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第3部 瀬戸大橋10年<7>
【四国観光】

ブーム去ってみれば

 瀬戸大橋開通が四国観光にもたらしたインパクトは大きかった。昭和六十三年の県外入り込み客数は、四国全体で前年比四〇・八%増の二千八百三十二万三千人。中でも香川県は前年の二倍強の一千三十五万一千人。特に架橋地に近い坂出、丸亀、琴平などの中讃地域は三・四倍に急増する大橋ブームに沸き返った。

 空前の県外客を迎えた当時の騒動は、今も旅行業関係者の間で語り草になっている。「うどん一杯八百円とか、とんでもない値段の“ぼったくり商売”があって、県議会で問題になった」。「旅館ではダブルブッキング(二重予約)がかなり出た」。「どこも宿泊施設はてんてこ舞いの忙しさ。接客サービスの悪さでお客の苦情が多かった」

 しかし、大橋ブームはすぐに去った。翌平成元年の入り込み客は前年比七・九%減の二千六百八万九千人に落ち、以後平成四年を除いて毎年減少した。本県のピークは、高知自動車道と瀬戸大橋が直結した平成四年に訪れるなど四県別の動向に多少の違いがあるが、四国全体ではこの十年間でほぼ架橋以前の水準に逆戻り。大橋効果は失速した。

 この原因を、関係者の多くは平成五年の冷夏長雨、六年夏の渇水、七年の阪神大震災とマイナス要因が続いたことで説明するのだが…。

 ■ラストチャンス

 「根本的な要因は受け入れ態勢が十分に整っていなかったことだろうが、“ぼったくり商売”のようなことが四国のイメージを非常に悪くした。観光客だけでなく、旅行エージェントにまでそういうイメージを与え、リピーター(再訪者)の獲得に失敗した。今の不振は、瀬戸大橋ブームの対応ミスから来ているのではないか」

 前四国運輸局企画部長の長谷部正道さんは、あえて直言する。長谷部さんは同局在任中、四国観光の活性化に向けたプラン策定にかかわり、農水省へ出向(水産庁水産流通課水産貿易調整官)した今も、四国の関係者から何かと頼られている。幡多郡大方町のホエールウオッチングや嶺北のグリーンツーリズムなどへの提言も多く、「高知には多くの思い入れがある」

 長谷部さんは「高知が他の三県と比較して落ち込みが少ないのは、四万十川の体験型観光やホエールウオッチングのような新しい観光資源に積極的に取り組んでいることが大きい。一般企業がそうであるように新製品の開発、PRは大切です」。そして、瀬戸大橋ブームの教訓をサービス産業の基本である「接客」に求め、「明石海峡大橋、尾道−今治ルートが完成する平成十、十一年が四国観光の正念場。また同じ失敗を繰り返せば、立ち直るのはもう難しい。今度がラストチャンスです」

 ■新しい観光の担い手

 日曜日の夕方の高知自動車道。土佐の海、山、川で自然を満喫したアウトドア派の県外客が香川、岡山へと家路を急ぐ。そんな中の一人、青木進一さん(27)=岡山市奉還町、会社員=は昨年春から土佐郡本川村の吉野川源流域でフライフィッシングを楽しんでいる。

 「本当に川がきれいで、『清流』という表現がぴったり。香川や大阪から本川村に通い詰めている釣り仲間もいますよ。僕が行っている川は、変に“観光ずれ”して川や自然が荒れないように地元が釣り客を一日十五人までに制限している。僕はこういう管理は大いに賛成です」

 観光の「新製品」には、それにふさわしい価値観を持った「ユーザー」が深く、静かに増えている。

 【写真】多くの人出でにぎわう高知市の日曜市。瀬戸大橋や明石海峡大橋の開通以後、本州からの県外客が増えている(高知市追手筋2丁目)


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