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2001参院選高知

投票日後
◇続き◇
 2001年7月30日(月)・夕刊

改革へ期待、不安 参院選・県民の声

 二十九日投開票が行われた二〇〇一参院選は、自民党が大勝し、与党が安定多数を確保した。県選挙区でも自民党の田村公平さん(54)が再選を果たし、自民党が衆参五議席独占を堅持した。国民は小泉首相が掲げる「改革」を支持した格好だが、県民はこの投票結果をどう受け止めるのか。投票から一夜明けた三十日、県内各地で声を拾った。

 自民大勝の要因は、何といっても列島に吹き荒れた小泉旋風。「改革」への期待は大きい。

 香美郡野市町の農業の女性(61)は「小泉さん一色の選挙だった。小泉首相も田村さんもこれにおごることなく、改革に取り組んでほしい」。中村市の自営業の女性(41)も「田村さんと広田さんの差が、幡多でもこれほど開くとは。自民党ではなく、小泉さんに一票を投じるというムードでした」と舌を巻く。

 その「ムード」に批判的な声も。安芸市の女性会社員(27)は「すごい小泉人気。自民党に人気が集中し過ぎるのが逆に心配です。投票率が伸びなかったのは、そんな不安の表れでは? 選挙結果は自民党への完全な信任とは言えないと思う」と冷静。

 高知市の公務員の男性(36)も「自民党の圧勝は予想通り。それだけ小泉改革への期待が高いのでしょうが、それにしては投票率が低かったのは意外」と首をかしげる。

 「改革」の中身が問題という声も。室戸市の自営業の男性(60)は「比例代表はともかく、選挙区から選出された議員が改革に本腰を入れるかが疑問。利益誘導型の今までの体質が簡単に変えられるとは思わないですから。選挙後の候補者を注視したい」と話す。

 今回の選挙戦を興味深く見たという高知市の男子高校生(18)は「首相がスターになったらいかん! ほかの自民党議員はそれに乗っかっただけやと思う。とりあえず僕は靖国神社には行かれんと思う」と注文を付けた。

 底なしの景気低迷、地方の切り捨てへの不安や福祉、教育の充実を望む声も。土佐清水市の漁業の男性(55)は「漁獲量が減り、本当に厳しい。新鮮な魚なら魚価も上げられるが道路事情が悪い。早く高速道を延ばして」。

 「今の介護保険は、介護に当たる家族の負担が大きく、介護する側が参ってしまう。家族を支援する施策がほしい」とは吾川郡春野町の主婦(71)。高知市の主婦(35)は「『ゆとりある教育』が叫ばれながら、授業は詰め込みが現実。学校週五日制になっても通塾熱が高まるだけでは」。

 「小泉改革」を、本当に信じていいのか。高岡郡葉山村の男性(45)は「自民党はよく言えば柔軟やけど、しぶとい組織やねえ。私たちのような中山間で細々と農林業をする者の味方は一体だれなのか、よう分からんようになった…」とため息をついた。


再選の田村氏 「高知の論理 堂々と主張」

再選を果たし、景気対策や本県の浮揚策など抱負を述べる田村氏(本社応接室)  二十九日投開票された第十九回参院選高知県選挙区(改選数一)は、自民党公認の前職、田村公平氏(54)が十四万八千八百票余りを獲得し、再選を果たした。低迷する日本経済の再生へ構造改革が求められるが、一方でその「痛み」は地方を直撃するともいわれている。本県の声をどう国政へ反映させるのか。高知新聞社は当選直後、田村氏を本社に招き、山本邦義・本社編集局長が今後の抱負などを聞いた。

 ――見事な勝利でしたが今のお気持ちを。

 田村氏 感謝の気持ちでいっぱいだ。森内閣当時は、「自民党に戻るきいかん」と心配してくれる人もおり、私にとっては逆風ではなく、暴風だった。小泉内閣が誕生し、小泉純一郎総理、中谷元防衛庁長官もわが選挙のように応援してくれた。

 ――勝因は。

 田村氏 この六年間、現場を歩いてきたが、景気の問題は深刻。「自分たちの生活を何とかしてほしい」という切実な声が中山間地域、都市部でも多く、その思いを託してくれた。二番目には、景気の悪さ、政治に対する閉塞(へいそく)感が充満する中、何かをやってくれそうな小泉総理に物を言えるのはだれだろうと。田村公平だったら言える、その思いも託してくれた。三番目には自民党の組織が一生懸命動いてくれたこと。四番目は、祖父の代からの“田村党”の存在。特に中盤から党営選挙と連動してすごい勢いとなってくれた。

