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十月十一日。連休の雨の中、高知市升形の自民会館の三階会議室に、百人を超える党員が集まった。県農協連会長の所谷孝夫から出された推薦願をどう取り扱うか。注目の総務会が始まった。
三日前、党県連役員(組織広報委員長)の辞任願を提出した県議の植田壮一郎は、一般党員席でじっと腕組みをしたまま。知事の橋本大二郎を支持するほかの若手県議も表情が硬い。
■「筋を通す」■
口火を切ったのは推薦反対派の支部役員。「既に現職の推薦を決めている団体も多い。(所谷を)推薦して負けた場合、県連はどう責任を取るのか」と執行部に迫った。
党県連会長の中谷元は「知事は、政党の推薦は要らないと言っている。しかも『非核港湾』問題、地方公務員の国籍条項、君が代など国の基本にかかわる問題で、自民党と異なるスタンスで臨んでいる」と橋本の政治姿勢を批判。
「ここで自民党が腰を引いたら、知事の政治姿勢は変わらない。勝ち負けも大事だが、政党として筋を通すことが大事だ」と強調した。
これに真っ先に反論したのが、六月に自民党入りしたばかりの二期生県議、広田一。
「(所谷の)推薦は見送るべきだ。選挙の基本は候補者の人柄、識見、政策を県民に訴え、浸透させること。所谷さんの人柄は素晴らしいが、農政以外の政策課題が果たして自分のものになっているのか疑問だ。現状を冷静に分析し、大局的な判断をしなければならない」と主張した。
自民党県議団(二十三人)の分裂を懸念する議員会長の結城健輔らが「総務会を開けば、声の大きい方(橋本批判)に流れる」と予測していたように、所谷推薦を支持する積極派が大勢を占めた。
約二時間が経過した時点で幹事長の土森正典は、午前中の選対会議の意見を伝え、「推薦の判断を役員会に一任していただけないか」と提案した。
再開後、所谷推薦の決定を伝えた中谷は「推薦なので(除名などの処分対象となる)党議拘束はかからないものの、節度を持って対応してほしい」と付け加えた。
総務会での採決ではなく役員会が推薦を決め、なおかつ橋本支持派にも配慮した異例の呼び掛け。党を一本化できない以上、組織の分裂だけは避けたい。悩んだ末の“玉虫色”の決着だった。
■「なぜ…」■
橋本大二郎と自民党との埋め難い溝は、「首長と政党の関係」に対する考え方の違いにある。
橋本は「知事など首長になる者は、選挙の際は政党とは一定の距離を置き、無党派で選ばれた後、政党との間で十分関係を保っていくことが望ましい」と考える。
しかし、中谷にすれば、「政党を否定されては、県政における自民党県連の存在意義は何か、ということになる。(所谷)会長の気持ちは、同じ団体の長として痛いほど分かる」。
幹事長を務める土森、議員会長として県議会最大会派を預かる結城とて、思いは同じであろう。一方で、若手県議らは党組織の原則論より、「自分の考えに忠実でありたい。正直に行動したい」と考えた。
本県の行く末を憂う県民の「変革願望」を一身に背負い、この八年間、全力疾走を続けてきた橋本。その行動力に多くの県民が拍手を送り、期待を寄せた。と同時に、ときに関係団体を頭越しにする行動やその言動が感情的な摩擦を生み、意思疎通を欠いたことが埋め難い溝として残った。
「なぜ、こんなことになったんだろう」
橋本も、所谷も、中谷も、土森も、結城も…、それぞれの立場で思い巡らしているのではないか。
戦後十五回目の県知事選挙は十一月十一日告示、二十八日投票。
さいは投げられた。
(文中敬称略、知事選取材班)
=おわり=
【写真】所谷孝夫氏の推薦の是非を協議するために開かれた自民党県連の総務会(高知市升形の自民会館)
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