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第2部 「県是」の歩み<10>
【地元負担】

「錦の御旗」いつまで

 本四架橋は国家的事業であると同時に、地域的に限定された事業でもある。このため関係自治体は本州四国連絡橋公団への出資金のほか、同公団が関係自治体の地元金融機関から借り入れる縁故債のあっせんを行っている。

 本四3ルートの関係八府県二市の出資割合は、昭和四十八年に自治省の調停で決まった。神戸−鳴門ルート(本四公団設立を機に呼称を統一)の場合、兵庫県三六・五%、神戸市二二・二%、徳島県二〇・〇%。架橋地ではない高知県は大阪府、大阪市と同じ八・〇%。ただし本県は児島−坂出ルートにも関係があるとして、三分の一相当の二・七%を同ルートに回している。

 その高知県が一度だけ、当初予算案で出資金(一億八千四百八万円)の計上を見送ったことがある。六十一年のことだ。

 「県是」に沿った運動の末、新幹線規格の鉄道併用橋で着工された大鳴門橋は前年の六月に完成していた。しかし、肝心の明石海峡大橋は事実上、道路単独橋への変更が決まっていた。

 鉄道併用を「県是」とする本県は、海底トンネルによる鉄道敷設に望みを託すしかない。しかし六十年秋とみられていた鉄道トンネル調査の中間報告が行われないまま、明石海峡大橋の起工式(六十一年四月)を迎えようとしていた。

 六十一年の高知県議会二月定例会で、知事の中内力は「神戸−鳴門ルートが鉄道で本州と結ばれないのなら、出資金は計上しない」と明言した。

 「本県が出資する根拠は、鉄道による本土との直結にあった。しかし鉄道トンネルの行方は霧の中。高知は単に乗せられているだけではないか、という疑念があった」

 当時、担当の企画部長だった山本卓(72)=現副知事=は出資金の計上を見送った理由をこう説明する。

 ■出資の根拠は

 六月中旬、出資金計上を見送った本県に対し、日本鉄道建設公団が「五十八年度から行っているトンネル調査は運輸相の指示に基づくもので、六十年八月の建設、運輸、国土の三閣僚による『本州・淡路島間の鉄道計画は別途検討する』との合意事項に含まれている」と説明。

 県はこれをもって「本州と四国を鉄道で結ぶ基本は変わっていないことが確認された」として、九月補正で出資金を計上した。

 あれから十二年。鉄道トンネルの調査結果はいまだに明らかではない。それでも県は「『県是』は生きている」と言う。いや、そう言わざるを得ない。「県是」が否定されれば、出資金を出す根拠がなくなるからだ。

 「これからは道路の時代だよ」。元県出納長の大町行治は三十六年前の吉田茂の言葉を思い起こし、「果たして鉄道にこだわり続けてよかったのか」と自問する。

 そもそも本県が望む鉄道の本州直結は、四国循環鉄道が前提だったはず。仮に将来、紀淡海峡にトンネルか橋ができるとして、県は四国山地の北側を通り抜ける四国新幹線を「県是」として出資を続けるのか。

 戦後の高知県政は、鉄道を地域開発の基本に据えてきた。その流れは阿佐線となって受け継がれている。しかし時代の変化にかかわらず、一度決めたら変えることなく、「県是」を「錦の御旗」のように掲げるなら、歴史から学び取る教訓は何もない。

 事の始まりは昭和三十三年に県議会が可決した一件の決議。四十年前のこととはいえ、いまや県議会でこの問題が議論されることもない。

 神戸−鳴門、児島−坂出両ルートへの本県の出資金は、昭和四十八年度から平成二十三年度まで続き、総額は本四公団の試算で百八十三億一千万円。十年度の出資金十一億四千二百万円を織り込んだ県の当初予算案は、三月二日開会予定の県議会で審議される。

                                   (文中敬称略)

                                 (第2部おわり)

                                (政治部・中平雅彦)

 【写真】4月5日、道路単独橋で開通する明石海峡大橋。開通を前にしていま一度、県是の意味を考える必要があろう


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