高知空港からわずか3、4分。飛んできた県の消防防災ヘリ「りょうま」が高知医療センターの屋上ヘリポートで医師を乗せ、現場や地域の医療機関へ重症救急患者を迎えにいく。このときヘリは、高度・専門医療を載せた“飛ぶ病院”となる。
臨床研修プログラムと並び、医療センターにもう一つある「高知県方式」。それがヘリによる救急搬送だ。
この1年間で120件を突破。3日に1回は、本県上空を救急ヘリが飛んでいる計算になる。医療センターの福田充宏・救命救急センター長は「予想の倍以上。送り手と受け手の思惑が一致した結果だろう」と手応えを強調する。
メンテナンスなどで「りょうま」が休止の際は、県警ヘリや四国他県の消防防災ヘリでカバー。時には海上保安庁のヘリも使い、災害医療へ連携のすそ野を広げている。
「ドクターヘリ」後進国の日本。「高知県方式」は広義のドクターヘリとして全国から注目されている。
30分で全域カバー
ヘリ搬送が威力を発揮する背景には、本県の特殊事情がある。東西に長く、面積の大半が中山間地域で、高知市から一歩出ればへき地という地勢。一方で県全体の医師数(人口10万人当たり)は全国2位とはいえ、その8割が同市を中心とする中央医療圏に集中している。医療面でも「過疎と過密」が深刻だ。
こうした事情ゆえに福田センター長は当初から、救命救急センターの役割としてへき地医療支援を重視してきた。“命の最後のとりで”とも言える3次救急医療を掲げる一方、高知市やその周辺の救急患者に限らず県内全体に目を向け、広域救急搬送システムの構築に取り組んできた。その象徴がヘリ搬送なのだ。
救急車が患者を医療機関に収容するまでの平均時間は県全体で30分余り。中山間に限れば50分以上もかかる。それがヘリなら30分でほぼ県内全域をカバーできる。専門医が同乗することで早期の診断・治療も可能になる。
大きな安心感
本山町、梼原町、旧大正町、旧窪川町、四万十市、宿毛市、室戸市、いの町…。ヘリ搬送の実績では、その8割がへき地からの重症救急患者だ。へき地の医師たちは「いつでも受け入れてくれる」と、24時間365日態勢の同救命センターがバックに控える安心感を口にする。
へき地では対応できない重症救急患者が発生した場合、「高知県方式」ができるまでは救急車で往復2―3時間かけて、より高次の後方病院に搬送していた。現地から医師が同乗すれば日常業務はストップ。医師が1人しかいない診療所ならその間、無医地区になってしまう。しかも帰りは車か公共交通機関…。それがへき地の医師には大きな負担になっていた。
救急車に長時間乗せれば患者の身体的負担も大きく、救急車が管内を離れる時間も長くなる。従来のヘリ搬送にしても、いったん最寄りのヘリポートで患者を救急車に乗せ換えるため、使い勝手はよくなかった。その点、医療センターでは、屋上ヘリポートからエレベーターで救急外来やICU、手術室などに直結。“着けばそこが病院”だ。
福田センター長は、「高知県方式」2年目を「潜在的需要も合わせれば年間200件に上るのでは」と見通す。
「高齢化の中、これからの高知県の医療はヘリ搬送を定着させなければ持ちこたえられない。『りょうま』の休止期間はどうするのか、そうした対応を県も真剣に考える必要がある」
【写真説明】救急搬送訓練中の「りょうま」。本県医療には“飛ぶ病院”としてのヘリが欠かせない(今年2月、室戸市)
=2006年3月21日付・朝刊
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