|
8 進化 企業価値上げた造形
「うちはフィギュア制作の下請け会社ではないんですよ」
海洋堂の宮脇修一社長は言う。
「これを作ってくれと言われて、はいそうですかとは決してならない。どういうものを作るか、お互いに企画を出し合う。コンセプトメーカーです」
全日空のスチュワーデスフィギュアでもそうだった。同社は昨年5月、客室乗務員の制服を15年ぶりにリニューアルした。「これを記念するフィギュア=キーワード=を作ってもらいたい」。海洋堂は「話題を集めるものにしましょう」と応える。
ドリームチーム
結果からいえば、このフィギュアはとんでもない成功を収める。
発売前から大きな反響を呼んだ。「海洋堂が『スッチー』のフィギュアを制作した」。インターネットを通じて注文を受け付けると、初日だけで約20万個が売れた。
1955年代の初代から最新分まで、歴代の9種類をまとったスチュワーデスのフィギュア10体がラインアップされた。
海洋堂はボーメさん、榎木ともひでさんら同社が誇る造形師5人を投入した「ドリームチーム」で制作に当たった。
出来上がったフィギュアについて全日空は「目を奪われるほどのリアルさ。質感からバッグや靴のディティールに至るまで再現度はパーフェクトといっても過言でありません」(同社関連企業ウェブより)とうたう。
すったもんだ
しかし、「実は問題だらけの商品でもあったんです」と宮脇社長は販売までの経緯を振り返る。
発売開始は5月だったが、直前の2月になって同社上層部からクレームがついた。食玩と同じように、どの種類が入っているか分からない販売方法への疑問、こんなヘアスタイルや髪を染めたスチュワーデスはいない、アニメみたいな顔じゃないか……。
フィギュアの魅力は、実物を忠実に再現することだけではない――。そうしたことがなかなか理解されなかった。
宮脇社長は「すったもんだして、僕も何度も全日空に足を運びました。でもフィギュアそのものに対しては、一歩も引きませんでした。いくら説明しても駄目だったら、もうやめようと思ってましたが、ぎりぎりのところで収まった」。
フィギュア制作の下請けでなく、企画から踏み込む。造形に対しての注文は、たとえ依頼主であっても妥協しない。「海洋堂と付き合うのは大変なんですよ」
全日空のものはこれまでに約100万個が売れた。フィギュアは企業のイメージアップのための手段ともなった。
【写真説明】海洋堂が制作した全日空スチュワーデスのフィギュア

フィギュア 大航海時代の帆船が、旅の安全を願って船首に取り付けていた女神などの像を「フィギュア・ヘッド」と呼んだ。本来は人や動物の生物模型を意味する言葉だが、アニメキャラクターや乗り物など立体造形物を広く指すようになった。
(2006年5月31日付・朝刊)
|