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【3橋時代】
中・四国橋の役割へ
瀬戸大橋の保守点検を担当する本四公団坂出管理事務所の技術者は「瀬戸大橋は“生きた実験橋”だ」と言う。建設当時、世界初の最先端技術を集大成させた長大橋。想定外だったこともこの十年間でいろいろ分かり、地道な点検作業の蓄積が明石海峡大橋に生かされた。
四国と本州が初めて“陸続き”になったという意味では、瀬戸大橋の十年は壮大な社会的実験でもあった。岡山県では平成六年五月に「本四3橋岡山県影響調査」をまとめ、さまざな施策に活用。「民」側では香川大経済学部の井原健雄教授が昨年末、架橋効果による土地資産価値の変化に着目した研究をまとめた。しかし、四国の自治体には、この社会的実験を検証し、3橋時代に生かそうとする動きが乏しい。
■期待と現実の差
「橋への期待は大きかったが、実際はそうでもなかった――瀬戸大橋をめぐる地元の論議には、そんな現実への失望感を感じる」。そう話すのは日本開発銀行高松支店の広田泰孝・企画調査課長。「橋をどう使ったら四国の産業をステップアップできるか、新しい産業につなげるかという戦略が聞こえてこない」と続ける。
「四国の製造業は素材型が中心。モノを従来のままで四国外へ出すには橋の通行料がハンディとなって苦しい。通行料コストを吸収できる付加価値が必要だ」。また「定時性を問われる産業の集積が乏しい」とも指摘する。「部品供給にしても例えば、『うちはジャストインタイムの部品供給ができるから』と受注を取るといった動きが少ないのでは…。部品の供給を受ける組立工場などの川下側はどこも在庫を持たないようにしているから、橋を使った定時性はうまく生かせる」。広田課長は開通十年をきっかけに論議の高まりを期待する。
■唯一の鉄道併用橋
五日に明石海峡大橋が開通し、既に2橋時代がスタートした。明石の背後には京阪神という巨大市場。人、モノの流れが大きく変わることも予想される。そんな状況に危機感を強めているのがJR四国。三月に運輸省へ認可申請した十年度事業計画で、明石海峡大橋開通による影響として鉄道収入約十億円の減収を見込んだ。
同社総合企画本部長の隠樹史朗常務は「瀬戸大橋線経由で岡山を往来する旅客数が年間約六十二万人程度減ると予想し、これを八年度実績の乗車区間を勘案して減収額を試算した。経営に与える影響は大きい」。同社は徳島−阪神間の高速バス運行に参入するなど増収策に懸命だ。
3橋の中で瀬戸大橋は唯一の鉄道併用橋。この優位性を最大限引き出す施策は四国全体の課題でもあり、現在、JR四国、JR西日本と岡山県、四国四県が岡山側の宇野線複線化を目指している。
同線は四国各県からの特急列車や高松−岡山間の快速列車が一日百三十六本集中する重要幹線だが、岡山−茶屋町間が今も単線だ。特急列車の増発や利便性の高いダイヤへの大きな障害。各県の足並みをそろえた取り組みが必要なだけに、中・四国連携の試金石になりそうだ。
◇ ◇
交通量予測の失敗、物流を大きく変えたインパクト、瀬戸大橋はさまざまな分野で光と影を描いた。3橋時代を迎え、その役割を「本四架橋」から「中・四国架橋」へと移そうとしている今、十年の教訓をどう生かすか、切実に問われている。
(第3部おわり)
(経済部・松島 健)
【写真】四国と本州を初めて“陸続き”にした瀬戸大橋。3橋時代を迎え、その役割は「中・四国橋」へ(与島付近から岡山側を望む)
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