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 横山隆一記念まんが館で2010年に開催された「西原理恵子博覧会 バラハク」から、主な作品などを紹介します。

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※著作権は、基本的に作者に帰属します。無断掲載を禁止します

(文)森田歳三=横山隆一記念まんが館職員

ちくろ幼稚園(1988〜94年) 毒と叙情の二面性

 小学館「ヤングサンデー」で連載された西原理恵子のメジャーデビュー作品。幼稚園児りえちゃん、おにいちゃん、おとうとくんなど、作家自身の幼少期をネタ元にした4コマまんがコメディーだ。
 純真無垢(むく)で幼いりえちゃんが起こすサディスティックな行動が、りえちゃんに好意を寄せる中川くんとおとうとくんを翻弄(ほんろう)する。悪意と残酷さが盛りだくさんのいたずらの中で、忘れたころにほんのちょっとだけ現れる、叙情たっぷりな本音のシーンが心を深く射る。
 毒と叙情の二面性を持った西原作品の特徴はこのころからすでにはじまっていた。

鳥頭紀行シリーズ(1994〜97年) 辺境で体当たりの旅

 辺境の地で西原理恵子が旅をする実話体験紀行シリーズ。掲載誌が次々と廃刊になり、さまざまな雑誌を渡り歩いた作品であることでもよく知られている。
 作品名は「鶏は三歩歩くと物を忘れる」の言葉から。西原が子ども時代に母親から「あんたは『とりあたま』だ」と言われたことから付けられた。
 ちなみに「とりあたま」は西原のプロダクションの名前にも使用されている。
 「無頼派」とも呼ばれる西原の破天荒な体当たり作品の一つで、タイ、ベトナム、ミャンマーなどを旅しており、「アマゾン編」では後に夫となる戦場カメラマンの鴨志田穣氏と出会っている。

ぼくんち(1995〜98年) うそくささのない哀しさ

 小学館「ビッグコミックスピリッツ」に連載され、1997年には第43回文芸春秋漫画賞を受賞した。舞台は西原理恵子が幼少期を過ごした高知市浦戸がモデル。母子家庭の兄弟である一太と二太、姉のかの子の生活を描く。2003年には阪本順治監督で映画化された。
 住民の多くが貧しい生活をしている海と山しかない田舎町。この地でどうしようもない現実を突き付けられながらも、底抜けに明るく生きる人々に真正面から向き合い、前向きにとらえている。
 西原作品の大きな特徴の一つである、うそくささのない哀(かな)しさがよく表れている作品だ。

できるかなシリーズ(1996年〜) なんでもやってみる

 西原理恵子自身が、いろんな企画にチャレンジし、その体験を基に漫画を描く。とにかくなんでも「やってみる」ことがコンセプトの体当たりルポ作品。扶桑社「週刊SPA!」で不定期連載。
 気球に乗ったり、富士山に登ったりする平和な企画もあるが、危ない企画の方が真骨頂だ。銀座のキャバレーで真正面から面接を受けてホステスとして働く「ホステスできるかな」や、税務署とのやりとりをリアルに描いた「脱税できるかな」など、さまざまな企画を漫画にしている。
 西原作品の説得力は「考えたこと」ではなく「身に付けたこと」を語るところにある。

毎日かあさん(2002年〜) “ほのぼの”だけでなく

 毎日新聞日曜版の生活家庭面で連載中。西原家の実際のエピソードを基に、「母親」の視点で日常生活や子育ての奮闘を描く家族絵巻。元夫・鴨志田穣氏との離婚やアルコール依存症の闘病生活も赤裸々につづるなど、ほかのファミリー漫画にあるようなほのぼの≠セけではないリアルさが人気だ。
 2004年には文化庁メディア芸術祭賞マンガ部門優秀賞、05年には手塚治虫文化賞短編マンガ部門を受賞した。09年にテレビアニメ化され、現在テレビ東京系列で放送中。
 息子さんと娘さんが、自身の成長記を漫画作品として見られることが、ただただうらやましい。

パーマネント野ばら(2004〜06年) 安っぽい恋愛観はなし

 新潮社「新潮45」に連載された。離婚後、娘を連れて故郷に戻ったなおこと、実家が営む美容室に集まる人々の切ない恋の物語だ。
 「ぼくんち」を思い出させるような漁師町に暮らす女性たちが織りなす、男に裏切られながらも、笑って底抜けに明るく生きるリアルな人生観を描く。これまでにはない大人の視点で描かれた作品。恋≠ェテーマだが、安っぽくうそくさい恋愛観は一切感じられないところがやはり西原作品らしい。
 ことし5月には映画公開され、宿毛市の栄喜地区を中心に全面県内ロケを行ったことでも大きな話題となった。

いけちゃんとぼく(2004〜06年) 息子の落書きをもとに

 文芸雑誌「野生時代」に「ぼくのわたしのまえのこと」の題名で連載された作品(連載中は漫画として扱われた)。2006年に新たに絵本として出版され、テレビ番組で「絶対泣ける本」第1位に選ばれ大反響を呼んだ。
 不思議な生き物「いけちゃん」とぼくの心の交流を描いた物語。いけちゃんのキャラクターは、西原理恵子の長男がランドセルの背中に描いた落書きがもととなっている(バラハクでは実際のランドセルの写真も展示している)。
 09年に大岡俊彦監督で映画化され、西原の出身地、高知市浦戸でもロケが行われた。

上京ものがたり(2004年) 若き日の自身を投影

 小学館「ビッグコミックスペリオール」に連載された。漫画家を目指すために上京した女の子、なつみの生活を描く自伝的叙情派作品。その後描かれた「女の子ものがたり」「営業ものがたり」と合わせて3部作となっている。
 ミニスカパブなどで働きながら、成人雑誌のカット描きをし、漫画家を目指して日々奮闘していたころの西原理恵子自身を投影している。彼女の著書で実話として登場したエピソードも多い。
 1話1ページの構成。主人公なつみの一人称の視点で語られているので、会話は吹き出しをほとんど使わずに表現していることが大きな特徴だ。

女の子ものがたり(2005年) 真実を描くこだわり

 「上京ものがたり」の続編に当たり、「ものがたり」シリーズ3部作の第2作。小学館「ビッグコミックスペリオール」に連載された。前作の主人公なつみの少女時代のストーリーだ。
 貧しい田舎町で閉塞(へいそく)感を抱えながら成長していく女の子たちの、決して楽しいとはいえないエピソードが数々披露される。一生懸命生きるだけではどうしようもない現実がそこにあることを真正面から描き切った。
 美しい友情という単純なものではなく、当たり前のようにある差別や、やるせない友人関係も包み隠していない。真実を描くことへの強いこだわりが感じられる。

メイルアート展作品(1995〜2004年) 故郷高知へ深い愛情

 権威に毒づき、なりふり構わず笑いを求める現在の西原理恵子像ができるまでには、やはり高知県人のDNAが少なからず影響していることは間違いない。
 東京など各地を巡回した「バラハク」。西原の地元、高知で開催するに当たって、西原のルーツを探る地元だけの特別展「高知の西原理恵子」を併設した。そこでは西原が上京前に通い学んだ造形教室主催の展覧会(メイルアート展など)に、10年間寄せ続けた小作品など17点を展示している。
 紹介するのはそのうちの一つ。昨今の坂本龍馬ブームに一石を投じるような皮肉たっぷりの言葉の裏には、どことなく高知への深い愛情が感じられる。

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