 ――90%近い支持率があった小泉旋風の実感は。

 田村氏 高知は魔の選挙区と言われており、どうなるか分からない不安感があった。あの支持率はお化けのような数字。マイナスにはならないと思ったが、どんな形になるかは雲をつかむようだった。自民党自身が危機感を持って、変わろう、変わらなければという能動、受動的なものが高い支持率につながった。私の皮膚感覚ではじわじわ上がっていたという感じだ。

 ――広田陣営は父・勝氏の雪辱戦でもあり、全面的に支えた橋本大二郎知事は、国政選挙の在り方を問うとも言っていた。

 田村氏 (広田氏の雪辱戦については)何も感じるところはなく、なぜ出てくるのかと思った。私の今回の選挙は国政選挙の在り方を問うことではない。私は六年前の当選インタビューで、役に立たなかったら落としてくれと言った。今までの経験を生かし、小さいながらも会派をつくって暴れてみせますと。私の信念はびくとも動いてはいない。知事どうこうは、さまつな話。きれい事で言っているのではなく、常識外の話であり、関係ない。選挙では「知事に負けてたまるか」と言う人もいたが、「私の選挙であり、私を支持してください。知事選挙ではありません」と言ってきた。

 ――知事は「私の信任投票と思ってください」とも言った。

 田村氏 それがもう常識外。コメントするのもばかばかしい。生きている次元が違う。

 ――小泉内閣が掲げている「聖域なき構造改革」は「痛み」を伴う。道路特定財源、地方交付税をめぐり都市対地方という問題提起もされた。道路でいえば、本県はまだ基盤整備が進んでいない。

 田村氏 道路特定財源の問題は十四、五年前から言われ、せめぎ合いは常にあった。本県の道路はまだ脆弱(ぜいじゃく)だ。その実態は知ってもらわないといけない。

 ――しかし、都市の論理は「均衡ある国土発展はそこそこいっている。毛細血管まで整備する必要があるのか」となる。これにどう反論するか。

 田村氏 冗談ではない。建設政務次官の時、一万七千人の陳情を受けたが、すべて「道路をよくしてくれ」だ。私を選んでもらった以上、高知県の論理を堂々と主張する。折衷案は必ず出てくると思う。

 ――競争の時代であり、弱肉強食でいかないとグローバルの時代は生きていけないというのが小泉改革ではないか。

 田村氏 EUも保護政策は取っているし、地球温暖化防止のための京都議定書の問題ではアメリカのエゴが出た。世界中が自国の権益を守ろうとしている。「聖域なき」とは、特別な人や団体が利益を受けたり、切り込みから逃れることは駄目だということ。痛みは平等に受けなければならない。

 ――今後、改革の具体論が出てくるが。

 田村氏 私は現場(地域の実態)を知っているし、知っていてよかったと思う。役人にはだまされないからだ。また役人も知っている。

 ――日本経済の九月危機も言われるだけに、それをどう乗り越え、景気回復を本物にするか。

 田村氏 選挙のために戦線を離脱して二カ月。物申すために、早く復帰したい。株価も大変な状況になっている。政務次官就任時に、記者に「ゼネコンを救済するのか」と聞かれ、「バブルに浮かれた企業を救済するつもりはない」と申し上げた。甘えの構造は許されない。

 ――政官財のもたれ合いで来たことは事実。それを変えないといけない。

 田村氏 政治家が理論武装し、言うときはきちっと言うことが大切だ。多数派が正しいとは限らない。メスを入れる姿勢はびくともしない。

 ――これからの六年、まずはすぐに具体化したいというプランは。

 田村氏 とにかく景気対策。漠然としていると言われても景気対策だ。ミクロになるが、高知から選ばれた立場でいうと、本県は災害常襲県であり、安全、安心が確保できて初めて快適な県土づくりができる。地元が喜んでくれることをメリハリをつけて、きっちりやらせてもらいたい。

 【写真】再選を果たし、景気対策や本県の浮揚策など抱負を述べる田村氏(本社応接室)


