100人以上の医師を抱える高知医療センター。医師たちのデスクが並ぶ医療局のフロアには高い間仕切りもなく、開放的な雰囲気が漂う。
その一角で、臨床研修2年目の田丸新一医師(26)が、指導医の川上和徳医師(33)からアドバイスを受けている。
「この患者さんの治療はどうしましょう?」「治療方針はこう説明した方がいいね」
2人は電子カルテの画面を見ながら対話を重ねていく。
高知学芸高から自治医大に進んだ田丸医師は、平成16年度から始まった「臨床研修制度」の1期生。旧県立中央・高知市立市民の両病院、そして医療センターで計2年間の初期研修を終え、4月には長岡郡本山町の嶺北中央病院に赴任する。
“満額”を確保
この春、15人の研修医が医療センターの門をくぐる。
研修医を決める昨秋のマッチングでは、13人の募集定員に対し“満額”を確保できた。ほかに「へき地医療拠点病院」として自治医大卒の2人を受け入れているため、研修医2年生と合わせると約30人の大所帯になる。
「自治医大以外の定員枠を20人に広げる案もある」。臨床研修を担当する深田順一・地域医療センター長が感じている手応えの背景には“秘密兵器”の存在がある。
高知大医学部付属病院、医療センター、幡多けんみん病院、国立病院機構高知病院、細木病院の管理型臨床研修病院が県と協力し、必須科目の「地域保健・医療」研修用に作った「高知県方式」と呼ばれる県内共通プログラムだ。
研修医三十数人が嶺北中央、梼原、大月、仁淀の中規模自治体病院や周辺のへき地診療所、福祉保健所を2カ月交代で回り、地域医療の現場を実体験するやり方―。
「こういう共通プログラムを組んでへき地研修を行っているのは全国でもまれ」と、県・へき地医療支援機構の専任担当官としてへき地医療を差配する医療センターの沢田努・地域医療科長は胸を張る。
へき地を逆手に
医療界で「日本の将来が高知にある」と言われるほど高齢化の先頭集団を走り、へき地を多く抱える本県。県内共通プログラムはそのハンディを逆手に取り、へき地や老人医療など「都会では学べない医療」を研修の目玉として打ち出している。
へき地医療は、医師の人間教育に欠かせない「医師の原点」とされる。それに対し、軽症から重症まであらゆる患者に対応する救急医療は「医の原点」といわれる。救命救急センターを備える医療センターは、二つの原点をリンクさせた研修をアピール。アンケートでも、プライマリーケア(初期診療)や救急に興味があると答える医学生や研修医が多いという。
ただ、県全体では依然、十分な研修医の確保ができていない。高知大医学部付属病院も含めた管理型研修病院10施設では、18年度の研修医募集人員84人に対し、確保できたのは半数少々。2年間の初期研修に続く後期研修(専攻科研修)のプログラムを持つ病院も少なく、せっかくの“金の卵”を県外に流出させてしまう恐れもある。
医療センターの沢田科長は「高知県方式」と同様、高知大や他の研修病院と連携することで「一人でも多くの研修医が残ってくれるよう、県全体でプログラムや指導態勢をレベルアップすることが大事」と力を込める。
長く大学の医局制度に依存してきた本県医療。その自立には、将来の地域医療を担う人づくりが欠かせない。
【写真説明】指導医の川上和徳医師=左=からアドバイスを受ける研修医の田丸新一医師。この春から嶺北中央病院に赴任する(高知医療センター)
=2006年3月20日付・朝刊
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