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知事全面関与に余震
「選挙戦があと一週間、いや三日間あれば…。でも見ていてよ。絶対にひっくり返してやるから」
七月二十五日夕、猛暑の須崎市。広田一氏(32)の街頭演説を見守りながら、大学時代の友人で岩手県議の及川敦氏はしたたる汗をぬぐった。選挙戦終盤、陣営のだれもが肌で感じた追撃の手ごたえ。しかし一方では、常に「出遅れ」を意識せざるを得ない戦いだった。
最大の誤算は、自民党公認の田村公平氏(54)がうまく取り込んだ小泉旋風。それだけでなく、広田陣営には不利な条件がそろった前哨戦になった。
四月二日に出馬表明、自民党県議を辞職し、離党した広田氏は、選挙区の土佐清水市にしか支援組織を持たない。橋本大二郎知事が確約した「全面支援」は戦いの最低条件。知事の県政報告会に同行してのあいさつ回りが始まった。
しかし五月十日、県のやみ融資事件で山本卓・元副知事らが逮捕され、動きが止まる。自らの進退問題に揺れる知事。橋本後援会は、続投要請の署名集めに奔走した。
一方の広田氏は、他の党公認候補のように政党演説会名目の事前ポスターで顔を売れない「無所属の悲哀」も味わった。
知事の本格支援の再開は、六月県議会が閉会した七月五日までずれ込んだ。広田後援会の黒岩直良事務局長は、「結局、短期決戦になってしまった」と振り返る。
実質的な「出遅れ」は、頼みの「草の根」への浸透度にも響いた。橋本後援会の中心人物、高橋次郎氏は「支持者の多くは当初、広田氏の顔も知らない状態だった。また、大二郎選挙以外の政治活動は初めてと言っていい。その抵抗感もあったようだ」と説明する。
「終盤になってやっと候補の人物と知事の『本気』が浸透した。『草の根』に勝手連的な動きも出たぐらいだ」(陣営幹部)。また最終盤は、昨年の衆院選高知1区での自公協力決裂をめぐり田村氏に反発する公明党・創価学会も「実質支援」の動きを見せた。しかし、時すでに遅かった。
黒岩事務局長は「国政初挑戦で、十一万二千人余りの有権者に名前を書いてもらった実績は貴重だ。必ず今後に生きてくる」と広田氏の善戦に意義を見いだす。
「今後もあり得る」
選挙戦のけん騒が消えた今、「広田猛追」の原動力になった橋本知事の積極関与が、あらためて県内政界に波紋を広げつつある。
橋本知事は、一昨年の知事選で知事夫妻を激しく“口撃”した田村氏に憤る支持者の動きを踏まえ、早くから「対立する無所属候補の支援」を公言。選挙戦では「自分の信任投票のつもりで」と繰り返し、個人演説会への登壇や選挙カーへの同乗、自らの電話攻勢など、前に出続けた。
こうした知事の行動に対し、県内各党は「既成政党を全部敵に回す。県益につながらない行為だ」(土森正典・自民党県連幹事長)、「知事は特定の団体や候補者の支援をしないと県議会でも答弁したはずだ」(川添義明・民主党県連副代表)と批判を強める。
これに対し、橋本知事は「小泉改革に地方の意見を言えるのは、政党の事情に縛られない広田さんをおいていなかった。県民のプラスになることには、自分は取り組む」「構造改革を言うなら、業界団体や労組の締め付けで行われる国政選挙の在り方も見つめ直すべきだ」と反論する。
「(国政選挙への関与は)今後もあり得ないことではない」とする知事に、県内の既成政党はどう対応するのか。余震は続く。
【写真】出陣式を前に談笑する広田氏と橋本知事。知事の「全面支援」が波紋を広げている(7月12日、高知市南はりまや町1丁目)
(参院選取材班)
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