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11月27日付・高知新聞朝刊

 過半数が態度未定 岡崎氏追う岡内、関谷氏

 松尾徹人前市長の辞職に伴う高知市長選も投開票まであと3日と迫り、いずれも無所属新人で毎日新聞社元高知支局記者の関谷徳(42)、前市産業振興部副部長の岡崎誠也(50)=民主・社民推薦、公明県本部支持=、食材卸会社社長の岡内啓明(55)の3候補が争っている。本社世論調査の結果や取材班の情勢分析を総合すると、岡崎氏が推薦政党などの組織票などを手堅くまとめる形でリード。これを岡内氏が懸命に追い上げ、関谷氏が続く展開となっている。

 ただ、態度未決定の有権者が5割以上に上り、関心の低さが気掛かり。知事選への影響も懸念され、投票率が戦況を左右する予断を許さない状況だ。

 関谷氏は県知事選との連動を図り「橋本色」を前面に打ち出しているが、出遅れも響いて浸透が不十分。岡崎氏は厚みのある布陣の組織力を生かす形で、支援政党などへの支持拡大に一定奏功している。岡内氏も食品・流通関係を基盤に運動量を積み重ねているが、目指す草の根型選挙はまだ徹底し切れていない。


 終盤の盛り上がりを期待 記者座談会

  松尾前市長の辞職に伴う高知市長選は、文字通りの短期決戦。3候補の政策や人柄が浸透しないまま告示を迎え、有権者の過半数がまだ意中の人を決めていない。

  衆院選、知事選と続く選挙ラッシュの最後発となり、しかも投票日は知事選と同じ。他の選挙期間中は後援会活動ができないという公職選挙法の縛りもあり、3陣営とも前哨戦がほとんど展開できなかった。

  これでは関心も高まりようがない。県都の首長を選ぶ重要な戦いなのに、知事選に埋没してしまっている。

  今回は突発的に起きた特異なケースにしても、これから4年ごとに知事選とダブル選挙になる影響は大きいね。いつも知事選に埋没するのは、市政にとって良くないよ。

  個別に見よう。岡崎陣営は分厚い布陣だが。

  昨年10月の市長選で松尾が組んだ陣形と同じで、共産党を除く市議会各会派と労組の「連合艦隊」。県議、市議はもちろん、国会議員も選挙カーに同乗している。

  最大のポイントは、地域にいかに入り込むか。その点、告示前に支援市議と一緒にあいさつ回りを精力的にこなしていた。

街頭で支持を訴える高知市長選の候補者。終盤戦の盛り上がりが期待される  観光課長当時の人脈もあり、各商店街の反応はいいようだ。同郷の宿毛市出身者や高知学芸高OBらの票も積極的に掘り起こしている。

  ただ、どの政党も知事選と掛け持ち。中には動員疲れしている市議もいる。

  保守色が薄い事務所態勢から、革新のイメージも持たれていたようだが。

  自民党からも他党と同じぐらい支持を集めている。行政経験のある岡崎に、市政の安定を望んでいる表れとも言えるかな。

  岡崎は松尾から市政を託され、個人演説会などでも連動した動きが目立つ。

  でも、セットには好感と反発の両方の反応がある。岡崎本人も、松尾の後継色を出すべきところと、そうでないところをうまく使い分けている。

  岡内は高知青年会議所OBや土佐経済同友会など、企業経営者の支援が中心。浸透具合をどう見る?

  会社経営で関係のある食品・流通業界の反応は悪くない。県内の卸最大手が熱心に動いているし、量販店にも濃淡はあるものの、支持は広がっているようだ。ただ、世論調査を見ると、末端まで浸透しているかは疑問だ。陣営も上滑りを警戒している。

  選挙に不慣れなスタッフ中心だが、個人演説会の動員は岡崎に負けていない。女性が結成した草の根グループは、短期間で500人規模に膨れ上がった。

  しかし、面的な広がりがあるのは高知卸団地や食品工業団地など。今後、どこまで支援企業に浸透するかが勝利への鍵だろう。

  岡内は当初、「知事選とは切り離す」と強調していたが、実際、橋本とはリンクしていないのか。

  いや、橋本の出陣式や個人演説会にも顔を出していたよ。陣営の中でも意見が割れているようだが、距離の取り方は中途半端だね。

  その点、関谷は自ら橋本色を前面にアピールしている。

  出馬表明は遅かったが、取材で知り合った市民や一部の橋本の支持者らが支え、手作りの選挙を展開している。

  イメージカラーは橋本と同じ黄色。でも、街頭演説を何回か聞いたが、内容は「知事は橋本、市長は関谷」に終始している。政策をほとんど訴えないで、支持が集まるかどうか…。

  陣営は橋本とのセットを強調し、共産票の獲得を期待しているが、実際にはあまり流れ込んでいないようだ。

  手勢不足は否めないが、新聞記者やアナウンサーの経歴と若さをセールスポイントに、活路を見いだしたいところだろう。

  全体的な盛り上がりは?

