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高知は関西の海に
「めちゃめちゃ便利ですわ。関西で海と言ったら、これまでは和歌山や三重だった。これからは高知になるんとちゃいますか」
安芸郡奈半利町出身で神戸市在住の会社員、安岡司信さん(44)。高知沖で釣れるブリの話をしながら「橋? 楽しみですわー」とひと声。「神戸の垂水漁港で釣り船を借りたら、一人一万五千円から二万円。高知なら船代はもっと安いし、大物が釣れる。釣り人はこれから高知へ流れる」と威勢がいい。
本当だろうか。明石海峡大橋がつながると、高知が「京阪神に一番近い海」になるのだろうか。四国でも人気の高い釣り専門誌「週刊釣りサンデー」の編集部(大阪市淀川区)を訪ね、聞いてみた。「高知の海へ来ますか?」。
「そら、行きますね。特に大物釣りはね。大阪も神戸も、魚がおりません。船釣りもせいぜいメバル、ガシラ…。釣りは家族や仲間で行くから、頭数で料金を取るフェリーより、橋で行くと安い。高知も関西の海になりますわ」
正月合併号の降版日。三十人ほどの編集部員が執筆や校正に追われるフロアの奥の部屋で、釣りサンデー取締役会長の小西和人さん(71)がテンポのいい低い声で答えた。
「知ってますか。大阪市内では最低千五百円出さんと、さおも出されへん。水辺が消され、工場の敷地ばっかりになった大阪湾で、釣り人がアプローチでけるのは、全海岸のたった二%ですよ」
戦後、国内で埋め立てられた海や湖の面積は平成七年末で約十四万四千ヘクタール。特に大阪市はバブル全盛時、工場立地や人工島整備のウオーターフロント開発に狂奔。釣り人は消え、追いやられていく。
■釣具屋がない
「梅田とかね、大阪市の町なかには、釣具屋が一軒もない。釣り人は外へ、遠くへ車で動くようになって、釣具屋も郊外へ出店した。リールやさおの開発など技術が都市で興り、釣り人が地方へ流れる。これが今の釣りのスタイルですわ」
橋の開通で、いそ釣り師は和歌山、三重と同様に四国へ。特に、京阪神から直線で結ばれる徳島県南部がにぎわうというのが、大半の見方だ。釣りサンデーも昨年十一月、「阪神淡路間つながってどうなる?」の特集記事で、「和歌山へ出かける感覚で徳島へ行ける」と書いた。
それなら「関西の海」は徳島だろうか。その辺り、小西さんは「釣り人はそんな単純なもんやない」と言う。
「例えば、釣り師は『黒潮本流の高知で釣りたい』というふうに考える。カジキ釣りは、高知は紀州より半月早うでける。グレの『オナガ』と『クチブト』が区別されたのは、窪川の興津や。スケールが大きいんですよ。黒潮が最初にぶつかる海。この魅力は、ほかの県にはない」
四十九歳で「釣りサンデー」を創立した小西さんは、元毎日新聞の事件記者。昭和三十二年、まだ徳島県の牟岐大島でしか行われていなかった「いそのグレ釣り」を覚え、記者と釣り名人の二足のわらじをはき続ける。
高松支局の記者時代に「高松磯釣りクラブ」を結成。六十センチ級のオナガグレを初めて大量に上げた興津をはじめ、昭和三十年代末に高知の磯(いそ)を開拓。これをきっかけに、グレ釣りがブームとなって各地に広がる。だから高知の海への思い入れは、並々ならぬものがある。
「釣りは旅なんです。遠くへ行きたいし、釣り船にも乗りたい。自然の空気も吸いたい。そして車で動く。京阪神の釣り人にとって、高知は格好の旅先とちゃいますか」
【写真】「京阪神の釣り人にとって高知はあこがれの地。橋の開通でかなり流れるだろう」と話す小西さん(大阪市淀川区の釣りサンデー編集部)
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