|
パキ、バキバキバキ…。40年生の杉が倒れる。男たち数人がチェーンソーをうならせる。
高岡郡内の民有林。「危ないからこっち寄っちょきや」と、手招きしてくれた50代の男性。急斜面に横たわる木の上をすいすい歩く。県外の大学を卒業後故郷に戻り、30年近く「山」で生きている。
◇
「東京での就職も考えたけど、長男やし。夏は野菜作って、冬に木を切って、とやってたらサラリーマンの給料はあるろう。木も育てば価値が上がり、“退職金”も取れるんじゃないか、と」
帰郷後、周りの林業者は土木作業の仕事に流れ、山主の高齢化も進んだ。30歳を過ぎたころから男性の元には「山の手入れをしたい」「木を金に換えたい」――。山主からの間伐の依頼が入るようになった。
農業と合わせて年収1000万円を達成したのは30代の終わりごろ。
「いやー、それがピーク。途中までしかサラリーマンには追いつけんかった」と笑う。今は杉の1立方メートル当たりの単価が「始めた時と比べたら半分以下」の1万円ほど。輸入外材の影響だ。
それでも、「『厳しい』というのはどうかな」と首をかしげる。
「十分食べてこれたし、林業は将来性もあると思う。ただ、今はまず職業の選択肢に入らないでしょ。それを変えたい。県も新規就労者を増やすと言うが…計画はいい。でも、受け入れる組織がないと」
そんな思いで8年前に林業の企業組合を作った。メンバーは当初5人。今はIターンの研修生を含めて14人いる。
「個人でやってた方が収入は良かったけど、だんだん体力もなくなる。自分の山もいつか誰かに手入れしてもらわんといかんし」と男性。「素人が一人前になるのに3年。独り立ちするには10年かなあ」という後継者の育成に力を注ぐ。
◇
木の切り出し現場からさらに林道を車で数分上った高台。見渡す限り山また山。「これを生かさないのはもったいない」
日本の木は小さく、外材に比べ製材の効率が悪いという。「適切に間伐して80年生ぐらいに育てたら、すごい財産になる。中山間地の価値も上がる。でもね、(メンバーが)50人に増えたところで間伐はおっつかんよ」
間伐できなければ木は太らず、地崩れが起こりやすい山になる。
山への関心は環境意識とともに高まっている。この1年、森林環境税の導入や「こうち山の日」制定などがあった。「評価できる。一般の人の目が山に向きだした。ただ、それはそれで、現場はまた別」
切り出しのコストを下げるため、また素人の後継者が入りやすい環境づくりという意味でも、もっと道の整備をしてほしい。それも、きちんと利用される所に、と効率的な山への投資を願う。
「どんな選挙でも『一次産業の振興』と必ず候補者が言う。でも本人が本当に現場を歩いてるのか疑問よね」
県土の84%が森林という高知県の知事選。現職も新人も、山を守り生かそうとするスタンスは同じはず。山の男はどちらを選ぶのだろう?
「もう決めちゅう」。山を見やり、男性は笑った。
【写真】適切な間伐が県土の価値を高める(高岡郡内)
(知事選取材班)
11月22日付・高知新聞朝刊掲載
|