
【21】 加ト吉(上) 行かない方がおかしい
―山東省を中心に一大拠点を築いている。 14年前にマネジメント関係の本を書いたんですが、それを中国の大学教授が翻訳して大連で出版した。その本の出版記念パーティーがありましてね。せっかく行ったので、対岸の山東省も視察した。それが縁です。 ―なぜ、大連ではなく山東省に。 山東半島が突き出ている渤海湾は瀬戸内海より大きいが、日本と同じような漁船が出漁していて、魚が豊富な水産の街が多かった。これは瀬戸内と似ている。ここなら水産加工ができると考えたんです。 ―それだけで大規模投資ですか? 中国は12年前からだが、それよりも先にタイやインドネシアを手掛けていた。最初は向こうのエビを持ってきて日本で加工していたが、現地で加工した方が安くできるから、工場を造った。その素地があったので、安価な労働力があって、加工コストが安ければ、いけると思った。 ―視察から合弁会社設立まですごく短時間だったと聞いている。 視察から帰ってすぐ、1993年の7月に社内に「中国事業室」を設置、「フローズンタウン構想」として、具体的に動き始めた。11月には山東省威海市の開発区に合弁企業を設立することに合意した。構想から具現化まで4カ月程度ですか。 ―普通はそこまで即断即決できませんが。 根拠はあった。日本で水産加工をする従業員の給与はいろいろ入れて日給1万円。ところが中国は月給が1万円だった。水産加工品は8割が手作業。製品に占める労働コストの割合が高い。 原料となる魚が日本近海で捕れるなら話は別だが、水産加工品に使う魚は、アジにしろサバにしろ、ほとんどが輸入なんです。仮に中国の従業員の能力が日本の半分しかないとしても、中国へ原料を運んで加工した方がはるかに安い。 ―消費地は日本だが、輸送面の心配は? 四国から東京や名古屋などの大消費地へ、トラックで運ぶコストと、中国から船で運ぶコストはほぼ一緒なんですよ。どう考えても中国での加工が有利でしょう。行かない方がおかしい。 ―進出先の行政とはうまくいっている? 非常に良好な関係ですね。うちの経営理念は、企業の繁栄を通じて社会貢献をすること。それを中国で実践していますから。企業が発展すれば新たな雇用が生まれるし、取引先も潤う。利益は税金として納めるので、それが地域の教育や福祉に使える。 私は昔、観音寺市の市長をしていましたので、その点がよく分かる。それに、作った製品は日本に輸出するわけですから、外貨を稼ぐという意味でも重要。いくつもの市政府から名誉市民の称号を頂いています。 ―労働力はやはり豊富でしたか。 基本的にまじめで勤勉ですよ。「働かせてもらっている」という喜びを持っている。今でも農村に行ったら年間8万―12万円で生活している人がたくさんいます。そんな地域から出稼ぎに来ると、5年ほど頑張ったら家が建つ。中国には職の欲しい人が2億人ぐらいいる。山東省だけでも2000万人います。労働力は安価で優秀です。
(2005年6月15日)
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