高知医療センターの医療事務や清掃など個々の業務を特定目的会社(SPC)から請け負っている協力企業。県・高知市病院企業団とSPCが協働で行うPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)事業を、これらの企業はどう受け止めているのか。そこにはさまざまな思いが交錯している…。
“想定外”
「開院後2カ月は、毎日がルールづくりだった」
そう振り返るのは、医療事務を受託している日本医療事務センター(NIC、本社東京)の滝北浩喜統括責任者。
NICは約20社ある協力企業の中で最も多い約120人の職員を抱え、受付や看護師の補助業務など複数のサービスを担っている。開院前の内装が仕上がっていないころからヘルメットをかぶってはリハーサルを繰り返し、「受付―診療―会計」の業務の流れを確認。はた目にも入念に準備をしているように映ったが、開院後“想定外”の問題に頭を悩ますことになった。
NICは、病院企業団とSPCとの間で1年間かけてまとめた運用マニュアルに基づき、サービスを提供する。ところが患者からのクレームを企業団が受けるのか、SPCが処理するのか―など細部の取り決めはうやむやだった。
このため開院後の混乱をNICがまともに受ける格好となり、滝北統括責任者は「決めたはずの運用が1分1秒ごとに変わった…」。
何より想定外だったのが、県と高知市という異なる自治体病院の統合に伴う事務処理上の問題だった。
例えば医療事務データ。患者1人当たりの医療費をはじき出すのに不可欠な患者の延べ人数の扱いが、旧県立中央病院と旧高知市立病院では違っていた。本来、開院前に企業団がチェックして統一するべきだったが、気付いたのは開院後。随所で「県中流」「市民流」が見られ、NICが何十回となく修正を加えてデータを統一するまで3カ月以上もかかった。
企業団やSPCに遠慮してか、滝北統括責任者は多くを語らないが、現場の混乱にはそうした擦り合わせの不十分さが付きまとう。実際、企業団の幹部も「どこまでが準備不足でどこまでが想定外かは判断しにくいが、現場(協力企業)にしわ寄せがいったのは間違いない」と認める。
ビジネスチャンス
一方、協力企業の中にはPFI事業への参画を、新たな「ビジネスチャンス」ととらえた向きもある。給食業務を担う日清医療食品もそれらの企業の一つだ。
医療センターでは、入院患者への給食は患者の食べたい時間に、温かい物は温かいまま、冷たい物は冷たいまま提供するのが「原則」。
同社の村田仁・高知医療センター事務所長は「指示に従うだけの給食業務ではないフードサービス」と位置付け、入院患者自ら料理を選べるようメニューを増やしたり刺し身をバラの花の形に盛り付けるなど、患者の満足度を上げる工夫を続けているという。
そうした見方には、自らの企業努力で創意工夫したサービスを提供すれば医療業界での評価が高まり、新たな市場の開拓につながるとする民間ならではの考え方がある。
一方でこんな話も耳にした。医療センターは入院患者の早期回復に向け、病室ではなく各病棟の食堂で食事を提供するのが基本方針。だが、患者から「病人なのになぜ」と苦情が相次ぎ、日清側は企業団との会議で医療スタッフに説明不足を主張。業者が医師に“意見”する展開は、従来の病院経営だと考えにくいことだ。
企業団、SPC、そして協力企業。それぞれが知恵を出し合い安価で充実したサービスをどう提供するか。医療センターの経営には、そうした「三位一体」の地道な取り組みが求められている。
【写真説明】病棟ごとに設けた入院患者用の食堂。そこで協力企業が提供するのは「サービス」だ(高知医療センター)
=2005年12月8日付・朝刊
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