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松尾氏 目潤ませて引退表明
「高知を変えます」と握ったこぶしの中に、日増しに「昨年とは違う」という感触が膨らんでいた。しかし、松尾さんのその実感は現実のものにはならなかった。「橋本氏当確」の報に高知市本町5丁目の事務所の空気は重く沈み、やるせなさが漂った。
松尾さんの目に、橋本県政は「国に反論するだけで国会議員への陳情もしない」「市町村に冷たい」と映った。だから昨年の知事選で動いた。
それから1年。「信頼と協調の政治」を看板に再び立った。「昨年の敗北以後、各地を歩いた。見えなかったものが見えるようになり、聞こえなかったものが聞こえるようになった」。エリートコースを歩んできた男が初めて「挫折」を味わい、「自己変革した」と訴えた。「高知をこんなにした県政が許せない」。ひたすら「高知の将来像」を訴えた。
「首長選挙は自治体の将来の姿を選ぶもの。信任投票じゃない」「国は政権与党で動いている。言いなりにはならないが、パイプは必要。それを生かして地方の発展を」
しかし、そんな思いは有権者に届かなかった。多くの県民は今回の選挙戦を「橋本さん対松尾さん」ではなく、「知事対自民党県議」と見て取ったのだろうか。政府や自民党幹部の応援は追い風にはならなかった。
「おかしい」「うそや」…。打ちひしがれる事務所に現れた松尾さんは支持者、運動員をねぎらった。目を潤ませ“最後のマイク”を握った。
「政治生命を懸けた戦い。今回で政治の世界から身を引きたい。しかし大好きな高知を離れることなく、別の立場で県政の行方を見守っていきたい。橋本さんは私と同じ県民の思いを、しっかり踏まえていただきたい」
明確な政界引退の表明に、声が飛んだ。「人物も政策も負けてない。頑張ろう」。沈痛な表情でうつむいたままの松尾さんに、涙の支持者が寄り添った。
【写真説明】「力及びませんでした」と頭を下げる松尾さん(高知市本町5丁目の事務所)
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