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【園芸便走る】(中)
明石大橋がメーンに
明石海峡大橋がぐんぐんと近づいてきた。ライトアップされた二本の主塔が夜空に白く浮かび上がる。園芸作物を満載した四国運輸(高知市布師田、小川雅弘社長)のトラックは、橋を目指して暗い高速道を滑るように走り続ける。
「橋の夜景はなかなかのもんやろう。走りながらはなかなか見れんけんどねえ」
運転手の北添正広さん(51)が橋の方に一瞬顔を向けた。主塔をつなぐケーブルに施されたイルミネーションが輝く。
イルミネーションの点灯は日没から午後十一時まで。二十八種類の照明パターンがあり、三十分ごとに色が基本色からにじ色に変化する。基本色は季節ごとに変わる。夏場の基本色はパールブルー(青色がかった白)。トラックの渡橋を迎えるように美しい光を放っている。
「初めての人は大抵見とれると思う。私はもう何度も渡ったけど」
北添さんは開通日の四月五日には大阪にいた。その日の夕方、高知へ帰る便の担当で、開通直後の明石海峡大橋を渡った。それから大阪方面の仕事の際には頻繁に利用するようになった。
■運行原価が安い
これまで、四国運輸は瀬戸大橋ルートが関西方面への輸送のメーンだった。それが、明石海峡大橋の開通でルートを大幅に変えた。現在、名古屋・大阪方面のメーンは明石ルートになっている。ルート変更の理由は「運行原価が心持ち安いから」(同社総務部)。なぜ安いのか。それは、トラックの走行距離が関係してくる。
行き先によって多少違うが、明石ルートの方が瀬戸大橋ルートよりもやや走行距離が短い。同社の場合、運転手の給与計算に走行距離が加味されるので、距離が短いと人件費が少なくて済む。また、トラックの燃料となる軽油の消費量も減る。
それに、瀬戸大橋ルートは全線が高速道だが、明石ルートはまだ高速道がつながっていない。現段階では高速道を利用しない分、輸送費が安いわけだ。
ただ、大阪方面への輸送がすべて明石ルートに変わったかというとそうではない。本社ターミナルでの出発時間によって違ってくる。
ターミナルへの荷物の集まり具合が悪く、出発時間が午後七時を過ぎたり、降ろし先が混雑する市場の際には、瀬戸大橋を通る場合が多い。瀬戸大橋ルートは全線高速道なので、明石よりも一時間ほど早く目的地に着けるからだ。荷物の集荷状況に応じて瀬戸大橋と明石海峡大橋を上手に使い分けているわけだ。
■「瀬戸大橋の方が…」
「運転手の立場でどっちがえいか言うたら、瀬戸大橋ルートの方が走りやすいねえ。明石ルートは鳴門まで一般道だから、何が飛び出してくるか分からん。やっぱり気を使う」
北添さんがつぶやいた。
トラックは明石海峡大橋を渡り始めた。通行量はそれほど多くない。対向車と時折擦れ違うぐらい。前方には車はあまり見えない。
眼前にそびえ立つ高さ約三百メートルの巨大な主塔を二回くぐり抜けると、ほどなく明石市内に入った。橋の上にいる時間は五分前後。あっという間だ。
トラックは阪神高速道の神戸線に乗った。車窓から見える景色は林立するビル街に急変する。最初の目的地、尼崎中央青果(尼崎市潮江)に到着したのは午後十一時を過ぎていた。
「さあ、これからが本番」
北添さんはダッシュボードの上に置いてあった伝票類を手に取り、さっと車から降りた。蛍光灯に照らし出された深夜の市場には、全国各地から集まってきた園芸作物が山のように積まれていた。
【写真】イルミネーションを輝かせ、暗やみに浮かび上がる明石海峡大橋(淡路島側から望む)
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