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2001参院選高知
 2001年7月24日(火)・朝刊

5陣営 支持固め全力 記者座談会で情勢展望

 十二日公示された参院選は、二十九日の投票まであと五日と大詰めを迎えた。県選挙区(改選数一)は届け出順に、前田清貴(48)=自由連合・新▽中根佐知(45)=共産党・新▽広田一(32)=無所属・新▽田村公平(54)=自民党・前、保守党推薦▽中村久美(41)=民主党・新、社民・自由両党推薦−の五氏が最後の支持固めに懸命の戦いを繰り広げている。戦況は、四回目の国政選挙となる田村氏が知名度の高さを生かし、「小泉人気」の追い風にも乗って全県的に浸透しているが、橋本大二郎知事が支援する広田氏が激しく追い上げており、無党派層などの動向次第では予断を許さない。各陣営の戦いぶりを点検しながら、担当記者の現地取材、本社世論調査結果などを基に記者座談会で情勢を分析した。(文中敬称略)

高知市

  有権者約二十六万二千人。六十六万有権者の四割近くを占め、県都での得票が戦況を大きく左右するが。

  平成元年の参院選では、自民前職の元労相、林ゆう(故人)が高知市以外ではリードしながら、県都で六万六千余票を獲得した社会の西岡瑠璃子に逆転負けを喫した。まさに「魔の選挙区」だよ。

  四年の平野貞夫(当時無所属)、七年の田村公平(同)、十年の森下博之(自民)はいずれも高知市を制して当選している。

  投票率をどうみる。

  世論調査では、「非常に関心がある」(41.1%)を含めて関心度は83.1%と極めて高く、県平均(79.6%)を上回っている。

  どこまで投票行動に結び付くかだが、郡部より関心度が高いのは異例。これも十六日に中央公園を埋めた首相、小泉純一郎の人気の反映だろう。

  関心度だけではないよ。「意中の人」を決めていると答えた人も七割に達し、安芸・室戸、県中西部より高い。投票率は七年の前々回(40.53%)、十年の前回(48.11%)を上回ると見ていいんじゃないか。

  各陣営の動きはどうだい。

  それぞれの陣営に言えることだが、とにかく票が読めない。調査の関心度は高いが、街の反応ではそれほどの実感がない。

  自民の動きが鈍いのは毎度のことだが、今回ばかりは「小泉旋風」が補って余りある感じだ。

  この六年間、それなりに支持固めを進めてきたとはいえ、県都でこれといった決め手のない田村にとっては、小泉さまさまだ。

  田村にとって痛いのは、前回支持をしてくれた公明支持層の相当数が広田支持に回りそうなことだ。陣営も一定覚悟している。

  昨年の衆院選では中谷元のてこ入れがすごかったが、防衛庁長官として他県に応援に出向き、手薄なことも不安材料だ。

  知事の橋本大二郎との二人三脚をアピールする広田にすれば、県都で大きく票を稼ぎたいところ。確実に上げ潮ムードだが、爆発的という域にはまだ達していない。

  目標を四万票以上においているが、最後はやはり知事頼みの戦い。時間との戦いだね。

  稼ぎどころという意味では中村も県都が勝負。女性票をターゲットにした取り組みが功を奏し、公示前より支持を伸ばしているのは好材料だ。

  ただ、いかんせん連合高知傘下の労組頼みの感は否めない。比例代表選挙で産別候補の浸透に手を取られている点も気掛かりだ。

  森前内閣当時の追い風がやんだのが痛い。当初、党中央幹部が小泉に秋波を送ったことも陣営の出足をくじいた。

  狙いは中根も同じ。候補の明るさに力強さが加わり、小泉改革批判を前面に出した戦いはかなり浸透してきた。

  昨年の衆院選時のような反共攻撃が見られないことも、陣営を動きやすくしている。ただ、小泉人気にどこまで対抗できるか。

  県選挙区に候補を持たない公明の動向がカギを握ると思うが。

  比例候補の福本潤一の浸透ぶりはさすがだ。他党の比例の動きを圧倒している。

  ただ、比例に手をとられたのか、広田支持を明確にしている公明県議の動きの割にはまだ固めきってはいない。

  何と言っても、カギを握るのは知事だろう。草の根の動きはどうだい。

  動きが見えない、分からないのに、ふたを開けたらどっと票が出るというのが、ピラミッド組織でない草の根の草の根たるゆえん。広田陣営も「分からない」というのが正直なところだろう。

  知事への支持率は依然として高いが、やみ融資問題で六月県議会閉会まで足止めを食ったことが響いている。

  一つ指摘しておきたいが、「私に対する信任投票のつもりで」という知事の訴えはいかがなものか。公務時間外の支援はともかくとして、「信任投票」という訴え方には違和感を覚える。