比例代表の樋口さん(安芸市) 「精いっぱいやった」

目頭を押さえながら支持者にあいさつする樋口さん=中央(30日午前8時すぎ、東京都町田市)  訴え届かず――今回の参院選の比例代表選挙に出馬した安芸市出身の民主党新人、樋口恵子さん(50)は、自ら障害を持つ候補として「弱い立場の人の声を国政に生かしたい」と懸命に訴えたが、健闘及ばず涙をのんだ。

 樋口さんは一歳半の時、結核菌に脊椎(せきつい)が破壊される脊椎カリエスを発症。中学時代は高知市の「子鹿園」で寝たきりの生活を過ごした。

 「障害者に対する社会の目にとらわれ、自分を好きになることができなかった」が、米国で触れた自立生活運動に感銘を受け、現在は「ありのままの自分を好きと言える社会にしたい」と全国で障害者の自立を支援する活動を展開している。

 身長一三六センチ。肺活量は健常者の五分の一程度しかないが、選挙中は「地盤もカバンも看板も体力もない厳しい戦いに飛び込めたのは、高知のようなおおらかな風土で育ったから」と笑顔で話していた樋口さん。

 三十日朝、東京都町田市の事務所に姿を見せると、「精いっぱいやったし、決して無謀な挑戦だったとは思わない。ただ、この(非拘束名簿式の)選挙制度は組織も知名度もない候補にはあまりにも厳しすぎる」と涙ぐみながら支持者に頭を下げた。

 【写真】目頭を押さえながら支持者にあいさつする樋口さん=中央(30日午前8時すぎ、東京都町田市)


 田村氏 14万8834票 全国最少当選 

 選挙区で最も少ない得票数で当選したのは、十四万八千八百三十四票の高知の田村公平氏(自民)。落選者の中で最も多い票を獲得したのは、大阪の山下芳生氏(共産)で五十九万四千六十三票。その格差は三・九九倍に上った。

 低得票の当選者をみると、田村氏をはじめ少ない方から五人が十万票台。一方、高得票落選者は、山下氏が飛び抜けて票数が多く、続いて三十万票台の獲得者が十一人もいた。

 選挙区の全候補者を得票順に並べて当落を判定してみると、当選者のうち得票が低い下位十六人が落選、逆に落選者のうち高得票の上位十六人が当選という勘定になる。

 今回の選挙区最高得票は東京の保坂三蔵氏(自民)で百四十万七千四百三十七票。田村氏の九・四六倍に達した。


 高知市選管 最終発表午前10時50分 全国3番目の遅さ

 二十九日投開票が行われた参院選は、比例代表選挙に初めて非拘束名簿式が導入されたことから全国的に開票が大幅に遅れた。高知市の県民体育館で開票を行った同市選管の最終発表は三十日午前十時五十分となり、全国の市区町村で三番目の遅さとなった。

 同市選管は開票のスピードアップのため、三年前の参院選より百十人多い四百九十人を投入。二十九日午後九時半に開票をスタートし、終了は三十日午前六時ごろを予定していた。

 しかし二百四人に上る比例候補の投票の振り分けのほか、疑問票が「全体の何割とは断定できないが、従来に比べて当然多く、バリエーションも数え切れないほどあった」(選管事務局)ため、政党、候補者票がほぼ確定したのは三十日午前八時ごろ。その後、案分票百五十二票の算定に入り、午前十時十分に県選管に報告。県選管の最終チェックを経ての発表は十時五十分となった。

 市選管は「終了予定の午前六時はあくまで一つの目安だった。特にトラブルもなく、迅速、厳正な作業に努めた結果、この時間になった」とし、「逆にほかの市町村が早いという印象だ」と話した。


 2001年7月30日(月)・朝刊

参院選県選挙区 田村氏が再選 自民5議席独占堅持

再選を果たし、祝福の花束を手に喜びの笑顔の田村氏(29日午後10時35分、高知市升形)  小泉内閣初の国政選挙となった第十九回参院選は「改革」の是非を最大の争点に二十九日投開票され、自民、公明、保守の与党三党は六十三議席を超え、非改選と合わせ、「安定多数」を制した。自民は小泉人気を背景に、国政選挙では一九九二年の参院選以来九年ぶりとなる改選過半数(六十一議席)を超え六十三議席となっており、小泉純一郎首相が掲げる「改革」は支持された。自民は、選挙区の当選者四十四人中の四十三人が一位の大勝。民主は二十議席台半ばで伸び悩み。公明は手堅く、自由も改選議席を上回る健闘。だが共産、社民は後退した。与党三党は連立政権維持を確認、小泉純一郎首相は「改革」路線が支持されたとして選挙後も続投、強気の政権運営を進める方針だ。投票率は共同通信社の推計で前回58.84%を下回る56%程度となった。(この項共同)

