
芋類の“茎”など葉柄類を使った料理。手前から時計回りに、サツマ芋の葉のごまあえ、サツマ芋の茎の煮物、五目ずし、ヒイナのごまあえ、カボチャの茎の煮物、ヤツガシラの茎の煮物、葉トウガラシの煮びたし(写真はいずれも土佐山田町西後入の横山さん方) |
本県では、芋やカボチャなどの“茎”を当たり前のように食べる。正確には葉柄(ようへい)の部分だが、これが県外の人から見ると驚きらしい。
「高温多雨の高知県では夏になると、芋やカボチャなんかの茎が畑に繁茂するでしょ。夏野菜として茎を食べるという知恵が、農家には昔からあったのよね。イタドリなんかと同じように、これも高知独特の食文化の一つ」。土佐伝統食研究会の松崎淳子さんが説明してくれる。
そういえば、幡多にある筆者の実家でも、サツマ芋の茎をジャコ天などと一緒にいためたり、煮つけたりしたものがよく食卓に上っていたのを思い出す。
というわけで、今回のメニューは芋などの葉柄類を使った料理。香美郡土佐山田町西後入(にしごうにゅう)の横山佐代子さん(72)方におじゃました。平地から細いくねくね道を車で15分ほど登った山の上にお宅はある。
料理を作ってくれたのは横山さん、そして近所の公文初子さん(74)、門脇喜世さん(73)の3人。
サツマ芋の茎の煮物▽サツマ芋の葉のごまあえ▽カボチャの茎の煮物▽ヤツガシラの茎の煮物▽葉トウガラシの煮びたし▽ヒイナのごまあえ▽芋の茎を使った五目ずし―の計7品がこの日のメニューだ。

夏野菜の端境期には、これらの葉柄類が立派な“夏野菜”に変身する |
ゆでたサツマ芋の茎を油揚げと一緒に煮付けたものはシャリシャリとした歯応えが特徴。調理する際、葉っぱの方から皮をむくとむきやすいという。彩りとして五目ずしの具に使うことも本県ではよくある光景。サツマ芋の葉は油を加えて湯がくと軟らかくなるそうだ。カボチャの茎の煮物は、ほのかにカボチャの香りがする。
里芋の一種であるヤツガシラは、茎の部分は皮をはがず、芋の部分と一緒に熱湯をかけて半時間ほど置くと軟らかくなるという。煮物は茎の部分の食感に芋のホクホク感が混ざり合い、これも独特の味わいだ。
「うちんくのおばあさんは七夕のころになると必ず、そうめんをナスやカボチャの茎と一緒に煮込んだものを作りよった」と、門脇さんは振り返る。「最近は日曜市でも芋やカボチャの茎を売っているけど、農村から街に人が流出するようになって以降、街でも売られるようになったのでは」。松崎さんは推測する。
キュウリとナス、そしてリュウキュウ―本県の平野部ではかつて、夏野菜の定番はこの3つだったという。流通が発達した今でこそ、夏でもさまざまな野菜が出回っているが、山間部などの農家の人々はそれら定番に加え、「生活の知恵」として夏野菜の端境期に芋やカボチャなどの茎を食してきた。

昔ながらの料理を作ってくれた横山佐代子さん=中央=ら |
「茎のたぐいは食物繊維は豊富でも、緑黄色野菜としての栄養分は不足気味。だけど、葉トウガラシやヒイナは立派な緑黄色野菜なんですよ。カロテンの供給源として夏バテ防止にもいいし、これはものすごい生活の知恵」。松崎さんの声のトーンが上がる。
トウガラシはこの時季、葉の部分を湯がいてから水に漬けて一晩置き、あくを抜いてジャコと一緒に煮びたしにする。実の部分は秋の収穫まで残しておき、収穫後、葉と一緒にからし煮にして保存食に。葉から実まで、1本のトウガラシを無駄なく食する―これも生活の知恵といえるだろう。
ヒイナはヒユ、ヒユナとも呼ばれ、もともと畑や道端などに自生する雑草。中国では夏野菜として重宝されているという。現在は食用の改良種もあるが、「これの種を一度まいたら、もう手が付けられんくらいいっぱいに生える」と横山さん。ヒイナのごまあえをかみしめると、ホウレンソウにも負けない濃い味わい。油いためにしてもおいしいそうだ。夏野菜が少ないこの時季、横山さんは地元のAコープにちょくちょく出荷しているという。
自然の恵みを無駄なく活用する山の人々の知恵。翻って、われわれ現代人の食生活はいかに無駄が多く、そして偏りがちであることか―。そんな反省をさせられた一日であった。
(協力・土佐伝統食研究会)
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【メモ】
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葉柄(ようへい) 茎と葉をつなぐ部分のことを指す。例えば、サツマ芋の場合、茎は蔓(つる)状になっており、蔓から枝分かれした先の軟らかい部分を摘み取って食用にする。厳密には茎とは異なるが、県内では“茎”と呼ぶのが一般的だ。
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