東部

  安芸郡以東の県東部の情勢はどうだろう。

  楽勝ムードだった田村を広田が追い上げ、それを中根、中村が追う戦いだ。

  田村陣営は保守系議員が名を連ね、陣立ては整っているが動きは鈍い。

  確かに農協も田村一色にはなっていないし、「表は田村だが裏は広田」というケースもある。

  それでも田村には父、良平(故人)のころからの支援者が少なくない。最後は票をまとめてくる。優位は動かないよ。

  ただし田村の選挙というよりも、衆院高知2区選出で自民県連会長の中谷元(防衛庁長官)の「顔はつぶせない」というのが多くの自民支持者の本音のようだ。

  広田は知事の橋本が中盤以降、東部に入ったことで草の根が動きだした。公明も実質支持に回り、運動量では田村を上回っている。

  とはいっても、広田は「西の候補」で知名度も低い。草の根も組織的な展開ができず、知事の人気に頼るしかないのが現状だ。

  要は「中谷と知事の代理選挙」という構図か。中根、中村はどうだい。

  安芸市出身の中根は、両親が安芸郡・市で長年教員をしていた。特に父親の評判がいい。中根の同級生や教え子らを中心に、口コミで支持が広がっている。これまでの共産支持層以外の無党派層も巻き込みながら、党の基礎票に上乗せを図っているようだ。

  中村は連合高知傘下の労組の基盤が弱く、動きが見えにくい。昨年の衆院選高知2区では健闘し、知名度は浸透している。ただ部落解放同盟や医療関係の票が草刈り場になるケースもあり、どこまでまとめきれるかだ。前田は独自の戦いで浸透していない。

  知事派の自民県議の動きはどうだい。

  室戸市・東洋町選挙区の植田壮一郎と安芸郡区の浜田英宏は、田村で腹を決めたが、後援会はねじれにねじれている。安芸市・芸西村区の樋口秀洋は田村の選挙カーにも乗らず、知事−樋口−広田で支持者が動いている。

  室戸市は、六年前の参院選で田村を推したグループが広田に回り、町筋を中心に急速に支持を広げている。動きが遅れた自民支部がどこまで引き締めるかが焦点だ。

  安芸市は八月の市長選に関心が移り、熱が入っていない。保守系市議は田村、広田に分裂。農協は田村で一枚岩とは言えないが、中谷シンパの根強い動きに対し、広田は草の根を中心に五分の戦いに持ち込みたいところだ。

  芸西村は村議の大半が田村だが動きが鈍く、農協も割れている。東洋町は町筋は広田だが、農業関係は田村に厚い。

  中芸は安田町を中心に田村が優位。ただ、田野町は革新が強く票が割れそう。奈半利町は漁協関係に田村が浸透しているが、広田と中根が反町長の流れをつくれば混戦だ。北川村は地域おこしグループが広田の票をどこまで伸ばせるか。馬路村はいつになく低調。中村は全林野などの労組票と中山間の女性票が頼みだ。

  各陣営ともまだ面ではなく点の戦い。最終盤でどれだけ運動を拡大できるかだ。

中央部

  田村の出身地である香美郡や南国市は父、良平時代から田村派が根強い地域だ。まず南国市から。

  市長の浜田純が田村の地元後援会長になり、自民市議も一本化。集会などへの支持者の集まりも良い。かなり優勢な戦況だ。

  公示以降、広田を支持する知事派の草の根の動きが、世話人がいる集落単位で活発化してきている。どこまで広がるか。

  中村は、昨年の衆院選で取り込んだ反自民の票をそのまま維持するのは難しいだろう。

  香美郡の情勢は。

  土佐山田町は田村の出身地だけに、自民県議らの意気込みがすごい。町議や支援団体などを引き締めている。広田陣営が「四面楚歌(そか)だ」と嘆いていた。

  香北町、物部村も首長らを先頭に田村支援態勢を整えている。香北町などでは、同町出身の前自民県議が広田の後援会事務局長になったことに対する反発が強い。広田にとって痛いマイナス要因だ。

  共産はここ四年余りで南国市、香美郡内で公認、推薦の議員が七人も増え、県議の公文豪も支持地盤を固めてきている。地方選挙の勢いが連動するのか注目だ。

  野市、赤岡、香我美など香南五カ町村も選挙態勢は田村が優位だ。

  ただ、知事派の有力支持者がいる夜須町は広田の勢いを感じる。土佐山田町、野市町での広田の個人演説会にはそれぞれ二百五十人ほどが集まった。公明支持者が演説会にまとまって出席するなど広田支持の動きが目立ち始めた。

