|
「失われた十年」を経て、いまだに光明を見いだせない日本経済。ことし一−三月期の国内総生産(GDP)は再びマイナス成長になった。
「景気回復、経済安定策を最優先に願いたい」(県東部、五十代の管理職)、「私たち労働者の汗と涙が報われる日本にしてほしい」(県中西部、五十代の事務・技術職)。生活への不安、描けない将来、社会を覆うどんよりとした空気…。緊急県民世論調査では昨年の衆院選前調査と同様、争点にすべき課題として「景気対策」がトップとなり、他を大きく引き離している。
「経営者マインドは底ばい」。今月二日に発表された日銀の企業短期経済観測調査(短観)で、日銀高知支店は県内景況を示す数字にこう解説を加えた。県内企業の最大公約数は「身を縮めてじっと我慢。前へ進む元気はない」とも表現した。
日銀の調査などでは、県内企業の十三年度計画は、売り上げは横ばいながら、リストラ効果もあって経常利益は前年度より二割強の増益を見込む。しかし資金繰りの厳しさもあって、設備投資は前年度を四割近く下回る。また個人消費は低迷域を脱せず、依存度が高い公共投資も減少傾向にあり、「聖域なき構造改革」で今後の大幅な伸びも期待できない。最終需要は縮小の道を進んでいる。
雇用面でも、有効求人倍率は昨年秋ごろの量販店出店ラッシュなどで一時的に改善したが、再び低下。全国平均が〇・六台で推移する中、本県は〇・四九(五月時点)。求職者百人に対して求人は四十九人という状態だ。
個人消費に変調
このような厳しい状況の中で、日銀高知支店が最近特に着目するのは消費マインドの一段の冷え込み。それを消費者物価指数でみると、十二年の高知市は季節変動の大きい生鮮食品を除く総合が前年より0.2%下落。この三十年間では、昭和四十七年以来初めて低下に転じた。
その主要因は「被服・履物」「家具・家事用品」などの下落。被服・履物をみると、例年四、五、六月と十一、十二月をピークに全体では右肩上がりできていたが、十一年度は横ばい、十二年は低下に転じている。消費支出に占める教養娯楽費の支出も落ち込んでいる。携帯電話の料金など支出行動の変化も影響するが、「洋服はもう一年着ようというように、すぐに削れる出費は削ろうとする動きが見られる」と指摘する。
もちろん、大型量販店などの出店に伴う競争激化、価格競争が消費者物価を引き下げるという供給サイドの変化の影響も大きい。ただ、本県の実体経済や雇用・所得環境の悪化は、全国ベースも回復感に乏しいとはいえ、さらなる悪化の危険をはらんでいる。個人消費はGDPや県内総生産(総支出)の六割を占め、その動向は景気に大きく影響する。本県経済は剣が峰に差し掛かっているとも言える。
ただ、明るい材料がないわけではない。日銀の佐々木俊彦高知支店長は「優秀なベンチャー企業は間違いなく育っている」と話す。そして将来の優良企業が育つように、支援態勢を固める時期だと繰り返し強調する。ベンチャーはすぐに花開くものではない。それを補うために、観光資源の発掘など「今できること」にも力を入れるべきだと訴える。
政府は不良債権処理など構造改革に伴う「痛み」、失業率の増加への覚悟を求めている。本県は公共依存が強いだけに、県経済も「しばらくは我慢の時期」という見方は多い。この時期の乗り切り方は、その後の本県の在り方にも大きく影響しかねない。
(参院選取材班)
【写真】県内総生産の6割を占める個人消費。この動きに変調もみられる(高知市帯屋町2丁目)
|