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第2部 「県是」の歩み<8>
【計画変更】

「道路単独」に猛反発

 「架橋に殉じた建設相」と惜しまれた仮谷忠男の死から半年後の昭和五十一年七月。鳴門の渦潮を見渡す観光名所・千畳敷で大鳴門橋の起工式が行われた。

 四十八年十一月、運輸省は四国横断新幹線(岡山−高知間、百五十キロ)や四国新幹線(大阪−四国−大分=四百八十キロ)など十二路線を基本計画に決定。大鳴門橋には、大阪から四国山地の北側を抜けて九州に至る四国新幹線が走る計画になっていた。

 しかし国鉄の巨額の累積債務が問題になる中、新たな難題が持ち上がった。

 五十三年三月二十八日、参院建設委員会で答弁に立った運輸省国鉄部長の山地進(現日航会長)が「大鳴門橋を鉄道併用橋から道路単独橋に変更したい」と公式に表明したのである。

 大鳴門橋の建設費は当時一千五百億円と試算され、うち運輸省負担額は四一%の約六百億円。金利を含めると十年後には一千二百億円に膨らむ計算だった。

 「いつになるか分からない四国新幹線のために、それだけの先行投資をする余裕はない」というのが運輸省の考えだった。

 山地発言に、鉄道併用橋を「県是」とする高知県は慌てた。四月六日、議長の美馬健男、副議長の有光重一らが急きょ上京し、運輸省に真意をただした。

 当時の鉄道監督局長、住田正二は「一ルート三橋方式が決まった時点で、明石−鳴門ルートの鉄道はもういいものと思っていた」と答え、事務レベルでは鉄道除外の方針が固まっていると強調した。

 <明石−鳴門ルートは新幹線だけで、貨物輸送はない。児島−坂出ルートは新幹線と在来線の併用で貨物輸送もできる。高知には児島−坂出の方がメリットがあるはず>

 こう考える住田は四月二十五日、上京した高知県知事の中内力や県選出国会議員、県議会の明石・鳴門併設橋対策委員会のメンバーらを前に言った。

 ■トンネルが安い

 「皆さんの言う『県是』がよく理解できない。四国新幹線は変更しないわけだし、トンネル方式の方が安上がりで安全だ。なぜトンネルではいけないのか」

 これに県議会対策委のメンバーが猛反発した。

 「鉄道併用橋の運動は本県が主体になって進めてきた。その本家本元に何の話もせず、なし崩し的なやり方は民主主義のルールに反する」

 色めき立つ委員に、住田は「そうした経緯を承知していたら、徳島側に話をした時点で高知にも了解を求めていたと思う」と返答。関係県の了解がない限り計画変更を鉄道建設審議会に諮らないことを約束し、一応の歯止めは掛かった。

 東部循環鉄道の推進論者で、県議会対策委の委員長を務めた平山公敬(74)は言う。

 「東京、兵庫、徳島はもちろん和歌山にも協力要請に回った。もし明石海峡大橋が鉄道併用でいかん場合は紀淡トンネルという手もある。いずれにせよ、大鳴門橋を鉄道併用で建設することが絶対条件だった」

 しかし事前に運輸省の動きを察知していた徳島県に比べ、本県の情報不足、立ち遅れは明白だった。

 副委員長だった栗原透(70)が振り返る。

 「『県是』と違う方向に動いていることに怒りを感じた。しかし、県選出の国会議員は何も発言しない。運輸省幹部が退席した後、『地元がこれほど燃えているのに、東京はボヤにもなっていないじゃないか。いつでも国会議員を代わってやる』とかみついたことを覚えている」

 超党派の「大鳴門併設橋促進高知県選出国会議員団」が組織されたのは五月も下旬のことだった。

                                   (文中敬称略)

 【写真】徳島県庁を訪れ、同県議会と鉄道除外問題を協議する高知県議会の明石・鳴門併設     橋対策委員会のメンバー(写真奥)=昭和53年5月9日、徳島新聞社提供


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