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県中西部の自治体。北向きの、3階の病室に女性(87)はいた。そこから見える町の風景は、40年以上暮らしている間に大きく変わった。新しい道路。公営住宅。小学校の校舎。変わっていないのは山並みぐらいかもしれない。
女性自身の暮らしも、年齢とともに変わった。多くの人がそうであるように。
「体があちこち悪うなりよらあね」
10年ほど前から足腰が弱くなり、高知市へ月1回通院。最初は列車で通っていたが、足が弱るにつれ、近年はタクシーを使うことを余儀なくされていた。
今いる病院に入院したのは10月下旬。自宅でたんすを開けようとして転び、尾骨にひびが入ってしまった。既に支払った20日分の医療費や病院での食費などは8万円を超えている。
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女性は亡くなった夫の船員保険と国民年金(老齢基礎年金)を受け取っている。月10万円少々。
「私ら、ましな方ぞね。この額でも何とかやっていけよるきに」
本年度、老齢基礎年金の支給額は年間79万7000千円。ただ、これは40年間保険料を支払い続けた人のもので、掛けた年数に応じて支給額が決まるため、最低年数の25年では年間49万8100円。月額にすると約4万円。
本県の1人当たりの受給額は昨年度、年間63万1936円。月額約5万3000円。年金行政の関係者は「月4万円の人、さらに複雑な諸制度、事情によりそれ以下の人、年金をもらえなくて生活保護に頼っている人もいる」という。
国民年金の本年度の支給額は、0・9%ではあるが物価スライド制で初めて減額となった。
「これからますます少のうなるのでは」「年金だけでは、おちおち病気にもなれん」。不安がるお年寄りは少なくない。
高知市の量販店。高齢の女性が買い物車を押しながら品定めをしていた。手に取ったのは、賞味期限が迫り定価の半額になった60円のパンと、110円の鶏肉の総菜。
レジを出た女性は、けなげな笑顔を見せて言った。「身寄りがおりませんきに、少ない年金でつましゅうやっていきよります」
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少ない年金。介護保険料の月額基準額も、今春から県内53市町村で平均約500円アップとなった。
収入の確保と負担の軽減…。それが高齢者の切実な関心事だ。「お年寄りも安心して住める社会に」との言葉を信じ、県や市町村の首長に願いを託す。が、年金や介護保険の問題は、主として国が解決すべき課題。憲法や平和、全国的な景気回復も同じだ。
それならば、と、高知市の男性(76)は「知事さんが変えてくれるわけじゃない? そうじゃったら、わしらの想(おも)いを本気で国に届けてくれる人が知事さんになってほしい。小泉さんとけんかするばあの」。
力強い言葉ばかりではない。か細い、あきらめのような声も聞こえる。
「政治は老人に厳しいですき、私らは一日一日、ようやっと生きよります。まあ、若い人らが、私の子や孫らが幸せになったらええ」と高知市の女性(77)。入院中の先の女性は言う。
「年寄りは皆死ねということじゃろうか。もう長う生きたきに、早う死ねと。あんまり年寄りのことをいじめんといてほしい」
人の重さは、人生の残り時間で決まるのか。
誰もが今日一日が、今日より明日が幸せであるようにと、さまざまな想いで生きている。あす、いよいよ知事選投票日。人々は想いを、誰に託すのだろうか。
【写真】おばあさん、あなたの想いは何ですか。その想い、誰に託しますか(写真と本文は関係ありません)
(知事選取材班)
=おわり=
11月29日付・高知新聞朝刊掲載
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