高知医療センターの受付ロビー。スーツ姿の一行がぞろぞろ歩いているのをしばしば目にする。そばには決まって、センター内のあれこれを説明する県・高知市病院企業団や特定目的会社(SPC)の職員がいる。
5カ月で900人
全国で初めて病院PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)事業を導入した医療センターは、開院直後の慌ただしさを避けて6月から、県外からの視察を受け入れるようになった。
企業団によると、10月末までに行政視察だけで25件、医療関係者らの視察61件を合わせると延べ900人以上、多いときには1日に3団体が入れ代わり立ち代わり訪れた。
厳しい財政状況を受けてか、全国で自治体病院に効率的な経営を求める傾向が加速しているようだ。それを証明するかのように、医療センターへの視察の多くを医師や行政関係者が占めている。
彼らの関心事は、県立、市立の自治体病院を統合した公的病院がどう機能し、PFI事業によるサービスの向上や効率化がどこまで進んでいるか―にほぼ集約される。
この半年足らずの間に何度となく医療センターを訪れている東京都もその一つだ。
都では3つの小児病院を統合して新設する小児総合医療センター(仮称)と、府中病院の機能を拡充して建て替える多摩広域基幹病院(仮称)を、府中病院の隣接地に一体的に整備する計画が進行中。施設整備や運営へのPFI事業導入を目指し、事業契約を結ぶSPCの選考へ既に審査委員会を立ち上げている。
“反面教師”
東京都庁本庁舎29階にある病院経営本部。そこで八巻昭宏副参事(小児総合医療センター開設準備担当)がとらえる高知の病院PFI事業の位置付けは、決して小さくはなかった。
「まるでホテルのような病院。何よりも建設費が安い」
八巻副参事が評価するのは医療センターの“箱物PFI”と病院統合への取り組み。とりわけ施設整備のPFI効果に注目していた。医師の派遣先である大学の医局が異なる場合の病院統合には「リーダーシップのある院長を早めに決めることが必要」と実感したという。
企業団やSPCの幹部からの説明で、避けて通れない運営面での課題もしっかりと把握。「初期トラブルは必ず起こる。問題はそれをいかに早く解決できるか」と自らに問い掛け、問題解決のためには「SPCの統率力」を重視して事業者選定に工夫を凝らす考えだ。
審査すべきポイントは具体的に話さなかったが、その口ぶりから、各協力企業の統率力とともに新規事業を開拓した経験や未知の分野へのチャレンジ精神の有無を見極めたいとする思いも読み取れた。
審査の際には、そうした面へ重点的に点数を配分することを検討。業者選定後もSPCの職員に医療を理解してもらうため、都内の病院での研修を考えているという。都は来年1月中に業者を決定し、来夏にも事業契約を結ぶ予定だ。
医療事務のミス、膨らむ経費、「官」と「民」の意思疎通の難しさ…。医療センターが直面している問題を、八巻副参事は“反面教師”とすべき要素ととらえた上で「しかし、だからこそ」と続ける。「(病院)PFIを育てていきたい」。確かに病院経営面でのPFI事業を成功させた事例は全国にまだない。
医療センターは「見られている」。全国の自治体や医療関係者が、その取り組みを見定めようと熱い視線を注いでいる。視察ラッシュは年内いっぱい続く―。
【写真説明】PFI事業による建て替え・運営を実施する都立府中病院。高知医療センターの取り組みが事業に反映されている(東京都府中市)
=2005年12月9日付・朝刊
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