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毎日のように、新聞紙上に躍る「市町村合併」の活字。県中部の中山間地に位置する村の自営業の男性(43)は、それをどうも、人ごとのように眺めてしまう。
「いまひとつピンと来んのです。自分の村が合併する時も、もっと言えば、合併してもしばらくは実感がわかんかも」
男性の村も、近隣自治体との合併協議が進んでいる。だが、役所中心に回る小難しい論議に、自分の生活をなかなか重ねられない。
合併は“吸収される”形に近い。漠然と心にあるのは、村名が消える寂しさ。「でもね、合併自体に反対じゃない。今は現状維持よりも、変えないかんことの方が多いような気がするんですよ」
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男性がいま、唯一実感を伴う「合併」は、自分が取り組む地域おこしを通じた動きだ。
村で生まれ、1度村外で働き、20年余り前、村に戻って店を開いた。持ち前の商才でしばらくは業績を伸ばしたが、次第に村内の需要自体が頭打ちに。それなら村全体の活性化を、と商売仲間と一緒に村内にレジャーゾーンを開発した。
これが成功した。軌道に乗り、村最大の売り物になった。自分たち民間がリードしたことに誇らしさがあったし、流した汗はどこにも負けない自負もあった。
そこへ、合併の波が押し寄せて来た。頭をよぎったのは「この場所の存在感や、今までの自分たちの努力が、合併後に埋もれてしまうんじゃないか」という不安と、「合併は時代の流れ。商売と同様、流れにうまく乗らないと」という気持ち。
漠然とした思いの中、合併相手の地域活性化グループとの交流が始まった。向こうのメンバーとは、ごく自然になじめた。そうするうちに強くなったのは、後者の考え方だった。
少し所帯の大きなグループになって、大きな枠組みの中で活動することは、必ずしもマイナスにはならない。
「それぞれの観光資源や魅力を、線や面としてつなげれば、発信力や集客力は増す。要は『1+1』を、3にも4にもせないかんのです」
両グループは近く合流することになった。合併を機に前向きに変わろうとする自分たちがいる。それだけは確かなのだ。
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合併で周辺部が寂れる――。男性はその不安もやり方次第で解消できるのでは、とも考える。
「今年から県が『地域応援団長』っていう形で職員を派遣し始めたろう。あれは、えいね」
今までの行政の中山間地対策は、住民の要望を受けて対応する形だった。だが、応援団長は自ら住民に溶け込み、「声なき声」を積極的に拾い、鼓舞してくれる。
「そういう姿勢、過疎地域が生き残っていこうとする時に、本当にありがたいもので…」
合併後の大きな自治体に、応援団長みたいな活動をかかりっきりでできる部署ができれば、今よりも地域の声は届くのかもしれない。
「やっぱり合併は、目的でなく手段なんですよね。何かを変えるきっかけ。それで悪うなるかもしれんけど、良くなる可能性も広がる。知事選?
合併を受け身でなく、チャンスとして考える県行政にしてほしい」
男性は言う。
「官民問わず、中山間地再生や地域振興を熱心に語れる新しい仲間が増えた時に初めて、合併を身近に感じ、『合併して良かった』と思えるんでしょうね」
【写真】過疎の波にもがく中山間の集落。合併は何をもたらすのか(県中部)
(知事選取材班)
11月28日付・高知新聞朝刊掲載
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