 改選一議席を五候補が競った高知県選挙区は即日開票の結果、自民党公認の前職、田村公平氏(54)=保守党推薦=が十四万八千余票を獲得、無所属新人の広田一氏(32)に三万六千余票の差をつけ、再選を果たした。民主党公認の新人、中村久美氏(41)=社民、自由両党推薦=、共産党公認の新人、中根佐知氏(45)、自由連合公認の新人、前田清貴氏(48)も健闘したが、及ばなかった。田村氏の再選で自民党は県選出の衆参五議席を堅持した。60%を超えると予想された投票率は、平成十年の前回参院選を2.18ポイント上回る58.39%にとどまった。

 県内五十三市町村の開票作業は、物部村など二十三町村で午後八時から、午後九時半にはすべての市町村で始まった。

 田村氏は、四月の小泉内閣発足以来、「小泉旋風」の追い風に乗って終始優位に立ち、自民党県連も「県内衆参五議席の独占堅持」を至上命題に組織選挙を展開。公示後の十六日には小泉純一郎首相も来高して改革ムードを盛り上げ、保守層の支持を広げる一方、無党派層を引き付けた。地元の香美郡や土佐郡、県東部などで大勝。幡多地域でも地元の広田氏を上回り、高知市でも競り勝った。四十九市町村でトップを取り、午後十時二十一分、当選を確実にした。

 広田氏は、橋本大二郎知事の全面支援を受け、「若さ」と「知事と一緒に」をアピールして草の根選挙で挑んだが、出馬表明が四月と出遅れ、準備不足のまま選挙戦に突入した。それでも草の根の輪を徐々に広げ、終盤にかけて猛追。公明党の実質支援も得て、地元の土佐清水市、大月町、葉山村、大野見村の四市町村で田村氏に競り勝ち、十一万票の大台に乗せる健闘をみせたが、及ばなかった。

 昨年の衆院選高知2区で健闘した中村氏は、連合系労組を基盤に戦ったが、小泉人気に押され、全県的な支持を広げ切れなかった。中根氏は小泉改革を「国民いじめ」と批判。自共対決の姿勢を鮮明に打ち出したが、届かなかった。前田氏は独自の戦いだった。

 【写真】再選を果たし、祝福の花束を手に喜びの笑顔の田村氏(29日午後10時35分、高知市升形)

 田村 公平氏(54)=自民(2) 早稲田大政経学部卒。NHK勤務、父田村良平衆院議員秘書を経て、平成7年参院選県選挙区で初当選。元参院自民党副幹事長。元建設政務次官。党県連副会長。香美郡土佐山田町出身。高知市九反田。当選2回。橋本派。

 田村氏 自民支持層の7割 県選挙区で出口調査

 二十九日投票が行われた参院選で、高知新聞社と共同通信社は初の本格的な出口調査を実施した。県選挙区で再選を飾った自民党の田村公平氏に投票したと答えた人は自民党支持者の70%、七十代以上の55%に上り、保守層と中高年を中心に厚い支持を集めた。

 出口調査は県内三十六投票所で行われ、一千三百七十七人が回答。田村氏に投票した人は男女を問わず五十代、六十代でも40−50%を占めた。無所属新人の広田一氏は二十代後半の41%、三十代、四十代の35%近くと、若い世代で厚い支持を集めた。

 支持政党別では、自由党支持者の44%、公明党支持者の21%が田村氏に投票したと回答。広田氏は公明党支持者の57%、支持政党なしの39%、社民、民主、自民の各党支持者の22−28%の支持を集めた。

 一方、比例代表で投票した政党別では、自民党に入れた人の69%が田村氏に投票。広田氏は公明党の実質支援を受けたが、同党に投票した人のうち広田氏に投票したのは49%だった。

