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葉ニンニク(伊野町)
たまらぬピリリ「ぬた」
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冬の青菜として、県内一円で食べられている葉ニンニク。中でも高知独特、まさに出色の食べ方が「にんにくぬた」だろう。葉ニンニクをすりつぶし、白みそと砂糖を加えて酢でのばす。見た目にも緑色が美しく、脂がのったブリの刺し身にトロリと掛けて…。つばがジワッと出てきたあなた、土佐人である証拠です。
土佐伝統食研究会の松崎淳子さんによれば、「高知はネギ類をよく食べる土地。それには栄養学的な理由もある」。
ネギ、葉ニンニクは、ビタミンB1の体内吸収をよくする硫化アリルを多く含んでいる。
実はこのビタミンB1、汗とともに失われるため、高温多湿な高知ではそれを補う必要があり、知らず知らずのうち、土佐人は「ネギ好き」「葉ニンニク好き」になっているというのだ。
そして、暑いときも食欲をそそる酸味、酢も料理に多く使われる。
その二つの特徴が組み合わさった「にんにくぬた」を、松崎さんは「高知の食文化の粋」と位置づける。
吾川郡伊野町の浜田好子(たかこ)さん、吉子さん親子宅へ向かった。
【写真】にんにくぬた」を掛けたブリの刺し身、豆腐の厚揚げ、こんにゃく。すき焼き風のクジラとの煮物。イカとの酢みそあえ。奥の「里芋の揚げ煮」は、伊野で広く作られる一品。仕上げに葉ニンニクの風味を利かす。

本日、葉ニンニク料理を披露してくれるのは、伊野町生活改善グループ連絡協議会(揚田多紀子会長)の皆さん。葉ニンニクの生産者でもある。
「ニンニクはね、旧暦の8月1日、八朔(はっさく)のころ植えるといい。秋の作付けのトップバッターなんです」
葉ニンニクが美味なのは寒いうち。春になればニンニク芋が太りだし、養分がそちらに回る。
刻んだ葉ニンニクをすり鉢でゴリゴリつぶし、ぬたを作った。青くさい香気が脳天にツーンとくる。少し残ったぬたに白ご飯を混ぜれば「ぬたご飯」である。
「これが欲しゅうて、母がぬたを作りゆう横で待ち構えちょったもの」
皆さん、われもわれもとつまみ食いする。ご飯一粒一粒にピリリとしたぬたがからまり、何とも食欲を加速させる味だ。
座敷で葉ニンニクづくしを囲んだ。鉄鍋からうまそうな香りが立ち上る。鯨と葉ニンニクの煮物。すき焼き風の仕上であり、煮食いにするのもまた格別である。
本日の主役、ひすい色のぬた。ブリの身にトロリと掛かっている。
口に含むとブリの脂、葉ニンニクの香気、ピリリとした刺激が、舌の上でハーモニーを奏でた。
現在は高級感のあるブリも、その昔の土佐では泣く子をだまらせるために「ブリを食わすぞ」と言って脅したほど。つまり、それだけ手に入れやすい食材だった。
薄く切った豆腐の厚揚げとこんにゃくのぬた掛けは、法事の精進料理として出された。
生では刺激のある葉ニンニクが、ゆでると甘くやわらかくなる。葉ニンニクとイカの酢みそあえ。寒に鍛えられた露地物だから、なお味がいい。
床の間に飾られたおひなさまの前には、盆に載せた葉ニンニクと赤芽芋が供えられていた。
伊野に伝わるひな祭りの風習だという。浜田さんが「ニンニクも赤芽芋も一つの芋から数を増やす。結婚したら子だくさんになるよう、親の願いを込めた供え物です」と教えてくれた。
【写真】刻んだ葉ニンニクをすり鉢でつぶし、「にんにくぬた」を作る
(協力・土佐伝統食研究会)
(月1回掲載)

なぜ土佐人はこれほどニンニクを食べるのか。特に葉ニンニクとネギが並んで売られている風景は、四国でも他県では見られない。
そのルーツは16世紀末にさかのぼる。長宗我部元親が朝鮮の役から帰国する際、連れ帰った朴好仁一族。土佐に豆腐を伝えたことで知られる彼らが、ニンニク文化ももたらしたのだった。
豆腐、ニンニクと並んでもう一つ、朴一族が持ち込んだ食べ物が、カシの実を原料とする「かしきり」だ。かし豆腐とも呼ばれ、安芸市や県東部の山間地域で今も作られている。健康食としてテレビ番組で紹介され、ちょっとした話題となった。
現在、高知産の葉ニンニクは大阪市場などに出荷され、在日韓国・朝鮮人の人々にも重宝されている。
【写真】葉ニンニク料理に腕をふるう伊野町生活改善グループ連絡協議会の皆さん
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作り方
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【にんにくぬた】葉ニンニク1把の青い部分を刻み、すり鉢ですりつぶす。白みそ300グラムを加えてすり、まずは酢150ccでのばす。あとはお好みで酢を加えて、とろみを出す。砂糖で甘さを調整する。
【里芋の揚げ煮】里芋1キロを蒸して皮をむき、かたくり粉を付けて油で揚げる。砂糖100グラム、しょうゆ160cc、みりん、酒各大さじ半分を鍋に沸かし、葉ニンニクの小口切りを1―数本分入れる。揚げた里芋を入れて煮からめる。伊野特産の白芽芋を使うと型くずれしにくく、さらにおいしい。
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