「…知事になった時には、県庁職員と一体感の持てる、いわば県庁一家の長たる知事が望ましいのではと思い、実際にそう心掛けた…しかし、その後の出来事や不祥事と出合う中で、多くの県民が求めているのは…第三者的な目で組織を指揮できるリーダーではないかと感じるようになった」
「第三者的」
県のホームページに掲載されている「知事のメールマガジン」。14年12月24日付第51号の「知事の軸足」で、橋本大二郎知事は、そんな胸中を吐露している。
続く後段で記された言葉は「県民の側に立たざるを得ない」。「軸足」の置き場をそう明言し、「第三者的と批判され、職員へのぬくもりが欠けていると言われようが、それにめげていては存在価値がなくなる」と書き切っている。
県庁改革が思うに任せなかったもどかしさを、一気に振り切った開放感さえ読み取れるが、そうまで決心させるものは何だったのだろうか。
単一の出来事ではないはずだが、昨年11月の職員組合のストが“導火線”になったふしはある。
県職労は人事院勧告に沿う賃下げの減額調整に反発して時限ストを敢行。橋本知事はこの事態に血相を変えて、「11年やってきてこの程度(の職員意識)か…」と歯がみした。
「県庁一家の長」という軸を消去しようとする橋本知事。四選に向けた知事公約で掲げたフレーズ「徹底して県民と向き合う県庁」は、その決意表明でもあるが、これにはむろん、反論異論も出てくる。
「組織をまとめ切れない管理能力の弱さをすり替えているにすぎない」
「知事はもともと県庁などに軸足は置いていない。闇融資問題究明の百条委ができた時に何と言ったか。大いに期待しています…だと。あれは知事の言うべきセリフじゃない」
こうした批判が県議会内にあれば、県職員の間にも「県庁を敵視し、『県庁を正す知事』をアピールすれば県民の受けは良いし、票も増える。知事も政治家だから…」と冷めた目がある。
ある職員はこうも言った。「頭では知事を理解できても、心がついていかない」
揺れた進退
知事と職員間に横たわる意識のずれ。それを考えるとき、やはりあの闇融資事件を振り返らないわけにはいかない。
元副知事らの起訴(背任罪で一審は二被告が一部有罪、控訴中)にまで発展するという県政史上最悪の事件で、橋本知事は進退に揺れた。
結果は「残り任期中20%減給」による続投で決着をみたが、県政トップの政治責任は政治家自らではなく、県民フォーラムの開催を通して集約した“第三者の民意”によって方向付けられている。
橋本知事は、県庁改革を「公約」とすることで引き続き知事の座にとどまることへの理解を県議会に求め、県議会はそれを全会一致で認めた。
自らの足元、自らの任期中に起こった不祥事で、主体的に処断しようとしないトップの姿が、職員らにどう映ったか。それを機に、庁内での知事の求心力に影が差し始めた感もある。
知事という職は、「県民の代表」であると同時に「行政機関の統轄者」という、二つの軸を併せ持つことを宿命付けられた仕事。
その二つの軸を使いこなせるかどうか――。
この12年は、県民が県庁へ押し込んだ官僚出身でない知事に、その度量を問い続けるという、トップには過酷な地方政治史でもあった。
【写真】闇融資事件を受け現場職員と討議する橋本知事(13年6月7日)
(知事選取材班)
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