県民に軸足を置く橋本大二郎知事は、県政の透明性を高め、古い価値観や体質を改革する手法を取ってきた。“橋本流”の民主主義・自治の実践と言い換えてもいい。
ある県幹部はそんな橋本知事の原点を、平成3年当時の「手結港マリンタウン計画」(後に中止)にみる。
当時、県などが進める一連の開発計画に対し、大手の浜のサンゴの保護を求める住民らが反対運動を展開。その運動メンバーらが橋本氏の担ぎ出しに動き、橋本県政誕生の呼び水となった経緯がある。
行政と住民との思いのズレを克服する。そこからスタートした「開かれた県政」は、先の県幹部にこう言わせる。
「知事は地域で頑張っている住民に視点を置き、行政の古い体質を壊そうとする。その姿勢は一貫してぶれていない」
改革の「武器」
橋本知事が1期目から手掛けた改革は、過去のしがらみ、負の遺産の清算だった。
対職員組合では人事諮問制度の廃止などに切り込み、対外的には県政の深部に食い込んでいた「特定個人・団体」の排除に断を下す。「声」の大きい県体育協会関係者の排除はまさに、橋本知事の面目躍如となった。
しかし一方で、縫製業の協業組合への闇融資事件が発覚。「特定団体」との関係の健全化は後手に回り、県政は深い傷を負った。
改革の断行には“武器”が要る。橋本知事はそれを、県民の支持とともに情報公開に求めた。「改革派知事」とされるリーダーに共通するのは、情報公開を徹底して透明性を高める手法だ。
制度面では情報公開条例の制定・改正に、念書・覚書類の公表▽課室所長以上の引き継ぎ書公表▽情報公表指針の施行などが続いた。今年9月には闇融資事件の教訓から、外部からの口利きを含む「働きかけ」の記録公表制度を運用。隠れ借金などの財政資料も一般公開するようになった。
価値観のリーダー
こうした取り組みを経た今、庁内からはこんな声が聞かれる。「蒸し込んできたことを表面に出せば非難される。以前は恐ろしくて“見えない影”に脅えていた。それをすべて表に出すことを皆で議論し、説明責任をどう果たせるか考えられるようになった」
橋本知事も、3期目最後の定例記者会見でこう自己評価した。「県民と向き合う組織に変えていくという点では、そういう方向へ移れる基礎、土台ができたのではないか」
もっとも、ある中堅職員は「方向性は間違っていない。幹部もそうとらえているはずだ」としながら、本音も漏らす。
「知事は社会が発展段階から成熟へと向かう過程での、いわば『価値観のリーダー』。ただ、ラッパを吹くのがトップなら、実際に理念を現実へ落とし込んでいくのはわれわれ役人。理念と現実に開きがあり過ぎるのがジレンマだ」
闇融資事件が明るみになってなお、公文書の改ざん・破棄などが発覚した。その度に職員研修のいたちごっこを繰り返し、今なお「特定個人・団体」の影もちらつく。
「情報公開は、第一義的には県民のため。しかし同時に、職員が自らの身を不当な圧力などから守るためでもある」とする橋本知事のため息と、庁内に漂う消化不良感が交錯する。
橋本県政の、透明で古い体質やしがらみを超える改革は一貫してきた。だが、改革後の県政が描く具体像は、薄明かりの中でまだぼんやりとしている。
【写真】「開かれた県政」を進めてきた橋本知事。時に疲れの表情も…(県議会本会議場)
(知事選取材班)
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