1995年9月26日付の本紙夕刊。「高知市の鏡川に転落した男性の救助活動をした中学生4人が感謝状を受けた」という記事が載った。城北中3年生だった阪神の藤川球児投手(25)が、そのうちの一人だった。
「だいぶ前の話で、顔とかしぐさは覚えていないんですが、ひょろっと背の高い少年だったと記憶しています」
当時、高知署交通課長だった尾崎丈夫さん(57)=現県警本部総務課長、高知市愛宕町=は懐かしそうに振り返る。
事故当日、尾崎さんは当直責任者として書類をまとめた。感謝状贈呈は本来なら署で行うが、その日は城北中で運動会の予行演習をしていたため、全校生徒が集まった運動場で行われた。
「警察署以外で感謝状を手渡したのは後にも先にもあれっきりです。みんな緊張していたようです」
4人は野球部やバスケットボール部など運動部の経験者ばかり。手分けして救急車を呼んだりと、見事な連携プレーに「部活動で培われたんでしょう。さすがです」。
尾崎さんが次に少年の名前を思い出したのは、それから2年後。職場で何げなくテレビを見ていた。夏の全国高校野球県予選決勝戦。「球児」という珍しい名前に「おや?」。
調べたらやはり、自分が感謝状を手渡した少年だった。甲子園出場から阪神へのドラフト1位入団と、スターへの階段を上る少年の名前を、もう忘れることはなかった。
熱烈な阪神ファンというわけではないが、どちらかといえばアンチ巨人だ。ことしは、藤川投手が巨人の打者を完ぺきに抑えるシーンを何度も目にして、うれしかった。「ことしは本当に胸がすっとするシーン多かったですね」
5月ごろは「そのうち打たれるんじゃないか」と思いながら見ていたが、1年を通して活躍が続いた。「顔つきに自信があふれているように見えてきました」
タイガースとは、ちょっぴり不思議な縁も感じている。安芸署に勤務していた80年ごろ、安芸球場のキャンプは小林繁投手人気で沸き返っていた。
まだ、ごめん・なはり線はなく、国道55号は香美郡野市町から延々渋滞が続いていたという。「休みのたびに駆り出されて大変でした。彼の活躍で、キャンプがまた盛り上がるんじゃないでしょうか」
今季、タイガースで試合終盤を支えたのが、ジェフ・ウイリアムス、久保田智之両投手との「JFK」トリオ。かつて4人の連携で人命を救った少年が、今また協力してチームを救っている。
【写真説明】高知署交通課長の尾崎丈夫さん=当時、右端=から人命救助の感謝状を手渡される藤川球児少年=左から3人目=ら(1995年9月26日・城北中グラウンド)
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