「(収入に対する)材料費の23・4%目標なんて、もう少し時間があれば解決する問題やと思うてる。ただし、それだけが目的でPFIをやっていいんですか? 『もうかる診療科目だけやりましょ』、そやないでしょ」
高知医療センターの特定目的会社(SPC)「高知医療ピーエフアイ」の西名弘明社長はそう言いながら、当初予算より8億円増となる材料費の問題と自説を語り始めた。
西名社長はオリックスの副社長でもあり、医療センター開院後はほぼ毎月1回のペースで来高しているという。
ちなみにオリックスの宮内義彦会長は、小泉内閣が進める「官から民へ」の旗振り役「規制改革・民間開放推進会議」の議長。規制緩和の先導役と見なされる民間会社の企業風土の中で手腕を発揮してきた西名社長は、関西弁を交え、ズバズバと物を言うタイプだ。
企業論理
「県民や市民のために高度医療をやる。地域医療に貢献する。そしたらどこまで(材料費は)許容されるかという議論をせないかんのに」
膨らむ材料費に疑問を呈した県・高知市病院企業団議会の論調をけん制したかと思うと、「目標値の23・4%に対して今が30%(近く)やから『けしからん』。だったら、『23・4%にしたらいいんですね』となる。それはちょっと違う。確かに23・4%を目指そうかという話はあったし、放棄したわけやない。今は30やけど29になり、28%になればいいという話。そこを理解してほしい」。押し込むだけではなく引いてもみる。
収益と効率を追求する「企業論理」と公的な色合いが濃い「医療サービス」、その両者のバランスをどう取り、折り合いを付けるか―。西名社長もそこは踏まえて話しているが、確かに今のSPCが置かれた状況は微妙で難しい。
仮にSPC側の論理だけを先行させると、医療が収益を追求するだけのゆがんだ方向に進む。しかし、患者の命を守る地域の高度医療センターという位置付け、使命は放棄できない。コストを抑え収益性を高めながら、患者が納得し満足してもらえる医療サービスとは―。そこに関係者の苦しみがある。
投資した金は…
西名社長の話は続く。PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)事業での官(病院企業団)と民(SPC)の関係に話が及ぶと、こんな例えが飛び出してきた。
「私は結婚して30年たつけど、いまだにエーッと思うことがある。それが普通。結婚したあくる日からお互いに意思が通じるなんてことはない。もう少し気心を知らんと…」
30年契約の緒に着いたばかりのPFI事業。民の側の本音ものぞく。「僕らは何百億円というお金掛けとるんですよ。一番心配して悩んでいる。企業は金を掛けて『いやぁ何とかなりますよ』なんて思ってない。心配なのは投資したお金が返ってくるかということですよ。『失敗でした、勉強してもう1回、トライします』って話やない」
「壮大な経営努力はこれから始まる」「経営者側からみたら初期トラブル」―1時間余りの間、何度となく「経営」という言葉を繰り返した西名社長。
「民は力を発揮してない、官は従来通りや。今そう言うのは早過ぎるんじゃないかと。自治体病院は政策医療をやってるから赤字なんですよ。その中でPFIをやることで少しでも事業収支を改善する。5年たったとき、何やってたんやって言われるのはかまわないが、半年ぐらいで評価されるのは…」
今はSPCと企業団、医療スタッフが一つの目的に向かって方向性を確認する時期と位置付けた。
【写真説明】患者の苦情などが投函(とうかん)される意見箱と投書の掲示板。11月で1700件を超した投書の中にはSPCへの苦情も(高知医療センター)
=2005年12月10日付・朝刊
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