言おうか、のどにこびり付くような粘り具合が懐かしい。そう言えば、土佐清水市にいる親せきのおばあさんが作ってくれた芋のもちは甘さ加減といい、焼いたときの香ばしさといい、絶品だったなあ…。
あられを作っているのを見て、はたと気が付いた。もちを細かく割って煎ればあられに、同じようにひしもちが3色のひなあられになるということを。市販のものしか見たことがなかったためだ。
もちのように、農に根差した昔ながらの食文化と、今のわれわれの生活がそれだけ乖離(かいり)している証拠なのかもしれない。
(協力・土佐伝統食研究会)
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もちこぼれ話
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高知平野のもちは、白もちとうるもちが主。平野部でもアオノリやヨモギなどをつき込んでいたが、芋やキビ・アワ類などの雑穀をつき込むのは農山村や漁村のものだったという。
「奉公に出ている子どもや嫁いだ娘が里帰りしたときに親が作るのはすし。山間部ならもちをついて土産にしたことでした」と土佐伝統食研究会の松崎淳子代表。
もちの“横綱”ともいえる鏡もちだが、歳末、家ごとにつくもちの中から、まずは歳神さまへと、一升もちのお重ね(鏡もち)をお床に供える。
小さい重ねもちは神棚(天照大神)、水神さま、かまどさま、お道具の神さま、門の神さまなど、“八百万(やおよろず)の神”に供える。
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