「次の任期中に、まず財政課、そして県庁全体でも仕事の30―50%を外部委託する」
橋本大二郎知事が9月に発表した4期目の公約案には、こんな一項が含まれている。目を疑ったのは、当の財政課職員だけではなかっただろう。県議会9月定例会の質問戦では、「高知県は実験場か」と議員が息巻く場面もあった。
常識のずれ
実験場――。確かに、橋本県政12年の歩みには行政の常識や慣例に風穴を明け、時に国をも巻き込んだ「地方政治における挑戦的実験史」といった趣がある。
「国体改革」もそうだった。1期目の6年、知事は「何が何でも開催県が天皇杯を獲得する、という考え方を前提とせずに取り組んでいく」と議会答弁し、迫り来る高知国体では「天皇杯至上主義」を採らない考えを初めて表明した。
「なぜ県外の有力選手を入れてまで、天皇杯を取らなくてはいけないのか」。競技関係者らの反発をよそに、こだわり続ける橋本知事。曲折を経た昨年の高知国体は、総合順位10位という結果だった。天皇杯獲得目的の行き過ぎた対策は影を潜め、簡素化にも成功した大会に県内外から賛辞が寄せられたのは記憶に新しい。
旧来の発想や価値観にとらわれず、相手が永田町や霞が関であろうと言うべきは言う。そうした「橋本イズム」が県民の支持を集める大きな理由になっているのは明らかだ。「改革派知事」と呼ばれるゆえんでもある。
県地方労働委員会への県労連系委員の門戸開放、地方公務員採用時の国籍条項撤廃、そして政府・自民党などの猛反発を招いた「非核港湾」条例化問題など、振り返れば橋本知事の挑戦は大小、多岐にわたる。
その行動原理を、間近で橋本知事の思考経路に触れている川竹大輔・特別職知事秘書はこう解説する。
「行政と県民の常識がずれていないか。自分の常識とも照らし合わせ、行政の常識がずれていると感じたら、それを論理的に訴えるのが知事の手法だ」
法にも挑戦
「県民の常識」に軸足を置き、時には法体系にも異を唱える橋本知事。3期目には、その姿勢が中土佐町の採石場問題でも顕著に表れた。
県外業者が計画した採石事業に町民の約3分の2が反対の意思を示したこの問題で、「現行法では認可する以外にない」とする事務方の判断を橋本知事は地方分権や環境の観点から留保。
訴訟に発展すると、橋本知事は自ら法廷での意見陳述を求め、住民意思が反映されにくい現行法体系の不備を訴えた。結果は県の敗訴。知事は申請から2年8カ月後に許可を下ろしたが、この問題を機に、県は知事裁量で開発を抑止できる土地基本条例を手にした。
「裁判は最初から負け覚悟。しかし、地方分権一括法の施行で、採石法の許認可は機関委任事務から自治事務になったにもかかわらず、主体的に判断できない。問題提起した知事の思いは理解できる」
県の担当職員の口ぶりからは、地方という「畑」にどうやって水をまけば、自己責任・自己決定という分権の「種」が育つのか、その手法をつかみかけているように見える。
事後にフォローアップ、アフターケアがなければ、せっかくの芽吹きも成長が止まりかねない。橋本県政の実験の真の評価はそれ次第だが、橋本知事をはじめ改革派知事らで連携する組織の名称は「地域から変わる日本推進会議」。このネーミングにこそ「破天荒知事」の思いがこもっている。
【写真】脱・天皇杯至上主義で成功に導いたよさこい高知国体(14年10月26日の開会式演技、県立春野陸上競技場)
(知事選取材班)
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