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土佐がうまい! 12月

 ブリ(大月町柏島)  海の恵みを丸ごと

季節のブリを使った柏島の料理。手前中央から時計回りに、へだずし、ブリうどん、煮付け、刺し身、ブリ大根(大月町柏島のすくも湾漁協柏島支所)
季節のブリを使った柏島の料理。手前中央から時計回りに、へだずし、ブリうどん、煮付け、刺し身、ブリ大根(大月町柏島のすくも湾漁協柏島支所)
 「寒ブリ」と聞けば、やはり、熱燗(かん)か。飲兵衛が思い浮かべる。

 肴(さかな)は塩焼き。ブリ大根も捨て難い。カマの肉をほじほじしながら、くぃーっと一杯…。そんな妄想を乗せた、いやいや、土佐伝統食研究会のメンバーを乗せた車は一路、幡多郡大月町柏島へ。

 柏島の港に着くと、みぞれ交じりの風の中、すくも湾漁協柏島支所女性部の皆さんがあったかな笑顔で迎えてくれた。

 会長の浜野洋子さん(61)は人気コミック「美味しんぼ」の「日本全県巡り高知編」(87巻)で、柏島のさつま汁などを紹介。伝統食研究会の会長、松崎淳子さんもその料理対決のシーンで、陶芸や食の大家、海原雄山に紹介されて登場。幡多地域のしょうゆの甘さなどについて解説している。

 “美味しんぼの顔”がそろって、さあ、柏島の食である。

 主役のブリ。今回は体長約60センチ、5・5キロを一本丸ごと使う。刺し身、煮付け、ブリ大根、そして柏島ならではの、へだずしとブリを使ったうどんの5品だ。

慣れた手つきでへだずしを作る柏島支所女性部のメンバー(同)
慣れた手つきでへだずしを作る柏島支所女性部のメンバー(同)
 刺し身は大根をけんにして、青葉、タマネギ、ボウフウなどを添え、ぬたではなく、しょうゆでいただく。煮付けは頭、カマ、尾の部分をショウガを入れて煮る。ブリ大根は、大根は下ゆで、ブリは湯通しして炊き合わせる。

 へだずしの“へだ”とは、刺し身などを取った後のはぎれのこと。それを切り開き、薄塩を振って2、3時間寝かした後、酢じめに。ワサビを練り込み、棒状の飯の上に乗せ、断面が三角になるように押さえていく。

 もう一つのブリのうどんは、干しうどんを使うのが特徴。ブリのあらを甘辛く煮て、汁も一緒にうどんにかける。

 女性部のメンバーは「運動会や卒業式の慰労会とか、必ずこれが出よりました」「干しうどんじゃないと、うじゃうじゃになっておいしくない。寒くなってブリがあれば、これを作ります。ぬくぬくでやるとおいしいですよ」と言う。

漁港に水揚げされた魚。取材に訪れた日はブリはわずかで、ハマチが大半だった(柏島漁港)
漁港に水揚げされた魚。取材に訪れた日はブリはわずかで、ハマチが大半だった(柏島漁港)
 そんな料理が目の前に、ずらりとそろった。

 脂の乗った刺し身は、舌の上でとろっと溶ける。わさびとしょうゆが絡まる身から、じゅわっと甘みが溶け出していく。

 ブリ大根や煮付けの間にいただいた、へだずしは何とも懐かしい味。ブリの甘さがめんに絡み合ったうどんに、はしが進んだ。

 「ブリは昔から高級魚。売って生活費に充てるもので、家族で1本買って食べるようなものじゃなかった」と浜野さん。へだずしもまた、お祝いの時に食べるものだったという。

 松崎さんは柏島の食の印象を、「素朴な漁村の食」とまとめる。1本のブリを残すところなく食べる。そして「ブリうどん」のように、主食とドッキングさせる。柏島に伝わる「こうしめし」「ひや汁」(メモ参照)もこうした食文化のうちの一つだろう。

 「美味しんぼ」の海原雄山は、高知での料理対決の締めくくりとして、その食文化をこう解説する。

 「強靱(きょうじん)で、歴史を揺るぎなく受け継ぎ、人間臭さが濃厚で温かい」

 それは柏島の食にもそのまま当てはまる。

(協力・土佐伝統食研究会)

【メモ】
 「こうしめし」と「ひや汁」

 こうしめしは、ご飯にたくあん、岩ノリ、シラスを使ったまぜご飯。旧正月前にノリ採りがあり、「年越しめし」が「こうしめし」になったという。「正月ならではの料理といえば、こうしめしでしょうね」(浜野さん)。今は岩ノリを使わず、普通のノリで年中作る。

 ひや汁は、魚(ムロアジやトンゴロイワシなど)を焼いてほぐし、みそと砂糖、落花生のすりつぶしも入れて合わせ、白ご飯にかける。落花生の風味と甘みが特徴。昔は麦ご飯にかけて食べたという。


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