地域医療を悩ませる医師不足。その荒波は、岡山大、高知大、徳島大など11の大学医局出身の医師が同居する「混合医局」の高知医療センターにも例外なく押し寄せている。
大学医局の枠を超えて幅広く人材を募る―。医療センターは開院前から、そういうスタンスを取ってきた。しかし現実には、当面の医師不足を補うため、既存の大学医局に派遣を要請せざるを得ない。
吉岡諄一企業長は「医師が足りないからますます医局に依存する。今は過渡期だが、あと2―3年はこういう状態が続くだろう」とみる。
玉石混交でも…
大学を卒業したばかりの新米医師(研修医)はかつて、その約7割が大学の○○教室や××講座といった「医局」に所属し、安価な労働力として医局を支えていた。大学医局は豊富な人員をバックに、地方の公的・民間の関係病院に医師を送り込んで系列化する―。これが医局人事だ。
本県にも、県立中央病院=岡山大、県立西南病院=長崎大、高知市立市民病院=徳島大が軸の複数医局といった大学医局による系列が存在した。約30年前に“おらんくの医大”として高知医大(現・高知大医学部)が誕生し、現在は多くの卒業生が県内の医療現場で活躍しているが、それでも県外の大学医局からの医師派遣は続いてきた。
県西部の、ある病院長は言う。「大学医局から派遣されてくる医師は“玉石混交”だが、条件の悪い郡部の医療機関にも医師を供給してくれていた。医局制度がへき地の多い高知県の地域医療を支えてきたのは事実だ」と。
そうした医局制度に基づく医師供給システムを大きく揺るがせているのが、厚生労働省が16年度から導入した「臨床研修制度」だ。
それまで「努力目標」だった臨床研修は「義務」へ。すべての研修医は2年間、内科、外科、救急・麻酔科、小児科、精神科、産婦人科、地域保健・医療の7分野を経験し、基本的な診療能力を身に付けることが求められる。この制度で、医学生の就職事情は一変した。
自由選択
卒業を控えた医学生たちは、全国の大学病院や臨床研修病院が公表する研修プログラムや待遇面、病院見学の結果などを判断材料に研修希望先を選択する。病院側は採用したい人材を登録し、合致する組み合わせをコンピューターで探す「マッチング」によって公平に決められる。本県では医療センターや高知大医学部付属病院など10施設が研修病院に指定されている。
希望する「就職先」を自由に選べるようになった医学生たちは、大都市の病院を好む傾向が強い。封建的で閉鎖的と映る“白い巨塔”は敬遠されがちで、大学病院のシェアはついに50%を割った。
ブランド力のある東大、京大などの人気は根強いものの、地方大学の地盤沈下は顕著。そこで大学医局は、各地に派遣している医師を呼び戻しに掛かった。いわゆる医師の「引き揚げ」で、その荒波をもろにかぶっているのが本県など地方の大学医局に医師派遣を依存してきた地域、というわけだ。
「長い間、高知県の医療を守ってもらってきた分、伝統と実績もある。岡大、徳大などの影響力はいまだに大きい。だから、その方針には逆らえない」
高知大医学部関係者は悔しさをにじませながら、こうもつぶやいた。
「高知県はいまだに“医療の植民地”なんですよ」
【写真説明】“おらんくの医大”として開学した高知医大(現・高知大医学部)も医師不足にあえいでいる(南国市岡豊町)
=2006年3月19日付・朝刊
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