 民主党新人の中村久美氏は同党支持者の58%、推薦を受けた社民党支持者の53%が投票。共産党新人の中根佐知氏は同党支持者の74%が投票したと答えた。


小泉改革に地方の声を 田村さん 自信と決意

 記録的猛暑の中、熱い舌戦を繰り広げた二〇〇一参院選高知は二十九日、自民党の前職、田村公平さん(54)が議席をがっちり死守した。「改革」と「痛み」を争点に五候補がしのぎを削った選挙戦は、梅雨明けを境に急上昇した気温とともに一気にヒートアップ。投票率も前回を2ポイント余り上回り、60%に迫った。田村さんは全国を席けんした小泉フィーバーの爆風に乗り、四候補の追撃をかわして歓喜のフィニッシュ。日焼けした顔をさらに赤く上気させ、「鮮やかに、さわやかに、すっきり勝たせていただいた」と勝利宣言した。涙をのんだ候補も「私の力不足」「無念の気持ちでいっぱい」などと支持者らに深々と頭を下げ、敗戦の弁。新世紀最初の国政選挙は歓声とため息が交錯する中、幕を閉じた。

 「うおーっ」「やったー!」。午後十時二十一分の当確の瞬間、高知市升形の事務所を埋めた人々は喜びを爆発させた。姿を現した田村公平さんはもみくちゃで壇上へ。熱気いっぱいの支持者たちと万歳三唱し、喜びを分かち合った。「決意新たに高知、日本のために誠心誠意やります!」。選挙で訴え続けた「小泉改革に地方の声を届けること」に自信と決意をみなぎらせた。

 事務所は開票前から自民党代議士や県議、支持者らですし詰め状態。テレビの速報を見つめ、各地でトップの票を得るたびに「取った!」「はよう当確を!」の声と笑いが起きた。ライバル陣営が映ると「敗戦の弁やないか」「泣きそうやね」の声。終始勝利への確信が満ちあふれた。

 この夜は時折激しい雨が降った。同じような雨に見舞われた公示日の朝、田村さんは出陣式で「落選二回と六年前の当選。降ったりやんだり。晴れもあれば土砂降りもある」と自分の人生に例えてみせた。

 参院選までの政治状況の展開も激しかった。森政権下では自民党、中でも自身が属する橋本派への批判はピークを極めた。「何十年来の支持者がもう自民党はいいという。向かい風どころか暴風雨」と漏らした田村さん。それが「神風って吹くんだなあ」と表現するほどに小泉政権誕生後は一変した。大きな波。うねり。熱狂。振れやすい国民性には危うさが伴う。改革の中身も痛みも方向性も、まだこれからだ。

 「誤った改革にならぬよう多くの支援が欲しい。票の多さが国会での発言力になります」と訴えた田村さん。県民からの回答は約十五万票という数字だった。

 「ほんとありがとう」。土砂降りのような声援の中で、田村さんは夜空にこぶしを突き上げた。


次点の広田さん 経験生かして頑張る

田村さんの勝利を伝えるテレビ中継を硬い表情で見入る広田さんと橋本知事(29日午後10時半すぎ、高知市南はりまや町1丁目)  橋本大二郎県知事と二人三脚で挑んだ無所属の広田一さん(32)は、総力態勢で受けて立った自民党の壁にはね返された。

 上げ潮ムードで追い込んだ二人。この夜は高知市南はりまや町一丁目の事務所の最前列に並んで座り、午後八時半ごろから開票速報に見入った。しかし票は思うように伸びない。事務所が沈痛な空気に包まれる中、二人は顔を時折見合わせてかすかに談笑するなど、重苦しさを振り払うようなしぐさ。

 田村さんの勝利を伝えるテレビ中継画面が流れ始めた午後十時半ごろ、橋本知事は凍りついたような険しい表情。やがて敗戦を受け入れたように、隣の広田さんに耳打ちした。

 「駄目でしたね…」「はい、どうも」。広田さんは笑顔で会釈した。

 広田さんは自ら立ち、はきはきと敗戦の弁。「自分の信念、理念は訴え続けたが浸透し切れなかった。でも、三十二歳の青年がこういった行動を起こすことを県民は理解してくれるはずです」と語り、「皆さんのおかげで精いっぱい戦うことができた。この経験を生かして頑張っていきます」。深々と頭を下げると、長い長い拍手がわいた。