  中村は連合、自治労系の労組などを基盤に、女性票などを取り込みたいところだろうが、支援者の積極的な動きは見えない。

  保守地盤の嶺北も田村が親子で票田を培ってきた。建設業団体が田村を全面支援している。

  「砂防の田村」といわれるだけに、大豊町の票固めは突出している。大川村も盤石の感だ。

  ただ、本山町は八月に町長選を控え、「参院選どころじゃない」が本音だ。土佐町も町長のリコール問題に絡んで、自民県議の川田雅敏と町議らがぎくしゃくしているようだ。

  本山、土佐町では知事派の草の根リーダーが「知事選とは別」という思いや保守地盤の地元事情に配慮して、表だった動きをしていない。

  中村は、母親の出身地の本山町や土佐町で一定の人気がある。街頭演説の聴衆の集まりも良かった。共産は地道に支持拡大に取り組んでいる。

  前田は名前もほとんど出てこない。

  南国市、香美、土佐郡全体は田村が優位な状況だが、現場サイドの動きが全般に緩慢で、上滑りの懸念も。二年前の知事選で田村が繰り返した知事批判に嫌気が差して、親田村派の中にも離反した人がいるようだ。

  表は田村だが、水面下では広田、中村という人も結構いるようだ。草の根の広がりは広田陣営すら把握しきれてない。広田の知名度不足は否めないが、遊説中の住民の反応は目を引く場面もあった。

中西部

  厚い保守地盤の県中西部だが、保守票の分解具合はどうだい。まず票田の市部から。

  土佐市だが、田村は自民支部を軸にした陣形。製紙業界の実力者を後援会長に、陸上自衛隊誘致のグループも動きが熱心だ。

  ただ政争の激しい土地柄に加え、自民党籍を持つ市議は二人だけ。山崎拓党幹事長を招いた二十一日の演説会も寂しい入りで、どうも締まらない。

  自民党籍ながら県議会の「清流会・公明」に所属する地元の中内桂郎は微妙な立場だが、後援会筋は広田で動いている。製紙業界も田村一本というわけではない。

  広田は革新系の前県議や知事後援会などが支持している。保守系市議も数人ついているが、面的な広がりは終盤の動き次第だ。

  土佐市職労は自治労県本部委員長の出身労組。一定の中村票を出す底力は持っている。

  中根は共産市議が一人に減って苦しいが、陣営は農村部の浸透に自信があるようだ。

  須崎市はどうだ。全般に低調と聞くが。

  田村は、三年前の森下博之選挙の陣形を踏襲している。もともと田村は強くないエリアだが、地元陣営は「森下選挙と比べて大きく落ち込むことはない」と自信を持っているよ。

  広田は、無所属県議の朝比奈利広や根強い知事支持者らが動いており、巻き返しに躍起だ。ただ、朝比奈の支持層には社民党系が含まれていて、中村にも流れる要素がある。

  その中村は有力な社民系市議三人を中心に動いている。公示前の励ます会の入りも良く、保守層への浸透も一定見込める。

  高吾地区委員会の拠点を置く共産も一定の中根票を出したいところだ。

  仁淀川筋に移ろう。ここは六年前、当時無所属の田村が六町村で自民公認候補を圧倒した。今回もほとんどの首長が田村の後援会長を務めている。

  公共事業の予算獲得で田村に恩義があるからね。伊野町でも保守系町議の支援が分厚い。

  しかし枝川地区などには熱心な知事支持者がいて、広田も個人演説会は盛況だった。ただ勢いが出始めたところで、投票日に間に合うかどうかだ。

  春野町は農協、建設業界を中心に田村が盤石の態勢を築き、楽観ムードさえある。他陣営も立ち遅れを認めているよ。

  両町は高知市への通勤族も多く、投票率を含めて読みにくい要素もある。

  佐川、越知両町や日高村も田村優位とみるが、地元の陣営は「運動のノリは悪い」と言う。田村がいいと言うより、他陣営の動きが鈍いということか。

  中村は地元の無所属県議、田村輝雄が熱心に動いている。ただ佐川は知事後援会も活発な地域だ。支持層が重なり、中村、広田が両すくみの感もある。最終盤にどう盛り上げるかだ。

