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3 ワンフェス 新たな美術市場の誕生

隣のテーブルで大きなアナゴが載った天丼を食べながら、2人の女性が話している。
ここは東京・有明のビッグサイト。海洋堂はこの巨大な国際展示場で夏と冬の年2回、「ワンダーフェスティバル(ワンフェス)」というガレージキット=キーワード=を中心にした展示即売会を開いている。
およそ1500の企業や個人ディーラーが出店するワンフェス。取材した昨年8月の回には3万4000人もの人が訪れた。
濃密な熱気
その光景には圧倒されるばかりだった。
人があふれ返っているにしては静かで、その代わりに、物を食い入るように見つめる濃密な熱気が、それぞれのブースに立ち込めている。
主催者である海洋堂も一ディーラーとして、ブースを構えている。新作を発表しているコーナーは人だかりが絶えず、クオリティーの高いフィギュアには、周囲からなめまわすかのような視線が注がれる。
もともとはガレージキットの展示即売が中心だったが、近年は中古トイや映像作品も並び、コスプレの女性たちも会場を闊歩(かっぽ)する。「日本最大のオタクの祭典」とも称されている。
プロとアマの競合
このワンフェス最大の特徴は、その規模の大きさに加えて「当日版権システム」を導入していることにある。
これはワンフェスが開催される1日だけに限って、ゴジラやウルトラマンといったキャラクターの版権を、申請したディーラーすべてに与えるシステム。これによって、正式な版権を得て制作している大手メーカーと、この日に向けてアマチュアディーラーが制作した造形物が同じ土俵に上がる。
学生や社会人たちが苦心を重ねて制作したフィギュアは、時にプロの作品を凌駕(りょうが)することもある。
そして多くのコレクターたちは、そうした作品を見に来たのではない。買うために来ている。ワンフェスではお金が飛び交う。これは両者のプライドと金銭を伴う真剣な取引だ。新たな美術市場が誕生している。
海洋堂創業者の宮脇修さんは言う。
「うちだけがもうけたろ思うたらいかんねん。ワンフェスは主催しているけど、ディーラーの一人にしかすぎない。これはものづくりの真剣な勝負の場なんや」
【写真説明】ワンフェスで海洋堂フィギュアを真剣に見つめる入場者(東京都江東区有明の東京ビッグサイト)

ガレージキット 少量生産される高級組み立て模型を指す。大手メーカーが生産するプラモデルなどに不満を持ったマニアが、自ら原型を作りだしたことが始まりと言われる。海洋堂はこのガレージキットの制作で高く評価された。
(2006年5月23日付・朝刊)
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