 信任、不信任判断せず 橋本知事表情硬く

 広田さんを積極支援した橋本大二郎知事は、広田さんの事務所で田村さんの当確を伝えるテレビに見入った。「私への信任投票だと思ってほしい」とまで言って広田さんへの支持を呼び掛けただけに、敗戦の現実に表情は硬い。

 「素晴らしい人材なので通したかった」と漏らしながら、「いい戦いができたと思う」「(田村さんとは)僕は仲良くやれる」「信任投票は、自分の思いを印象付けようとした発言」など強気の言葉も続いた。

 橋本知事は広田さんの出陣式からマイクを握って支持を訴えた。広田さんにとって、知事の支援は最大の武器。半面、知事にとっては県議会の過半数を握る自民党に対して公然と弓を引く形となった。しかも「信任投票」という言葉まで使って広田さんの当選に力を入れた。

 当然、選挙後の「しこり」が懸念されるが、知事は「(自民党の方が対応することであり)こちらからどうこうすることはない」との姿勢。淡々とした口調で「不安感はない」とも。信任発言については、「これで(信任不信任を)判断するのは逆に県民に失礼だ」と述べた。

 【写真】田村さんの勝利を伝えるテレビ中継を硬い表情で見入る広田さんと橋本知事(29日午後10時半すぎ、高知市南はりまや町1丁目)


参院県選挙区 中村さん・中根さん・前田さんの声

 中村さん 「走り続ける」

 「私はあきらめません。市民の代表として走り続けます」。子育てと教育の充実、そして「利権にまみれた政治家を変えたい」と訴え続けてきた民主党の中村久美さん(41)。分厚い保守の壁は崩せなかったが、さわやかに再出発を誓った。

 高知市城見町の事務所では、数十人の支持者らが開票速報を見守った。じわじわ得票差が広がる展開に、聞こえるのはため息ばかり。田村さんの当確が報じられても事務所内は静まり返ったままだった。

 事務所前に姿を見せた中村さんは、少し目をうるませながら「市民の声を届けられなかった。無念です」とまず一言。支持者を見つめ「でも正しいものは最後には勝つ。もう少し子育ての時間をいただいた。充電して走り続けます。まだバトンは持っている。必ず届けてみせます」ときっぱり。「また頑張ろう」と声を掛ける支持者一人一人と握手。女性スタッフと抱き合って労をねぎらった。

 中根さん 笑顔で再起誓う

 「暮らしと平和を守り抜く」と、「自共対決」を前面に掲げて戦った共産党の中根佐知さん(45)。しかし得票数は伸びず、笑顔で政策を訴え続けたひたむきさは実らなかった。

 高知市上町二丁目の事務所には山原健二郎前衆院議員、西岡瑠璃子元参院議員ら約三十人がテレビの開票速報を見守った。だが上位二人の争いにはじき飛ばされた形で得票差は開く一方。田村さんの当確が伝わると、事務所は重苦しいムードに。

 ほどなく現れた中根さんはねぎらいの拍手に持ち前の笑顔を取り戻し、「残念な結果に終わったが、『小泉改革』による痛みを最小限にできるよう今後も戦いの先頭に立たせていただきたい」と再起を誓った。

 浦田宣昭党県委員長は「多くの人に好感を持ってもらえる抜群の候補者で、手ごたえはあったが…。気の毒な結果になり申し訳ない」と話していた。

 前田さん 「政策には理解」

 現役医師である自由連合の前田清貴さん(48)は、手術のため千葉県に戻っており不在。高知市和泉町の事務所ではスタッフ二人がテレビで開票を見守った。

 「正しい政策に共感してくれる人はいるはず」と言い続けた前田さんだが、知名度の低さをばん回することはできなかった。落選が決まった後、陣営幹部を通し「政策についてはある程度理解していただいたと思う」とコメントした。


高知市で投票用紙交付ミス 75人分無効に

 参院選投票日の二十九日、高知市内の投票所で、県選挙区と比例代表選挙の投票用紙を間違えて有権者に手渡すミスがあり、七十五人分の投票が無効になった。基本的な点検作業を怠った単純なミスで、同市選管の責任が問われそうだ。

 市選管によると、交付ミスがあったのは南宝永町の常盤保育所投票所。二十九日朝、投票用紙の枚数を確認した後、県選挙区と比例代表選挙の投票用紙の置き場所を間違えた。受け付け開始の午前七時から四十五分間、七十五人に異なる投票用紙を手渡し、有権者の指摘で初めてミスに気付いたという。