  共産は日常活動が活発な地域。中根に安定した票を出したいところだ。

  仁淀川上流域も田村が手堅くまとめそうだ。吾北村あたりでは熱心な広田派村議も多く、まとまった票を出しそうだ。

  津野山郷は国道改良などの実績がある田村が浸透している。大野見村も田村の優勢は動かない。

  ただし葉山村は知事に近い村長の影響もあってか、保守系村議が二分。広田にも勢いがある。

  山間部を通じて言えることだが、共産票は劇的な増減はなさそうだし、労組勢力も全林野、全逓などの数が減っている。中根、中村陣営は保守分裂のあおりを警戒しなければ。

  窪川町は複雑だ。自民県議、武石利彦の後援会長が知事の有力支持者で、広田で動いている。清流会・公明所属の自民党籍県議、佐竹紀夫もいて、保守層のねじれが目立つ。

  中村は女性町議や全逓中心の活動だ。

  中土佐町は採石場問題で知事への信頼感が高まっているが、反対派の票は広田のほか中村、中根にも分散しそうだ。推進派は田村に厚めに出るだろう。

  中西部でも、前田は活動が見えてこない。

西部

  幡多は政治的関心が高いといわれる。今回は土佐清水市出身の広田が出馬し、各陣営も広田の動きを見ながら、活発に動いているのではないか。

  ところが、総じて盛り上がりに欠ける。特に土佐清水市では、広田以外の陣営は入っていきにくい感覚を漠然と持っていたようだし、市民の間には複雑な反広田の感情があって、広田陣営そのものも動きあぐねている面がある。

  各陣営は市内の有効投票総数を一万一千−一万二千台と踏み、広田の過半数は堅いという予測で一致するが、「広田の牙城(がじょう)」といえるほどの弾みがつくかどうかは疑問視する声が強いよ。

  直接の原因は五月の市長選だ。初当選した西村伸一郎は長年、広田親子と県議の座を争ってきた相手だが、市長選では広田派の一部が西村を支援。参院選で西村は広田を応援している。最近は旧来の勢力地図が入り乱れてはいるが、市長選以降の一連の流れは特に、剛腕といわれる広田の父・勝の政治手法に対する反発を生み、「勝つためなら旧敵とでも手を結ぶのか」との批判が根強い。

  実際、広田一後援会の若手メンバーは市長選と重なった県議補選で、広田路線の継承を唱えた橋本敏男でなく、対抗馬の森祥一の支援に回った。参院選ではそのほとんどが田村後援会に流れ、地殻変動が起きている。県議の森は中立だが、田村には格好の構図。下ノ加江など地区によっては田村リードの声もあり、陣営も強気を増している。

  女性候補の奮闘も見逃せない。中村は自治労系労組と社民党市議を中心に着実に輪を広げている。中根は共産市議二人の支援を得るとともに、実直な訴えが浸透してきた。ともに手堅く固めてくると思う。

  幡多地域最大の票田といえば、中村市だが。

  四月の市議選の余韻もなく、意外に静かだ。その中で、市議十一人と市長の沢田五十六の支持を得た田村の動きが目立つ。自民県連幹事長の県議、土森正典は地元を留守にしがちだが、建設業者を中心に根っからの“田村党”が存在するのは心強い。

  逆にねじを巻き直しているのが、広田陣営だ。市議五人がついているが、序盤の個人演説会は周知が足りず、座席が埋まらなかった苦い経験がある。

  知事が支援者に直接電話するなど、猛烈に巻き返しを図っている。ただ、広田の支持者は、昨夏の市長選で惜敗した前職、岡本淳の後援会と重なるメンバーが多い。知事は市長選でも岡本を積極的に支援したから、「また知事が出て来た」と冷めた目もある。

  中村は連合高知の地域協議会を中心に組織固めを図るとともに、社民党市議二人がカバー。民主党の支部がないことは幡多全体の問題だが、もともと旧社会党系が強い地域だ。労組を中心に、無党派層にも一定切り込んでくるだろう。

  中根は演説会をやや小規模に設定した点が気掛かりだが、共産には市議選で四議席に回復した勢いがある。県議の田頭文吾郎らを中心に、過去最高得票を目指すと息巻いている。

  宿毛市の動きは。

  市議二十人中、支援者は五人ながら、知事後援会を主体とした広田陣営の動きが目立つ。県議の二神正三も広田を支援している。

  田村陣営も出遅れを率直に認め、中盤から精力的に回り始めた。県議の中西哲をはじめ、市長の山下幸雄、市議十二人が支援しているのが強みだ。

  もともと保守が強い地盤。中村は母親の知人を中心に一部地区で勝手連的な動きがあるが、中根とともに革新の基礎票以上の積み増しは難しいとの見方が広がっている。田村と広田が一万−一万一千といわれる保守票の争奪戦を展開しているという構図だ。

  郡部はどうか。

  基本的に保守地盤だからね。多くの町村長が田村支持の態度を打ち出す中で、大月町長の柴岡邦男は広田支援を明確にし、大方町長の金子繁昌は中立の立場だ。広田は「漁協に強い」「大月では優位」との指摘もあるが、海沿い、山沿いを通じて田村が現職の強みを発揮しているという見方で間違いないのでは。

  いや、中村が十和村で行った演説は全逓や全林野を中心に受けがよかったし、大正などでも一定の結果は出しそうだ。共産が強い西土佐村では田村と広田、中根が票を三分するという下馬評がある。

  前田はほとんど浸透していない。




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