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◆11 いさぎなもん(佐賀県)
少し肌寒さを覚える10月9日の夜。佐賀県唐津市の唐津神社は祭りの熱気に満ちた。日本三大くんちの一つに数えられる「唐津くんち」の幕開け行事で、各町の曳山囃子(ひきやまばやし)を神前に奉納する「初くんち」だ。太鼓、鉦(かね)、笛による、勇壮ながらどこか哀切漂う演奏に「今年の囃子はいさぎなもんだ」と感嘆の声が上がる。
「いさぎな」は「ものすごく優れている」「素晴らしい」という状態を表す最上級の褒め言葉だ。語源ははっきりしないが「潔い」に通じるとされる。現在は「清らか」「思い切りが良い」という意味で使われるが、中世、近世には「気持ちがよい」「痛快である」を指す言葉でもあった。
唐津地区の歴史に詳しい郷土史家の富岡行昌さんによると、江戸時代、唐津藩は数十年ごとに藩主が入れ替わったため、独自の方言が育ちにくかった。そのため中世、近世の言葉が多く残っているのだという。
一番曳山「赤獅子」を曳く刀町で今年、鉦をたたくのは小学4年の山田耕平君だ。よちよち歩きの時から祭りに参加していた生粋の唐津っ子。「いさぎなもん」との掛け声に「太鼓に合わせているだけ」と照れるが「鉦は一人だから間違えられない」と、重責を果たす誇りに胸を張る。
くんち本番は11月2日の宵ヤマで幕を開ける。山田君らは曳山に乗り込み、「いさぎな」囃子を奏でる。伝統の祭りを通し、言葉も引き継がれていく。
【写真説明】「いさぎなもん」の掛け声が飛んだ、唐津くんちの「初くんち」(佐賀県唐津市の唐津神社)
(西日本新聞) (2006年11月25日付・夕刊) |