 投票用紙は色分け(県選挙区=黄色、比例=白)し、用紙にも「県選出議員選挙」「比例代表選挙」と記載されている。交付は県選挙区、比例とも各二人が担当していた。

 ミスに気付いたのは、高知新聞高見販売所長の高見忠志さん(58)。高見さんは「県選挙区の候補者名を書く直前に、投票用紙が比例代表用であることに気付いた。開票前なので、それまでの投票を有効にできないかと思い、投票所の責任者に指摘したが、『無効だ』と言うだけ。対応に腹が立った」と話していた。

 公選法の規定などにより、投票用紙を取り違えた場合はすべて無効になる。市選管は「投票者の特定は物理的にはできないことはないが、投票の守秘義務から、その作業はできない」としている。

 記者会見した市選管の山岡敏明委員長は「基本的な点検を怠ったあってはならないミスであり、心からおわびする。せっかく投票していただいたのに申し訳ない。再発防止へ最善の努力をする」と陳謝した。

 市選管は「混乱を招く」として、投票が終了する午後八時までミスのあった投票所名を明らかにしなかった。


県選挙区 投票率58.39% 予想外に伸びず

 県選管がまとめた第十九回参院選の投票率は、高知県選挙区が58.39%。史上最低だった前々回七年(50.64%)や、史上三番目に低かった前回十年(56.21%)よりも高かったが、事前の予想に反し、前回をわずか2.18ポイント上回るにとどまった。前々回以来六年ぶりに全国平均は上回った。

 今回は、「小泉旋風」による政治的関心の高まりに伴い、県内でも60%を超える投票率が予想されていた。不在者投票数は前回の一・八倍に上ったものの、投票日当日の投票行動には予想したほど反映されなかった格好だ。

 投票日当日は好天に恵まれたが有権者の出足は鈍く、県全体の推定投票率は前回を1ポイント余り上回る程度で推移。午後六時には前回を2.65ポイント上回る45.84%となり、投票率の伸びが期待されたが、午後七時半には逆に前回より0.46ポイント低くなった。

 一方、有権者の四割近くが集中する高知市は午前中、前回を下回るペース。午前十一時半にようやく0.17ポイント上回り、最終的には前回の48.11%より2.92ポイント高い51.03%にとどまった。

 県選管の稲毛稔憲書記長(県市町村振興課長)は、「夕方までの出足から60%を超えることを期待したが、涼しくなった午後六時以降に予想外に伸びず、残念だ。前回比で二倍近く増えた不在者投票に何とか押し上げてもらった形だ」と話している。

 市町村別で最も高かったのは三原村の84.72%。最低は高知市だった。

 当日有権者数は、県選挙区で六十六万二千五百八十六人(男三十万七千三百七十六人、女三十五万五千二百十人)。


不在者投票 前回の1.8倍 7市1町で1000人超す

 高知県選挙区の不在者投票数は四万一千票を超え、十年の前回参院選の一・八倍になったことが二十九日、高知新聞社の集計で分かった。このうち選管事務局などで直接投票した人は約三万五千人に上り、十四市町村で前回の二倍以上になった。前回から導入された要件緩和が定着してきたとみられる。

 二十八日午後八時時点の県選挙区での不在者投票者は四万一千六百四十九人(前回は二万三千九十三人)。県選管が発表した県内の当日有権者数六十六万二千五百八十六人の6.3%に当たる。

 集計には十二日到着分の郵便投票が含まれていないが、直接投票した人は三万五千二百七十六人で、前回より一万八千六百四十七人増と、ほぼ倍増した。

 市町村別では、高知市が一万六千九百三人(前回比九千百三十人増)、中村市二千十五人(同八百十八人増)などが多く、室戸、南国、土佐、宿毛、土佐清水の各市と吾川郡伊野町でも一千人を超えている。

 直接投票でみると、前回と比べて増加率が最も高いのは、幡多郡大月町と吾川郡春野町の二・六六倍(前回の資料が不明の安芸郡馬路村など二町三村を除く)。県内有権者の四割近くが集中する高知市も二・五三倍に上った。

 不在者投票が最も多かった日は二十七市町村で二十八日、十八市町村で二十七日と最終盤に集中。高知市では二十八日に一千六百八十人が直接投票に出向いている。




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