  基本的に投票率は知事選と連動する。そうなると、仮に投票率50%で約13万票の争い。どの陣営も“基礎体力”以上の得票が必要なだけに、態度を決めていない5割強の有権者の動向によって、情勢が揺れ動く可能性もある。

  知事選の関心度とは大きな開きがあり、3陣営とも最後まで気の抜けない戦いだろう。繰り返すが、県都の新リーダーを決める重要な選挙。終盤の盛り上がりを期待したいね。

 【写真】街頭で支持を訴える高知市長選の候補者。終盤戦の盛り上がりが期待される

 関谷さん   距離を縮めながら

「草の根こそが支持母体です」と強調する関谷さん(高知市追手筋2丁目)  告示日の朝。「市民に軸足を置いた市政を」と力強く第一声を上げた後、選挙カーには乗らずに歩いて日曜市へ。この店あの店、右へ左へ、ゆっくり声を掛けて回る。

 「皆さんとの距離を縮めることが基本。こうして歩くことが、公約実現の第一歩です」。告示以降、毎日、1日1時間は「歩いて訴える」選挙を続けている。

 「選挙費用は供託金(100万円)の3倍以内に抑えます」と話す。紺色の選挙カーを彩るたくさんの黄色いハンカチは、12年前の知事選で、橋本大二郎氏に劇的勝利をもたらした「草の根」のシンボルでもある。

 「『金を掛けない』より『掛ける金がない』と言う方が適切かも。気力でいきます」。穏やかに笑う横顔に、焦りは感じられない。

 記者時代に培った「分かりやすさ」を常に心掛けた街頭演説。「県・市の連携」「公用車を廃止し、タクシー利用で民間に活力を」「市長のいすの後ろには皆さんに座っていただきたい」。明快な主張。よく通る声。市政改革への思いは確実に市民に届き始めている。

 路地の向こうで耳を澄ませていたおばあさんが、つえを手にそろり、そろりと道路に出てきた。関谷さんをじっと見つめ、「好感が持てますね」とぽつり。日増しに強まる手応えが、背中をさらに押す。

 「これからが正念場。逆転サヨナラ勝利へ、押しまくります」。静かに広がる草の根の息吹を感じ始めた。声に力がみなぎってきた。

 【写真】「草の根こそが支持母体です」と強調する関谷さん(高知市追手筋2丁目)

 岡崎さん   幸せ感じる市政に

「市民の幸せを視点に」とアピールする岡崎さん(高知市旭駅前町)  工業団地。住宅街。港町。さまざまな顔を持つ高知市内を、縫うように選挙カーが行く。「岡崎誠也、28年間の行政経験を生かせる即戦力です」。温かみのあるピンク色のジャンパーを着たうぐいす嬢が、しきりに訴えている。  助手席の岡崎さんは「ありがとうございます」「頑張ります」とあいさつを繰り返しながら、思い出していた。

 昭和50年。高知市役所入りの直後に配属されたのが福祉課(現・生活福祉課)だった。6年間、狭く入り組んだ道を、急な坂を、ミニバイクで走った。軒を連ねた家々。そこには、生活苦にあえぐ人々がいた。

 その6年間を、こう言ってはばからない。「人の痛み、人間関係の大切さを知ることができた、公務員としての原点」

 今、また市内をぐるぐると回っている。道は舗装され、広くなった。しかし人々は、当時とはまた別の苦しみにあえいでいる。不景気でもうけが上がらない。リストラされた。老後が不安…。

 家の前で手を振っている人がいると、できるだけ車を降りて走り寄る。握った手が訴えてくる。「私らの生活、頼みましたよ」。その声に応えたい、と思う。「誰もが、少しでも幸せを感じられる市政にします」

 選挙戦3日目からジャケットを脱いで、運動員らと同じピンクのジャンパーを羽織っている。周囲は「誠也さん、似合うなあ」。

 「人の痛みを知っている者の温かさ」が、じわり、にじみ始めている。

 【写真】「市民の幸せを視点に」とアピールする岡崎さん(高知市旭駅前町)

 岡内さん   輝く町に変えます

「民間の感性で市政の運営を」と訴える岡内さん(高知市上町5丁目)  「今の市政は市民のために何が必要かという順番が間違っていませんか。市民が主役の市政が必要ではないですかー」

 「よさこい祭り、日曜市、漫画家…。世界に誇れる素材が生かせてないのではないでしょうか」

 手を大きく広げ、体を右に左に向けながら、声量たっぷりに訴える。有権者に訴えたい、伝えたいことは山ほどある。

 この街に生まれ、この街で育ち、この街で営みを続ける。日々の暮らしから市政への疑問やアイデアが浮かぶという。

 連日、量販店前などで街頭演説し、夜は個人演説会を3、4カ所こなす。「1人でも多くの有権者に話を聞いてもらいたい。そうすれば共感してもらえると思う」

 日中は市内の路地を選挙カーでコトコト回る。ある住宅街。「岡内さん。頑張ってよー」と手を振って家を飛び出てきた女性たちがいた。キキーッ。選挙カーが急に止まった。岡内さんは車を降りて駆け寄ると、相手の目をじっと見つめながら「よろしくお願いします」。握り合った手のぬくもりが、交わした言葉の一つ一つが「高知市の明日」につながっていくと信じている。

 キャッチフレーズ「こじゃんとやります!」は言葉だけではない。旧高知西武ビルへの大型漫画パネル設置や、高知の食文化と食ビジネスの創造を目指すNPO法人の結成などで、経済人としての企画力や実行力も示している。

 「高知市はもっと輝く街になれる。僕が変える」。本気だ。

 【写真】「民間の感性で市政の運営を」と訴える岡内さん(高知市上町5丁目)


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