知事選(11月13日告示・同30日投開票)が動きだした。
4選を目指す現職・橋本大二郎(56)に、待ったを掛けた県都高知市長の松尾徹人(56)。県議会で突然噴き出した橋本の選挙資金調達疑惑が、2人の周辺に覆いかぶさる。知事選はそれまでの水を打ったような静けさから一転、激震し、そしてダムが決壊したかのような激流へ。底流には何があったのか――。
【写真】自民党県連大会は「知事選対応」を避けて通った(5月25日、高知市の三翠園)
“基本設計”
今年1月6日の昼下がり。県建設産業団体連合会の新年懇談会で、参院議員田村公平のあいさつが波紋を広げた。
「知事も4期目をやるなら、建設産業の厳しい現状をちゃんと認識して仕事をしてもらわんと」
橋本は既に4選への意欲をあらわにしている。田村にすれば、普段の思いを口にしたまでだったのかもしれない。だが、今でも「アンチ橋本」と目されている田村の口から「橋本4選」という言葉が、確かにこぼれた。
その夜、衆院議員山本有二は県建設業協会幹部らと卓を囲んだ。「田村さんもあんな姿勢だ。秋(の知事選)は橋本4選でいく」。暗黙の“基本設計”がその場で固まった。
「泥棒をつかまえるように知事を追い立てるのは、もうやめんかえ」。山本は1月下旬、県選出の同僚議員らにこんな言葉を投げ掛け、それ以降も橋本支持の言動を積み重ねていく。際立ったその橋本寄りの動きはのちに自ら緊迫した場面を呼び込む羽目になるが、山本に限らず自民党の県選出国会議員には共通する思いがある。
知事選の度に党内が分断され、そして橋本に屈し、敗戦処理を余儀なくされるのはたまらない――。
前回11年の知事選。自民党県連は県農協連会長の所谷孝夫を推薦したものの拘束力はなく、実質的に内部分裂して戦い、敗れた。後遺症は想像以上に重かった。
発言ゼロ
自民党勢力内を「不戦ムード」が支配していた事実は、県議会改選後に開かれた県連大会が立証していた。
5月25日。県連会長の衆院議員中谷元も党情報告に立った前幹事長土森正典(県議)も、知事選対応にはついに一言も触れずじまい。会場を埋めた一般党員からの発言すら皆無という、信じ難いありさまだった。
「松尾が立てば有力な対抗馬になるんだろうが、松尾は3期目へ進んだ。借金もつれ、難題だらけの県政を引き受ける者がおるろうか。だったら現職が後始末すればいい」
土森は当時そう考えていたことを否定しない。それはまた、橋本の「議会軽視」ぶりに苦虫をつぶす反知事派の県議たちとしても同じことだった。
県連大会で幹事長職を継いだ元木益樹(県議)、政調会長の山本広明(同)は直ちに、知事選に向けた政策の取りまとめに入った。それは知事選が無風となった場合への備えであり、橋本との距離を一定確保しておく「保険」を意味した。
一方、自民党を支える建設業界も、大方は橋本の独り舞台を予想した。そのまま波乱なき秋を迎えるかにみえた。
しかし、梅雨空に覆われた7月初旬の東京で、2人の男が再会する。それが橋本4選への緩やかな流れを逆に断ち切ろうとする激流となっていくことを、まだ誰も知る由がなかった。
(文中敬称略・知事選取材班)
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