県議会2月定例会が閉会し、統一地方選を目前にした県議たちが自らの選挙区へ一斉に散ったころ、3月末での退職が決まっていた前土木部長の安岡健は知事室に入っていった。
「一応、知事にも見ていただいておこうかと…」。そう言って安岡が取り出したのは、県の指名業者(土木)の格付け一覧表だった。
【写真】建設業界の「思いと要求」を背にする橋本大二郎知事の足取りは重い(9月13日夜・高知市の高知新阪急ホテル)
「特定業者」
縮減の一途をたどる公共事業、仕事にありつけない建設業者。この深刻な状態を打開する業界再編の一手として、安岡たちは15年度当初から格付けを大きく変更しようとしていた。上位200社ほどのAランク業者をぐっと絞り込み、名実とものリーダー群の形成を促す狙いがある。
そのボーダーラインをどの辺で引くか。上位20社か、あるいは30社程度か―。思案の末にほぼ結論は出していたが、知事が「不関知」ではまた問題になりかねない。
橋本大二郎は最初、一覧表を見ようとしなかった。が、結局は手に取って目を走らせた。そして言った。「見れば見るほど、何も言えない…」
「そうだろうな」と安岡は内心思った。境界線の前後には、知事もよく知っているはずの業者名がズラリと並んでいた。
橋本の過去の選挙が、「草の根」だけでなく各種業界、中でも土木建設業界に大きく依存していたことに疑いの余地はない。最近の記者会見で橋本は、「2期目、3期目の選挙では、自己資金はほとんど使っていない」とも答えている。
その橋本には、とりわけ3期目以降、関係が密になった特定企業のオーナーがいる。
業界大手企業の社主、三谷一彦。橋本の3期目の選挙当時、業者の多くが自民党県連が推薦した所谷孝夫陣営へくら替えする中で、最後まで橋本を支援し切ったという自負が、三谷にはある。
加えて、産業廃棄物を排出する側の責務として業界大手を束ね、高岡郡日高村柱谷地区へのエコサイクルセンター建設計画に人一倍エネルギーを注いできたという思いも強い。
「ブレーンを」
三谷は衆院議員山本有二らと「橋本四選支持」の考えを固めていたが、ぐらつく余地がないでもなかった。
一つには橋本の産廃問題解決に懸ける姿勢への不満があったし、何よりも自民党県議団との不協和音が絶えず、選挙で頼る建設業界に対しては、厳格な土木行政を展開してくる。低入札価格調査制度の導入や新たな「格付け変更」などがそれを象徴していた。
三谷の思いは、総じて業界の声を代弁するものと言っていい。県建設業協会会長の井上和水は「この公共事業依存県が、なぜよその県に先駆けて血をみる改革をやらねばならんのか」と言い換える。
9月13日夜。衆院議員福井照の国政報告会に顔を出した三谷と山本は、そのままホテルの別室で橋本を囲んだ。
三谷らの思いは、よく知った旧建設省OBを次期橋本県政の「ブレーン」に、という際どい会話にまで発展。それを断って引き上げる橋本の足取りは重かった。
橋本が高知県知事の座に就いて12年。県農協連トップが対立候補となった前回の選挙では橋本の「農政」が問われた。今回は「土木行政」が橋本の上に暗雲を広げ、そして松尾徹人(前高知市長)との対決の背景にもがっしりと組み込まれている。
(文中敬称略・知事選取材班)
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