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高知市内にある民間の職業紹介所で、その男性(35)に会った。濃い灰色のトレーナーにブルージーンズと、ラフな服装。どこか童顔の印象が残る彼からは、失業中という悲壮感はそれほど感じられなかった。語り口も淡々としたもの。
「理系の大学でしかも機械系ですからね。高知で自分に合った企業はなかなか見つかりません」
今月、失業したばかり。昨年春に7年間務めた中部地方の自動車部品メーカーを退職。生まれ育った高知に戻ってきた。
「一度、県内の食品会社に入ったんですが、やはり根っから機械が好きなんです。自分のやってきたことを生かした仕事がしたいんです」
公共職業安定所で見つけ、給料もまずまず。食品という畑違いの仕事も面白いかと思ったが、一年足らずで退職。嫌で飛び出したのではない。ただ、肌が合わなかった。
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同市内の高校を卒業後、勤めていたメーカーと同じ県にある国立大の大学院を修了。教授推薦で入った会社では、自動車部品の設計・開発を手掛け、やりがいはあった。給料もかなり良かった。では、なぜUターンを?
「長男で、弟も県外で就職。両親も今は元気ですが、家のことが気になって…。元の巣に帰ろうという心があったんですね。辞める2年くらい前からずっと帰ることを考えていたんです。35歳は転職のボーダーラインですし」
ところが、戻ってきて驚いた。
「高知は給料が前の会社の3分の2から2分の1。もし、結婚していたら、戻ってこれませんでしたよ」
就職活動も、県外から高知の職を探すのは難しいと、帰高してから始めたが、予想以上に職がない。見つからない。今の状態を後悔はしていないが、会社を辞めてから探すという判断は「浅はかだった」と振り返る。
「県外にいたら、高知の就職情報はこないんですよ。県や市もUターン対策をやってるかもしれませんが、僕は知らなかった。人材がほしいなら、一貫したUターンへの流れを整備してほしいです」
朝、起きたら、ニュースを見ながらパソコンを開けて、職につながる情報を探す。でも狭い高知。探る情報も堂々巡りになりがちだ。
残り少ないコーヒーを手にした時に聞いた。
「え、10年後の自分ですか? うーん、家庭もいつかは持ちたいです。でも、結婚して妻子のある友人らを見ると、生活はかなりひっ迫してますよね。願望はあるけど、それを考えると、ものすごい不安になります」
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知事選への関心は高い。橋本氏と松尾氏。高知以外を知っている人が行政を担ってきたメリットは大きいと見る。
「僕が高知を離れていた間に、街の雰囲気が明るくなったし、深層水など、県民に利益をもたらす事業も出てきましたよね」
「ただ、何かというと龍馬を持ち出すのはちょっと。案外、県外の人は龍馬、知りません。高知空港も、どうせならアンパンマン空港の方が、経済効果があるんじゃないですかねえ…」
メーカー勤務時代は生活に余裕があったことで、かえって選挙に行かないこともあったが、「高知では自分も身につまされることですから。一票の持つ意味合いも大きいと思ってます」。
【写真】県内企業の情報ファイル。自分に合った会社と巡り合えるか…(高知市内の民間職業紹介所)
(知事選取材班)
11月26日付・高知新聞朝刊掲載
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